2026.01.29ジパング俱楽部神宮の山で御用材を育てる/2033遷宮への道④|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発・おすすめ旅ネタ情報
このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。
ここでは1300年以上にわたって続く、伊勢神宮の第63回神宮式年遷宮について、地元三重在住で、文筆家・皇學館大学非常勤講師の千種清美(ちくさきよみ)さんが、その関連行事と、最新の様子をお知らせします。
- ※メイン画像は、鼻突谷での神事
伊勢の御杣山復活を目指して
神宮宮域林 写真/伊勢神宮公式サイトより転載
良質なヒノキで造営される伊勢神宮の美しい社殿。神宮式年遷宮を継続するには、なにより社殿の御用材(ごようざい)となるヒノキの確保が重要となってきます。前回の遷宮ではおよそ1万本以上のヒノキが使用されました。そのヒノキは現在、長野県と岐阜県の木曽の国有林にある御杣山(みそまやま)から伐採されていますが、鎌倉時代までは神宮周辺の山でした。
伊勢神宮の周囲の山(神宮宮域林)では、1923(大正12)年に策定された「神宮森林経営計画」により、ヒノキの御用材を育てる取り組みが粛々と行なわれています。御杣山の復活を目指して、神宮宮域林でも遷宮の御用材となるヒノキを永続的に育てる山を作っているのです。
成長を祈り、斜面に1本1本手植え
総勢70人ほどで山の斜面に苗木を植えました
神宮大宮司、少宮司も植樹祭に参加
2025年11月、神宮宮域林(きゅういきりん)で植樹祭が行なわれました。一般に神宮林と呼ばれるこの地域は入山禁止の山地です。この日は約70人の神宮職員を含む参加者たちが、3台のバスで会場へ向かいました。神職や舞姫もふだんとは異なり、作業着姿です。参拝者でにぎわう内宮宇治橋前から五十鈴川(いずすがわ)沿いの細い道を行くこと約30分、内宮の南側にあたる鼻突谷(はなつきだに)という場所に着きました。
目の前に広がる約0.2ヘクタールの斜面。ここにヒノキの苗木600本を植えるのです。まずは神職による作業の安全を祈るお祭りが行なわれました。正面には植樹する苗木が置かれています。この苗は宮域林のヒノキから採った実から育てた3年生のもの。40センチほどに育ち、青々とした葉をつけています。
あらかじめ、植えるための穴が掘られ、そこに各自が苗木を植えていきます。神宮の大宮司、少宮司もスコップを手にして、ていねいに植えています。植樹は一見簡単そうに見えるかもしれませんがこのあたりの傾斜は25度ほど。平地で行なうものとは異なり、慣れない者にとっては立っているだけでもひと苦労です。私もカメラを担ぎ、斜面の上まで登るのに息が切れました。
1時間あまりで、すべての苗木が植えられました。参加者のひとりに声をかけると、「10株ほど植えました」と晴れ晴れとした顔で答えてくれました。
終戦後に始まっていた植樹祭
ヒノキの苗木。材木となるには通常40~50年程度必要です
神宮の植樹祭は毎年春に行なわれていますが、今年は式年遷宮にちなむお祭り(遷宮諸祭)が始まったため、秋の11月に延期されました。中止にせず、延期して行なったのです。
延期といえば過去、式年遷宮が延期されたことがありました。戦後に行なわれた第59回の遷宮の時です。当初は1949(昭和24)年だったのですが、終戦後、天皇陛下により延期が言い渡され、遷宮は1953(昭和28)年になされました。しかし、神宮や地元からの強い要望があり、準備が進んでいた宇治橋の架け替えだけは、予定どおりの1949年に行なわれました。
そして宇治橋が架け替えられた翌年の1950(昭和25)年、まだGHQの占領下ではありましたが、植樹祭が新たに始められていたのです。まだ先行きの分からないなか、神宮が将来の御用材となるヒノキの苗木を植えていたことに、遷宮の継続への並々ならぬ熱意を感じずにはいられませんでした。
以来、植樹祭は毎年行なわれ、今回は79回を数えます。明日の御用材の育生を目指す御杣山の復活は一歩一歩進んでいるのです。
- ※当ホームページでは三重県伊勢市を中心に予定されている遷宮行事の数々を、順次紹介していく予定です。お楽しみに。
第63回神宮式年遷宮の主なお祭り一覧
~御神木のお祭り~
令和8年(2026)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 御木曳初式 (おきひきぞめしき) |
