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2024.11.18ジパング俱楽部食事の基本「バランスのとれた食事」をうまく摂る方法は?例やコツを紹介!|解決! 60代からのお悩みごと

「バランスのとれた食事」って難しい!

いつまでも健康でいるために第一に気をつけたいのが毎日の食生活。健康を意識してバランスのとれた食事を摂りたくても、なかなか実践できずにいませんか? 何をどれくらい食べればいいのか分からない、生活リズムの変化や料理が不得意でなかなか実践できない……。そんな悩みに対して、管理栄養士で日本抗加齢医学会指導士でもある森由香子さんに、バランスのとれた食事を摂る方法やコツをうかがいました。


教えてくれた人

管理栄養士、日本抗加齢医学会指導士
森由香子(もりゆかこ)さん

東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻) 修士課程修了。日本サルコペニア・フレイル学会会員・日本認知症予防学会会員・日本排尿機能学会会員・日本時間栄養学会会員。

クリニックで、入院・外来患者の栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導、フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などの経験をもつ。

食事からのアンチエイジングを提唱し、「かきくけこ、やまにさち」Ⓡ食事法の普及につとめている。著書に『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)、『寿命を延ばす食べ方 縮める食べ方』(三笠書房)など多数。

森由香子のパーソナル栄養指導 https://mori-yukaco.com

  目次  

1.60代からは、バランスのよい食事を摂ることが大事!

人生100年時代、年齢を重ねても「全国各地を旅行したい」「登山やスポーツを楽しみたい」「食を堪能したい」……誰もが、ずっと元気に楽しく過ごしたいと願っているでしょう。
仕事中心の生活から一線を引くなどライフスタイルの転換期を迎える60代。身体機能が少しずつ低下し、生活習慣病など健康が気になり始める年代です。

先日、米国の大学から興味深い研究報告が発表されました(出典)。それによりますと、44歳と60歳で老化速度が促進されることが判明、60歳では細胞老化や免疫機能、炭水化物の代謝が衰えるというのです。見識者は、この研究結果を日本人にそのまま当てはめることは早計としていますが、私たちの体は、加齢とともに確実に変化していることは間違いありません。


60歳以降のセカンドライフを生き生きと過ごすには、健康な体が不可欠です。それには、食事の栄養バランスを整えることが大切です。

生きるために必要な栄養素は分かっているだけでも約50種類あるといわれています。一つの食品で、体に必要なすべての栄養素をみたすものは存在せず、これさえ食べればOK! というような万能な食べ物はありません。健康維持に必要な栄養素は、いろいろな食品を組み合わせることでしか得られず、食べる食品の数を増やせば、それだけ多くの栄養素が揃います。

また、各栄養素は、それぞれ役割があり、それを果たすためにほかの栄養素のサポートが必要です。食事量や特定の栄養素の増減により栄養バランスに偏りがみられると健康上さまざまな不都合が生じるため、栄養バランスのとれた食事こそが健康維持に必要なのです。

体は、自分が食べたものでできているため、ご自身が選んだ食べ物や料理が、健康維持に果たす役割は大きいものです。

では、どのような食事をしていけばよいのでしょうか。それには、栄養バランスが整った食事が基本です。さらにさまざまな食品を取り入れた多様性のある食事ができたらパーフェクトです。

2.どうやって取り入れる? バランスのよい食事

ステップ1 「かきくけこ、やまにさち」Ⓡ食事法を覚える

多くの方から「栄養バランスが大切なのは分かるけど、具体的にどうしたらよいか分からない」と相談されることがたびたびあります。

確かに、目の前にある料理や食品の栄養素や重量、カロリーは目に見えません。何をどれだけ食べたらよいか検討がつかないのは当然のことだと思います。
そこで、私が考案した「かきくけこ、やまにさち」Ⓡ食事法を紹介します。


