2021.09.15ジパング俱楽部“やわらかレシピ”のおいしさの秘密は?「やさしい献立」でもっと気軽に食事を
食べやすい食事を毎日つくるのは大変
高齢になるにつれて、食事で嚙みづらくなったり、飲み込みづらくなったりすることがあります。ですが、食べやすいものをと、毎日の食事に気を使うのも負担ではありませんか?
「手軽にちゃんと食事をとりたい」
そんな声にお応えして、キユーピー株式会社で介護食を担当する、武藤 彩乃(むとう あやの)さんにお話をうかがいました。
介護食といっても、じつは“やわらかレシピ”として介護以外でも多くの方が利用されています。やわらか食のレトルト商品「やさしい献立」のおいしさの秘密に迫ります。
Q.「やさしい献立」はどんな人が使っていますか?
A.ご家族の介護だけではなく、普段の生活の様々なシーンでお使いいただいています。
たとえば、こんな時に便利です。
・夜の帰宅が遅くなり、軽い食事で簡単に済ませたい時
・歯の治療中で、普通の食事が噛めない時
・体調が優れない時
お客様からは、次のようなお声が届いています。
・すぐに食べられるから便利です。
・準備と片付けがいらないので、楽ですね。
・食べやすいことが保証されているので、安心です。
・体調を崩していた家族が、やさしい献立のレトルトを食べたら元気になりました。
・メニューの幅が広がって、楽しみが増えました。
Q.「やさしい献立」のおいしさの秘密はなんですか?
A.おいしさの秘密は二つあります。
一つ目は「ちょうど良い」やわらかさであること。
お水はサラサラしすぎていて、嚥下(えんげ)機能が低下している方は肺に入りむせてしまいます。お饅頭の「あんこ」のようなものは、舌の送り込みの力が弱っていると、のどまで届きません。
お水とあんこの中間の、飲み込みやすい「ちょうど良い」やわらかさで「やさしい献立」はつくられています。
二つ目は「おいしさ」の奥深さです。
人が味を感じるのは、ものを噛んで味がにじみ出るとき、また肉なら肉の、かぼちゃならかぼちゃの記憶と似た味を感じる時など、様々な要素が関わっています。
肉や魚の食感や香りも、おいしいと感じる要素の一つですね。
「やさしい献立」は、さまざまな「おいしさ」を味わっていただけるように工夫してつくられています。
Q.「やさしい献立」はどんな人がつくっていますか?
A.お客様のニーズを汲み取る部署、メニューを試作する部署、そして工場で商品をつくる部署、それぞれのメンバーが役割を持って商品づくりをしています。
「家族に自信をもってすすめられるものを」という思いで、わたしたちは商品づくりをしています。
「やさしい献立」は、工場でもできるだけ手作りに近い工程になるよう工夫していることも、こだわりの一つです。
試作を何十回やっても味が決まらない時は、キユーピーのコーポレートシェフに、材料や調理法のアドバイスをもらっているんです。彼らは料理の専門学校を出て一流のレストランや料亭で勤めた経験があり、おいしい食事を提供するプロたち。
毎日食べても飽きなくておいしい食事にするために、プロのノウハウを入れることで、より良い商品づくりを目指しています。
Q.具体的にどのようなメニューがありますか?
A.キユーピーの「やさしい献立」は、「やわらかさ」で4段階に分かれています。
・容易にかめる
・歯ぐきでつぶせる
・舌でつぶせる
・かまなくてよい
肉じゃが、グラタン、やわらかごはん、カレーライスなど、合計で約50種類の豊富なメニューがあります。形が残る煮込み料理からペースト状の食事まで、噛む力と飲み込む力に合わせて選んでいただけます。ひと手間加えたアレンジレシピもご提案しています。
近年は塩分を減らしてもおいしく食べられるように改良されていますので、安心して召し上がっていただけます。
Q.そもそも、なぜ介護食をつくることになったのですか?
A.つくる人の負担を減らし、つくる人にも食べる人にもやさしい食事を提供したかったからです。
キユーピーでは、かつて病院や高齢者施設向けに、チューブから栄養をとる流動食を業務用として提供していました。
20年以上前のこと、病院や施設に通ううちに、「口から食べることをあきらめていいのか?」と担当者が疑問を抱いたことが始まりです。
ある日スーパーで、高齢の方がキユーピーの離乳食をたくさん買っていました。「自分が食事をうまく噛めなくなって、飲み込みづらくなったから」という理由だったのです。
それならばと、大人専用のやわらかい食事、つまり介護食をつくることになりました。
1998年、日本で初めて家庭用の介護食「ジャネフ介護食」を販売。現在は名前を変えて「やさしい献立」となっています。
食べる人と食べさせる人にとって、やさしい食事であること。
毎日の食事づくりは、買い物、準備、そして片付けと大変な仕事です。つくる人の負担を減らし、つくる人にとってもやさしくという思いも込めて「やさしい献立」と名付けました。
最後に、武藤さんの「やさしい献立」への思いをお聞かせください
「長年お世話になりました」というお手紙をいただいた時、その方の人生の一部に、私たちの商品が入っているんだなと感動しました。同時に、背筋が伸びる思いです。
子育てで離乳食を経験して「あ、食べた!」というあの感動は、介護食にも通じるものがあると思います。
食事づくりの負担が減り、やわらかい食事を楽しんでいただけるように、自分が良いと思うものをつくっていきたいです。
【編集後記】
「舌でつぶせる」シリーズの「鶏ときのこの雑炊」をいただきました。お米の粒が少し残っていて、味はしっかり付いているのにくどくない、やさしい味でした。
普段の食事として、食事づくりを楽にしたい時のメニューにも、また保存食としても安心して置いておけると思いました。
- ※取材・文/市川弘美