トレたび JRグループ協力

2023.10.16ジパング俱楽部いつまでも元気に!旅行のための体力づくり|解決! 60代からのお悩みごと

いつまでも行きたい所に行ける体づくりを始めよう!

旅行先では、普段の生活に比べて移動が増え、歩く距離も格段に多くなります。そんな時、ヒザや腰が痛くなったら、楽しい気持ちも半減してしまいます。

いつまでも元気に旅行ができるように、普段から体力づくりをして、腰痛やヒザの痛み予防を心がけたいですね。

日常生活に簡単に取り入れられるエクササイズを、スポーツトレーナーの鈴木心さんが開催する運動教室におじゃまして教わりました。


教えてくれた人 プロレスラー/スポーツトレーナー  鈴木心(すずきしん)さん

1991年、栃木県那須塩原市生まれ。少人数制運動教室プロジェクト“HEART BEAT FITNESS/ハートビートフィットネス」を主宰。

こどもの頃から、サッカー、水泳、柔道、相撲、陸上競技と、さまざまなスポーツを続ける。大学で学生プロレスをはじめ、2014年に「いたばしプロレスリング」にてデビュー。

2019年に同団体を退団後、フリーのプロレスラーとして活動、スポーツクラブインストラクターとして、幼児~シニアまで幅広く指導している。

【公式HP】
HEART BEAT FITNESS/ハートビートフィットネス (amebaownd.com)


鈴木さんと、「シニアクラス」に通う岩崎安美さん、佐藤朱美さん、馬渕啓子さん

鈴木さんの運動教室は、個人個人に合わせた分かりやすく楽しい指導で、幅広い年齢層に人気です。

今回おじゃました「シニアクラス」は、70~80代の方々が参加するクラス(年齢制限はなし)。
参加者のみなさんは、3年ほど前までは「運動なんてやりたくない!」と思っていたそうですが、今やお仲間と毎週、小一時間の運動を続けています。

鈴木先生のプロレスのファンでもあり、「おばあちゃまず」として応援団を結成。試合があると応援に駆けつけます。

はじめに-運動する前に気をつけたいことは?ー

まずは体調をチェックして、無理のない範囲で行なうことが大切

のびをして、体に痛いところがないかどうか確かめましょう。
腰がちょっと痛いなと思ったら、ヒザなど腰から離れたところからだんだんと伸ばしていってください。

慣れない運動を急にやりすぎるのは禁物! くれぐれも、痛みや怖さでストレスを感じないように、無理のない範囲で行ないましょう。

休憩はこまめに

座ったり水を飲んだり、運動中は1分ぐらいの休憩をこまめに入れましょう。あまり長くてもよくないので、短く分けて。1時間なら、6~7回取ってください。

頑張りすぎは禁物

運動する習慣をつけるには、頑張らないで続けるのがポイント。 体調を見ながら、今日は短くしておこうなど調整してください。

運動の回数は目安なので、正確でなくても構いません。 10回が8回になっても大丈夫。やっているうちに数が分からなくなってもOK。頑張りすぎはストレスになってしまうので禁物です。

「運動のための運動」にしない

クラスでは、会話しながら進めています。しゃべることでストレス発散にもなりますし、仲間や家族と一緒に運動すると楽しく続けられますよね。

このクラスでは、最後に必ず「お茶会」の時間があって、じつはこれがメインイベント(笑)。「運動のための運動」にせず、気楽に取り組むのが長続きするコツです。

実践!自宅でできる簡単運動

鈴木先生のシニアクラスは、

  • 準備運動
  • ウォーミングアップ
  • 筋トレ
  • 体幹トレーニング
  • 整理運動

の順で、進めています。

今回はそのなかから、旅行で長く歩くために効果のある足の運動や、体を動かしやすくするために大切な運動をピックアップ。日常生活に取り入れる場合は、1つ2つの運動から無理せずはじめてみましょう。動画もあるので、細かい動作はそちらで見てみてくださいね。

1.運動前のストレッチは必ずやろう!【準備運動】

まず椅子に座って、少しずつ体をほぐします。その日の自分の体調をチェックするためにも、少しずつ体を動かす「準備のための」運動が大切です。

筋トレがもっとも効果的に思えますが、じつは体のあちこちを伸ばすストレッチのほうが重要。ストレッチをしっかり行なうことで、筋トレもより効果的になるので必ず運動前に取り入れてくださいね。