「かきくけこ、やまにさち」Ⓡとは、食品の頭文字を合わせたもので、「か」海藻、「き」きのこ、「く」果物、「け」鶏卵(卵)、「こ」穀類・芋類、「や」野菜、「ま」豆(大豆)・種実類、「に」肉、「さ」魚(魚介)、「ち」チーズ(乳製品・牛乳)を指します。

まずは、一日に摂りたい食品10品目、「かきくけこ、やまにさち」Ⓡの合い言葉を覚えましょう。

ステップ2 10品目を取り入れた3食のメニューを考える

次に、料理の組み合わせを考えます。ここがとても大切です。基本スタイルは、主食、主菜、副菜。1日3食(朝食、昼食、夕食)毎食、この構成が理想です。

主食

ごはんやパン、麺類などの「こ」穀類の料理です。炭水化物(糖質、食物繊維)が摂れます。毎食、1種類が基本です。ごはんとラーメン、パスタとパンといった組み合わせはNGです。

1食での目安の量

ごはん 男性は150グラム(普通茶碗大盛り1杯)、
女性は100グラム程度(普通茶碗軽く)

ごはんの目安の量は活動量で変わりますが、60代で普通の労作(座位中心だが、家事、軽い運動をする)の方は上記が目安です。

主菜

「け」卵、「ま」大豆・大豆製品、「に」肉、「さ」魚の良質なたんぱく質食品を使ったメインの料理です。主に、たんぱく質や脂質が摂れます。

朝食で納豆と卵、昼食で肉、夕食で魚など、毎食異なる食品を偏らないように選びます。飲食店で食べる場合は、これらがメインの料理を選べばよいわけです。コンビニエンスストアであれば、たんぱく質量の表示を見て20グラム程度摂れるものにします。

1食での目安の量

肉や魚 約100グラム
1~2個
納豆 1パック
豆腐 100~150グラム(3分の1~半丁)

副菜

「か」海藻、「き」きのこ、「や」野菜を使った料理です。ビタミン、ミネラル、食物繊維を摂ることができます。毎食摂ることが理想で、小鉢2つ程度が目安です。野菜であれば1食120グラム(手のひら)以上摂りたいところです。

1食での目安の量

生野菜 両手にのる程度
温野菜 片手にのる程度
海藻・きのこ 30グラム程度(小鉢1皿程度)

また、「く」果物や「ち」乳製品・牛乳は、食事と一緒でもよいですが、間食で利用するのもよいでしょう。1日1回、それぞれどこかのタイミングで摂ります。

朝食でバナナしか食べていない人の改善例

たとえば、いつも朝食でバナナしか食べていない人がいたとしましょう。

バナナは消化がよく糖質が多いため即効性のエネルギー源となり忙しい朝に重宝しますが、たんぱく質や脂質をはじめ身体に必要なエネルギー量、栄養素が足りません。そこで、牛乳やヨーグルトを一緒に食べると栄養バランスの偏りが改善されます。ですが理想は、バナナをメインにした食事スタイルではなく、あくまで主食、主菜、副菜の組み合わせです。

そこで、炭水化物がメインの主食になる料理、おにぎり、うどん、そば、パンなどから一つ加えるなど、一つずつ増やしていくとよいでしょう。
次に、たんぱく質や脂質が補える主菜になる料理、サラダチキン、刺身、焼魚、煮魚、麻婆豆腐、肉豆腐、玉子焼き、温泉玉子、ゆで玉子、納豆などから選びます。

副菜は、野菜、海藻、きのこなどをメインにした料理を選びます。野菜スティック、ゆで野菜サラダ、生野菜サラダ、ほうれん草ソテー、おひたし、海藻スープ、モズク酢、めかぶ、きのこソテー、きのこサラダなどから選びます。


主食、主菜、副菜が揃った理想的な朝食の例。乳製品と果物は一日のどこかで摂取すればOK 主食、主菜、副菜が揃った理想的な朝食の例。乳製品と果物は一日のどこかで摂取すればOK

主食、主菜、副菜が揃う丼や一皿料理でもOK?


