2026.06.25ジパング俱楽部なぜ佐渡は「能楽の島」になったのか。郷土史研究家のダン渡辺さんに聞きました|“観る”を楽しむ日本の芸能

佐渡の郷土史研究家に聞きました!
日本の能舞台の約3分の1にあたる35カ所の能舞台がある佐渡。江戸時代に金山の安寧を祈って始まったという佐渡の能は、やがて島民の娯楽となり、島に根づいた伝統芸能となりました。能楽は島民の間で伝承され、今でも春から秋にかけて8カ所、計15回ほど演じられています。
ダン渡辺(渡辺和弘)
なぜ佐渡は能楽の島になったのか?
写真 齋藤日出子
島に流された能楽師・世阿弥
「佐渡歴史伝説館」では世阿弥が舞ったという「雨乞いの舞」をロボットが披露
佐渡は芸能の島です。民謡『佐渡おけさ』をはじめ、鬼太鼓(おんでこ)や狂言、文弥人形芝居、能楽など、多くの芸能が伝承されています。郷土史研究家のダン渡辺さんに、佐渡と能楽のかかわりについてお聞きしました。
佐渡に能楽をもたらしたのは室町時代の世阿弥(ぜあみ)といわれています。世阿弥は能楽の名家・観世流(かんぜりゅう)の二代目で、初舞台の時の謙虚な心を忘れてはならないとみずからを戒(いまし)め、「初心忘るべからず」という言葉を残しました。奈良や京都で興行をしていましたが、室町幕府六代将軍足利義教(よしのり)の怒りに触れ、72歳の時に佐渡に流されました。
干ばつに苦しむ農民のために「雨乞いの舞」を舞ったといわれ、これが佐渡における能楽の始まりという説の根拠になっていますが、世阿弥は幽閉されていたので、舞ったのかどうか、じつははっきりしていません。
金山の安全を祈願した佐渡奉行たち
江戸時代に佐渡で能楽が盛んになる理由のひとつが金山の存在
2024年に世界文化遺産になった「佐渡島の金山」ですが、金銀山の本格的な開発は16世紀なかばからといわれています。江戸時代になると佐渡は幕府直轄の天領(てんりょう)となり、1604(慶長9)年には初代佐渡奉行となる大久保長安(ながやす)がやってきました。
佐渡奉行の役目は佐渡一国(佐渡島)の行政と、金銀山の運営です。長安は猿楽(さるがく)者の息子で、無類の能好きであっため、能楽師一行を連れてきました。そして、佐渡金山の安寧を祈って能を奉納しました。
その後の歴代佐渡奉行も能を奉納し続けたため、江戸時代中期になると島民の娯楽として定着しました。そして、佐渡は能楽の島として知られるようになったのです。
佐渡の能の特徴とは?
大膳神社で年2回開催される能は予約不要、無料で鑑賞できます
毎年、春から秋にかけて開催される薪能
椎崎諏訪神社の舞台正面の鏡板には色鮮やかな松の絵が描かれています
現在、佐渡には35の能舞台があります。最盛期には200以上の能舞台があったといわれ、大正時代に佐渡を訪れた歌人・大町桂月(おおまちけいげつ)は、「鶯や十戸の村の能舞台」と詠んでいます。十戸の村は少し大げさかもしれませんが、小さな集落にも能舞台があることに驚いたことがよく分かります。
今でも佐渡では毎年春から秋にかけて、8カ所の会場で、15回ほど能が上演されています。その多くが薪能であることも特徴のひとつです。
1846(弘化3)年に再建された、茅葺(かやぶ)き屋根が歴史を物語る現存最古の能舞台がある大膳(だいぜん)神社。年間5回ほどの薪能が奉納される椎崎(しいざき)諏訪神社。そのほか、舞台や演出によって趣が異なります。
演者の多くは一般の島民
椎崎諏訪神社。能は難解といわれますが、開演前に解説があるので、理解の助けになります
演者の多くはプロではなく、一般の島民です。ほかに仕事を持ちながら稽古に励み、舞台に立っているのです。佐渡の能は、暮らしのなかに根づいているからこそ長く伝承されるのだと実感できます。
ここ数年、能や狂言、太鼓をやり始めるこどもが増えています。私が見ても日本古来の芸能というのは地味だと思うのですが、逆に中学生や高校生から見ると、昭和の歌謡曲が新しく感じられるのと同じように「なんかかっこいいね」ということになるんです。私たちと視点が違うんですね。本当にうれしいことです。
椎崎諏訪神社
参道に明かりが点(とも)されると観客たちが集まり始めます
島でもっとも多く能が演じられる神社。
1376(永和2)年建立。瓦葺き切妻造りの能舞台は1902(明治35)年の建築で県の有形民俗文化財。「天領佐渡両津薪能」は、5~10月(8月は除く)に計5回演じられます。