上半身のストレッチ

  • 首 ①右手で頭を押さえて少し右に傾け、左手は斜め下に伸ばす。反対も同じように行なう。②首を左右に向くように回す。③首を左右に倒す。④首を右回り、左回りに回す。
  • 肩 両肩を上げ、下ろす。
  • 背中 ① 両手の指を組んで、前にボールを抱えるように出す。②手を返して上に伸びる。ヒジが曲がってもよいので両腕を耳の後ろに持ってくる。

動きにくくないか、苦しくないかチェックしながら行ないましょう。

下半身のストレッチ

  • 足首動かし ①両足を前に出して、アクセルを踏むように足首を上下に動かす。②同じ姿勢で、足首を左右に動かす。③つま先を床に立てて、足の甲を伸ばす。
  • 背中とお尻のストレッチ ①片足を曲げて椅子の上にのせ抱える。反対も同じように行なう。②右足を左のモモにのせて、足の指を1本1本引っ張ってのばす。左足も同じように行なう。
  • 足の裏のストレッチ モモにのせた足先を手でつかんで、もう一方の手で土踏まずをぐりぐりマッサージ。反対も同じように行なう。

長く歩く時などは、この土踏まずのマッサージをしてリラックスさせておくとよいです。足の指は1本1本ていねいに、先端を意識しましょう。

腰ひねりストレッチ

  • 1.足を広げて体を前に倒し、右ヒジを左ヒザの外につける(ヒジをヒザにひっかけるイメージで)。
  • 2.片手を斜め後ろに伸ばし、頭を上げて斜め上を見上げるように。

内股にならないように注意。


上半身のストレッチ 上半身のストレッチ

下半身のストレッチ 下半身のストレッチ

腰ひねりストレッチ 腰ひねりストレッチ

壁に手をつくストレッチ

「壁に手をつくストレッチ」では、アキレス腱→股関節→背中を伸ばしていきます。


アキレス腱

股関節

背中

  • 1.アキレス腱 壁に手をついて、左右交互にアキレス腱を伸ばす。
  • 2.股関節 片足を体より少し広げて椅子の上に上げ、股関節を縮める。反対も同じように行なう。
  • 3.背中 上半身を倒して、背中を伸ばす。

家で行なう場合は、壁にしっかり椅子の背をつけるなどして、グラグラしないように。

準備運動のポイントは動画で!



鈴木さんからひと言

「足のストレッチ」をすることで、階段でつまずかないようになったり長く歩くことができるようになります。

自分の体でストレッチできる「腰ひねりストレッチ」は、とくにおすすめ。
ひねる動作は日常あまりしないので、体が固まりがち。その状態で体をひねって物を取ろうとすると、痛めてしまいます。このストレッチは腰痛予防にもなりますよ。

2.椅子を使った簡単運動【ウォーミングアップ】

体がほぐれたらウォーミングアップに移ります。

椅子を使って行なう運動で、全工程3分ぐらいでできるので、家の中で気軽にやってみてください。

  • 1.テンポよく足踏み 椅子がなくてもOKです。片足ずつ各20回
  • 2.片足ずつモモ上げ 前にまっすぐ足を上げます。片足ずつ各20回
  • 3.ガニ股上げ 外側にガニ股になるように足を上げます。片足ずつ各20回
  • 4.うちひねり 足を交差させるように上げます。片足ずつ各10回
  • 5.大股踏み込み 片足を前に出し、床を押すように踏ん張る。片足ずつ各10回。慣れてきたら20回を目標に。

回数は目安なので、一部を試してみるのでももちろんOKです。


モモ上げ モモ上げ

うちひねり うちひねり

ウォーミングアップのポイントは動画で!



鈴木さんからひと言

上半身の姿勢が崩れないように注意しましょう。股関節とお尻を動かします。

片足でバランスを取るので、お尻やヒザの安定にもつながります。

3.上半身も下半身もバランスよく鍛えよう【筋トレ】

いよいよメインの筋トレです。椅子を使う足のトレーニング、タオルを使った背中のトレーニングです。

前モモを鍛える!モモ上げ運動

  • 1.椅子に座って、片足を曲げたままモモを上げる。
  • 2.上げたまま、ヒザを前に伸ばす。
  • 3.元のようにヒザを曲げる。
  • 4.足裏を床につかないように下ろす。

1~4を「1・2・3」とそれぞれ3秒かけて行ないます。左右5セットずつを目安に。


前モモを鍛える!モモ上げ運動

タオルを使った背中のトレーニング

タオルを使ったプルダウン

次にタオルを用意して、背中のトレーニングをやってみましょう。
タオルを持つ時は親指をグッと握らず、軽く握ってください。肩に力が入らないように顎を引いて、無理に力を入れずに。

タオルを両手で持って、前後に動かす、上下に動かす、首の後ろで上下に動かすの3種類。各20回ずつぐらい。
座る姿勢は寄りかかって座らず、骨盤を立てるイメージでまっすぐ座ってください。

筋トレのポイントは動画で!