カレーライスや中華丼、幕の内弁当のような主食、主菜、副菜が一つになっている丼や一皿料理でも問題ありませんが、食べ方には気をつけましょう。加齢とともに消化・吸収能力が低下していくため、よくかまないと胃腸に負担がかかります。ゆっくりよくかんで食べることを意識しましょう。

また、一皿料理では主菜や副菜が少ない場合もあります。 主菜は、栄養成分表示があればたんぱく質量が20グラムあるかどうかチェックし、ない場合はゆで玉子、サラダチキンなどを追加します。加齢とともに筋力・筋肉量は、どうしても低下していくため、食事からたんぱく質を一食あたり少なくとも20グラム以上摂って筋力・筋肉量維持に努める必要があります。

ほかに、牛丼(主食、主菜)のように、明らかに副菜が足りないものは、野菜、海藻、きのこを使った料理を加えます。

どうしても主食、主菜、副菜が揃わない時は?


時として、主食、主菜、副菜を、揃えることができない場合もあるでしょう。たとえば副菜の野菜料理が摂れなかった時は、次の食事で摂るなど、一食ではなく、1日~1週間単位で考え、完全主義にならないようにしましょう。最初からすべてきちんと揃えようすると、ストレスになり長続きしないからです。

食事は、すべて手作り料理で揃える必要はありません。忙しい方、料理が苦手な方、旅先・出張先などでは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットのお総菜などを利用することもあるでしょう。どのようなケースにおいても、主食、主菜、副菜を揃えること。一日で10品目摂ることを考えます。

3.メディアの「〇〇は体によい」「〇〇は体に悪い」を鵜呑みにしないで!


体に必要な栄養素は50種類ほどあるといわれています。栄養素は体の中で複合的に働いています。
そのため、「○○は体によい」「○○は体に悪い」といった情報を鵜呑みにして一つの食品を食べ続けたり、まったく食べなくなったりするのは危険です。

医学や栄養学の裏付けがない情報に、自身の健康を委ねてはいけません。

たとえば、疲労回復や夏バテ対策にビタミンB1が豊富な豚肉がよい、という説。こちらは新しい知見ではまったく意味がないことが分かっています。

また、ごはんなどの糖質を控える糖質制限食。血糖値が高めの方、糖尿病の方には効果的な食事法ですが、尿酸値やLDLコレステロール値が高い方はかえって検査値を悪化させてしまう懸念があります。

こういった食品や栄養にまつわる健康情報は、鵜呑みにせず、情報源や対象となる人が誰なのかを実行する前に確認してください。また、持病がある方は第一に主治医に相談することをおすすめします。

4.普段の生活を見直して、旅行中の食事はしっかり楽しもう

繰り返しますが、健康維持に大切な食事は、さまざまな食品を摂って栄養バランスを整えることです。
旅先のホテルや旅館で提供される朝ごはんやバイキングは、一度に簡単に10品目が摂れるため栄養バランスが整いやすいのです。栄養補給に最適な食事ですので、普段の食事を見直すチャンスです。


旅行は、非日常です。思う存分、飲食を楽しみたいところですが、体調を崩さない程度に自己管理は必要でしょう。

血圧上昇が気になる方が、バイキングでたくさんの料理を食べれば食べるほど食塩摂取量は増えていきます。

また、過度な飲食、就寝直前までの飲食は、睡眠の質が悪くなるうえ、体重増加をもたらします。寝ても疲れが取れず、胃腸の調子もイマイチとなると翌日の行動に支障をきたす場合もあります。

逆に、旅先での爽快な目覚めは、おいしい朝食を堪能できますし、日中、はつらつとした気分で行動できます。活動量が増えれば、昨日の食べ過ぎを帳消しにもしてくれます。

まとめ

60歳からの食事は、主食、主菜、副菜の構成とし、1日10品目を心がけましょう。

正しい食事をすれば、少しずつその快適さを実感し、食生活が変わっていくはずです。そして、いつまでも健康な体を手に入れることができると思います。
体調管理に留意し、輝きのある人生を。

文/森由香子