2026.03.30ジパング俱楽部静岡市の新観光地「小島陣屋跡」静けさに包まれた“小さな城郭”へ|編集部員が行ってきました!

陣屋跡を歩く
静岡県にはたくさんの観光地がありますが、今回編集部員が行ってきたのは「小島陣屋跡」。地元の人たちも訪れたことのある人は少ないのでは?
陣屋にはさまざまな意味があるそうですが、「小島陣屋跡」はその中でも大名陣屋と言われる、城を持つことが許されなかった大名が住んだ場所。
陣屋とはどのような場所なのか、実際に訪れてみました!
「小島陣屋跡」とは
静岡市清水区の山間(やまあい)に佇(たたず)む、国指定史跡・小島陣屋跡。
1704年(宝永元年)、松平信治が駿河国庵原郡小島に陣屋を構えたことから小島藩は始まりました。
小島藩は城を持つことができない一万石の小藩でしたが、その居所である陣屋は城郭を思わせる構造を持っており、三段の曲輪(くるわ)、枡形虎口、高石垣などが残っています。小規模な藩政拠点でありながら、城に近い姿を持っていることが、小島陣屋跡の大きな魅力であり、江戸時代の大名陣屋の姿を知るうえで貴重な史跡となっています。
昨年は「べらぼう紀行」で、小島藩士・恋川春町のゆかりの地として紹介されたことで話題に。
現在は2030年頃の完成を目指し整備が進行中で、完成までの間、訪れるたびに変化を楽しめる、これから注目の新観光スポットです。
石垣を多用した三段の曲輪
直進できないつくりの枡形虎口
石垣が語る陣屋の歴史
小島陣屋跡の大きな魅力は、技法の異なる石垣を同じ敷地内で見ることができることです。石垣に詳しくない人も、そのさまざまな積み方で時代ごとの違いがひと目で分かるはず。
その積み方は大きく分けて、①陣屋が造られた時代、②安政の大地震後、③明治時代以降と考えられていますが、今残っている石垣の正確な年代は分かっていないそう。散策しながら想像を膨らませて楽しみましょう。
また、石垣の石は別当沢という近くの川の砂岩が使われており、特別な石材ではなく、地元の川から運べる身近な石でこれほど多彩な石垣が作られていたということに驚きます。
表面が美しく揃っています
切込接ぎ(きりこみはぎ)
石を精密に加工し、隙間なく積む技法で、主郭周辺に見られます。石の加工技術の高さがみごとです。
遊び心感じる石垣
八つ巻き
真ん中の石を複数の石で囲む積み方。
見た目におもしろいのですが、安定性は高くないとのこと。どのような経緯で作られたのか気になります。
こんな大胆な積み方も
矢羽積み(上部)
矢羽積みは石を斜めに並べて谷間を埋めるように積んだもの。下部の積み方と異なることから時代差が読み取れます。
全く異なる積み方で積み直したの“あえて”なのでしょうか。
中心地でも違いが見られます
切込接ぎ落し積み(手前)・矢羽積み(奥)
陣屋の中心となる土地を囲む石垣も、南側と東側でこのように全く異なる積み方を見ることができます。さまざまな人たちの手で修繕されてきた歴史を感じます。
藩主の生活を垣間見る「御殿 書院」
元の場所へ移築復原された静かな政務の空間
御殿は、藩主が政治と生活を行なう陣屋の中でも中心的な建物で、その一部である書院が現存しています。明治時代、小島藩が廃藩となったのち建物は別の場所へ移され、公会堂として長く利用されてきました。
近年の発掘調査によって当時の位置が明らかになり、2024年に小島陣屋跡は元の場所へ移築復原され現在に至ります。柱や天井板など、江戸時代から残存していた部材を約8~9割使用しており、藩主が政務を行った静謐(せいひつ)な空間を当時のまま感じることができます。
風通しのよい居間。
藩主が寝室として使用していたと考えられる寝間
書院の見どころは、藩主の執務室として使われていた居間。大きく開かれた座敷からは竹林の緑が額縁のように広がり、建物と外の景色が自然につながります。風通しのいいこの部屋は、いるだけでほっとするような静かな時間が流れます。
ふと目線を部屋の上部に向けると、光の差し込みでふわりと浮かび上がる蔦をモチーフにした欄間や、葵の透かし彫りが施されていることに気がつきます。二葉葵の透かし彫り欄間は4枚のうち1枚が現存しておらず、残る3枚は葵の葉が4組、3組、2組と施されているため、「失われた1枚は1組の二葉葵だったのでは」と言う見学者も多いとか。当時の意匠を想像しながら眺めるのも楽しみのひとつです。
座敷からは額縁のように切り取られた竹林も、縁側に腰掛けると山の風景がすぐそこに広がり、まるで自然に包まれているようなひとときを過ごせます。
次の間に残る蔦文の欄間
縁側から望む山の景色
まとめ
小島藩が164年にわたって藩政を行った小島陣屋跡。
御殿書院のなんとも言えない居心地の良さが一番思い出に残っています。
風が抜け、光がやわらかく差し込む座敷に座っていると、「かつての大名のように、こんな場所で仕事ができたらどれほど素敵だろう」と思わず想像してしまうほどです。
今回はほとんど予習をせずに訪れましたが、歴史に詳しくない私でも、書院の貴重さや、多彩な石垣の表情に夢中になれるスポットでした。お城好き・歴史好きはもちろん、少し足を延ばして緑に囲まれた場所を静かに散策したい方にもぴったり。
まだ整備中の場所も多く残りますが、だからこそ変わっていく姿を楽しめる特別な時期とも言えます。
陣屋跡を歩きながら、石垣や書院に息づく歴史に思いを馳せ、心落ち着くひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
小島陣屋跡
| 問い合わせ先 | 054-221-1069(静岡市歴史文化課埋蔵文化財係) |
|---|---|
| 時間 | 9時30分~15時30分(11~2月は15時まで) |
| 定休日 | 2026年12月26日~2027年1月3日(平日は団体見学のみ受付・要予約) |
| 交通アクセス | 東海道本線興津駅から但沼車庫行き静鉄バス約13分の小島南下車、徒歩約7分 |
| URL | https://www.city.shizuoka.lg.jp/s6725/s005186.html |
マップ
文・写真/ジパング倶楽部編集部