鈴木さんからひと言

「椅子に座ってモモ上げ」は、モモの前側にある大腿四頭筋を鍛えるので、ここがしっかりすると立つ時や歩く時に楽になります。

「タオルを使ったプルダウン」は、背中の筋力を鍛えて腕を動かしやすくします。胸を開くので猫背予防や腰痛改善につながります。

足の筋力をつけると、旅行に出かけた時にもしっかり歩けます。背中の筋力をつけて、荷物も楽に持てるようになりましょう。

4.余裕がある人向け!【体幹トレーニング】

余裕がある時は、体幹を鍛える運動をしてみましょう。

V字腹筋をしながら名前を書こう

「V字腹筋」は、おなかを支点にして足と手でV字を描く腹筋。かなりきついので、できる範囲で行いましょう。
ヒザを伸ばしたほうが効果的ですが、腰を反らさないように注意です。

  • 1.仰向けに寝て上体を起こす。腕で支えたり、枕を使ってもOK。
  • 2.両足をそろえて上げた状態で、足で自分の名前を漢字で空中に書きます。

腰回りを鍛える! お尻歩き

  • 1.足を前に出して床に座ります。多少ヒザが曲がっていてもOK。
  • 2.骨盤を動かして前に進みます。座って、片方のお尻を持ち上げるイメージで。
  • 3.家の一畳ぐらいの空間で行ってもOKです。
  • 4.【運動の目安】最初は、10~20歩ぐらいを3往復してみてください。

おなか周りを引き締める! ヒップリフト

  • 1.仰向けに寝てヒザを立てます。
  • 2.床を足で押す要領で、お尻を持ち上げます。
  • 3.腰を反らさず、10秒を3回ほど。腹式呼吸をしながら、安定させてください。慣れてきたら、20秒、30秒と増やしても。

V字腹筋

お尻歩き

ヒップリフト


鈴木さんからひと言

 

「お尻歩き」は、足を少し上げてお尻だけを使って前や後ろに進みます。腰回りが鍛えられ、しっかり歩く筋力につながります。

腰を上げる「ヒップリフト」は体幹を鍛え、腹式呼吸をしながら行なうことでおなか周りのひきしめにもつながります。

体幹を鍛えると、体のバランスが取れるようになり安定します。筋肉がつくことでケガの予防、腰痛や転倒の予防にもなり、良いこと尽くめですよ。

5.筋トレの後はクールダウンも忘れずに【整理運動】

最後のストレッチまでが運動です。動かした体をクールダウンしてください。

ストレッチ

  • 1.背中を壁などにつけて座り、ヒザを曲げてを横に広げる。つま先を手で持って前屈する(あぐらのような姿勢)。20秒。
  • 2.座って両足伸ばし手を開き、右、左、正面に向かって順番に前屈。各20秒ずつ。
  • 3.横向きに寝て、上になる足を背中側に曲げて手で引っ張る。反対向きに寝て同様に。各20秒ずつ。

腹式呼吸

  • 1.体が床に沈むようなイメージで、仰向けに寝る。
  • 2.息を鼻から5秒で吸って、おなかに3秒ためて、口から10秒かけて長く細く吐く。10回程度。

【参加者のみなさんの声】

往復40分歩いて教室に通う岩崎さん。
「体操をはじめる前は、30年間立ち仕事をやっていたので腰が悲鳴を上げていたんです。以前は整形外科にもよく通っていたんですが、今は全然行かなくなりました。少し腰が痛くなっても、すぐに回復するんです」。

娘さんのすすめで運動をはじめた馬渕さん。「小学生の頃、運動が嫌いになって以来、まったくやっていなかったんですが、3年前にはじめてから1回も休んでないんです。股関節の手術をしているので、最初はまっすぐ座ることもできなかったんですが、今は座れるようになりました」。

レッスン中、そしてレッスン後のお茶会でも笑いが絶えない教室です。

まとめ

今回おじゃましたシニアクラスは、かなり本格的に運動されていましたが、3年間のうちに徐々に運動量を増やしていったそうです。
最初は運動嫌いだったみなさんですが、楽しく無理せず行なうことで、年齢を重ねても体力アップし、続けてこられたのだと思います。

みなさんも、元気に旅行を楽しむために、少しずつ体操を日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

文/綿谷朗子