椎崎諏訪神社
| 問い合わせ先 | 0259-23-3300(天領佐渡両津薪能実行委員会) |
|---|---|
| 開催期間 | 2026年は5月5日、6月13日、7月4日、9月22日、10月12日(特別公演) |
| 時間 | 参拝自由(天領佐渡両津薪能は19時30分~21時) |
| 交通アクセス | 上越新幹線新潟駅から佐渡汽船行きほか新潟交通バス約17分の終点下車後、徒歩すぐの新潟港で佐渡汽船ジェットフォイルに乗り換え約1時間7分の両津港下船。両津港佐渡汽船から新潟交通佐渡バス南線約5分の椎崎温泉入口下車、徒歩約3分(薪能の日は「薪能ライナーバス」運行あり、要予約) |
| 値段 | 能鑑賞は運営協力金2500円(特別公演は4000円) |
| URL | https://www.visitsado.com/spot/detail0053// |
大膳神社
右が本堂、左が能舞台。芝生の境内が珍しい
大和飛鳥路に似た田園風景に鎮座。1846(弘化3)年に再建された茅葺き寄棟造りの能舞台は、佐渡に現存する最古の能舞台といわれます。毎年、4月18日の例祭に奉納能、6月に薪能と鷺流(さぎりゅう)狂言が演じられています。
大膳神社
| 問い合わせ先 | 0259-27-5000(佐渡観光交流機構) |
|---|---|
| 開演日 | 2026年は4月18日、6月7日 |
| 時間 | 参拝自由(演能は4月14時~、6月18時30分~) |
| 交通アクセス | 上越新幹線新潟駅から佐渡汽船行きほか新潟交通バス約17分の終点下車後、徒歩すぐの新潟港で佐渡汽船ジェットフォイルに乗り換え約1時間7分の両津港下船。両津港佐渡汽船から新潟交通佐渡バス南線約46分の大膳神社下車すぐ(薪能の日は「薪能ライナーバス」運行あり、要予約) |
| 値段 | 無料 |
| URL | https://www.visitsado.com/spot/detail0106/ |
佐渡歴史伝説館
池のほとりでは、竜王岩伝説の竜神と記念撮影を
佐渡にゆかりの歴史上の人物を知ることができる施設です。
佐渡に配流された順徳上皇、日蓮聖人、世阿弥(ぜあみ)の苦難を等身大ロボットで紹介する体験型ミュージアム。世阿弥のコーナーでは、干ばつに苦しむ村人のために舞ったという「雨乞いの舞」を紹介しています。
併設する「佐々木象堂(しょうどう)記念館」は、佐渡出身の蝋型鋳金家(ろうがたちゅうきんか)で人間国宝の佐々木象堂の作品を展示しています。皇居新宮殿正殿の棟飾りのデザインに採用された「瑞鳥(ずいちょう)」をはじめ、日本の伝統美と西洋のモダニズムを融合させた作品の数々は、芸術性の極みという高い評価を得、心を打つ美しさに満ちています。
「お食事処 夕鶴」では、活〆佐渡サーモンや佐渡産ベニズワイガニ、南蛮海老、イクラを盛った「特選海鮮盛り 華」2500円や、希少性から幻の黒毛和牛といわれる佐渡牛を野菜とともに陶板で焼く「佐渡牛極み膳」2600円など、佐渡産食材を使った料理が味わえます。
佐渡産の海の幸を満喫する「特選海鮮盛り 華」
佐渡産コシヒカリや佐渡わかめの田舎煮、佐渡深海塩のお吸い物付きの「佐渡牛極み膳」
佐渡歴史伝説館
| 問い合わせ先 | 080-2447-5401 |
|---|---|
| 営業時間 | 9時~16時30分(「お食事処 夕鶴」は11時~14時30分〈12月1日~3月19日は11時~13時30分〉) |
| 定休日 | 4~11月は無休(12~3月の営業は要問い合わせ。「お食事処 夕鶴」は12月1日~3月19日は月・金・土・日曜のみ営業) |
| 交通アクセス | 上越新幹線新潟駅から佐渡汽船行きほか新潟交通バス約17分の終点下車後、徒歩すぐの新潟港で佐渡汽船ジェットフォイルに乗り換え約1時間7分の両津港下船。両津港佐渡汽船から新潟交通佐渡バス南線約55分の佐渡歴史伝説館下車すぐ(土・日曜・祝日のみ運行) |
| 値段 | 入館900円 |
| URL | https://www.sado-rekishi.jp/ |
紹介スポット一覧マップ
文・写真/塙 広明
- ※記事中の情報は2026年6月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。