御杣山より伐り出された御用材を、内宮と外宮の両宮に曳き入れる伝統行事です。揃いの衣装を着た伊勢の住民(旧神領民)が、木遣歌も勇ましく奉仕します。両正宮や別宮の棟持柱(むなもちばしら)にあてられる「役木(やくぎ)」という代表的な御用材を神域に曳き込むため、「役木曳(やくぎびき)」とも呼ばれます。 | ◎ |
| 4月 | 木造始祭 (こづくりはじめさい) |
御造営の作業を始めるに際し、作業の安全を祈るお祭りです。御木曳初式(おきひきぞめしき)で奉曳された御木に小工(こだくみ)が忌斧(いみおの)を打ち入れる所作を行ないます。 | 〇 参道 |
| 5~7月 | 御木曳行事(第一次) (おきひきぎょうじ) |
伊勢の住民(旧神領民)と全国の崇敬者により、御用材を古式のままに両宮域内へ曳き入れる盛大な行事です。内宮は五十鈴川を川曳(かわびき)し、外宮は御木曳車で陸曳(おかびき)します。遷宮諸祭・行事の中でもっともにぎやかな行事です。 | ◎ |
| 5月 | 仮御樋代木伐採式 (かりみひしろぎばっさいしき) |
「遷御(せんぎょ)」の際に御神体を納める「仮御樋代(かりみひしろ)」の御用材を伐採するにあたり、木の本に坐す神をお祀りし、忌斧を入れる式です。 | × |
令和9年(2027)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 5~7月 | 御木曳行事(第二次) (おきひきぎょうじ) |
御木曳行事は地元の旧神領民の誇りとして奉仕されます。御遷宮に奉仕できる数少ない行事として旧神領民に加えて全国からも多くの特別神領民が御用材を奉曳し、伊勢の町は活気に満ち溢れます。 | ◎ |
~社殿建築のお祭り~
令和10年(2028)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 鎮地祭 (ちんちさい) |
新宮を建てる新御敷地で行なわれる最初のお祭りです。造営作業の安全を祈り大宮処(おおみやどころ)に坐す神を祀ります。このお祭りを節目に遷宮諸祭は山作(やまづくり)から庭作(にわづくり)へと進められていきます。 | 〇 参道 |
令和11年(2029)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 11月 | 宇治橋渡始式 (うじばしわたりはじめしき) |
内宮の入口に架かる宇治橋は、遷宮の度に架け替えが行なわれ、古式ゆかしく渡り始めが行なわれます。「渡女(わたりめ)」を先頭に全国から選ばれた三世代そろった夫婦に続いて、関係者や市民などが新橋を渡ってお祝いします。 | ◎ |
令和12年(2030)
令和13年(2031)
令和14年(2032)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 3月 | 立柱祭 (りっちゅうさい) |
御正殿の建築はじめに際し、御柱(みはしら)を建てるお祭りです。建物の守り神として崇められる屋船大神(やふねのおおかみ)に平安を祈り、束柱(つかばしら)を貫き支える足堅(あしがため)と四間樌(よまぬき)の木口(きぐち)を小工(こだくみ)が木槌(きづち)で打ち固めます。 | 〇 参道 |
| 3月 | 御形祭 (ごぎょうさい) |
御正殿の東西の妻の束柱に円形の図様(ずよう)を穿(うが)つお祭りです。『皇太神宮儀式帳(こうたいじんぐうぎしきちょう)』には御正殿竣功後に奉仕する秘儀と記されています。 | × |
| 3月 | 上棟祭 (じょうとうさい) |
御正殿に棟木(むなぎ)を上げるお祭りです。古儀のとおりに測量をした後、神職と造営庁職員が棟木から伸ばされた綱を曳いて棟木をあげます。造営に関わる遷宮諸祭のなかでもひと際華やかなお祭りです。 | 〇 参道 |
| 5月 | 檐付祭 (のきつけさい) |
御正殿の御屋根の萱(かや)を葺(ふ)き始めるお祭りで、屋船大神(やふねのおおかみ)に祈りが捧げられます。 | 〇 参道 |
| 7月 | 甍祭 (いらかさい) |
御正殿の萱も葺きおわり、金物を打つお祭りです。代表的な金物が御正殿前に奉安され、小工が金槌で打つ所作をします。 | 〇 参道 |
令和15年(2033)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 7~8月 | 御白石持行事 (おしらいしもちぎょうじ) |
伊勢の住民(旧神領民)が新宮に御白石を奉献する行事です。全国から特別神領民も伊勢に集い、五十鈴川と伊勢街道には、木遣歌と「エンヤ―!」の掛け声がひびきます。 | ◎ |
| 9月 | 御戸祭 (みとさい) |
御正殿の御扉を立てるお祭りで、扉に鑰穴(かぎあな)を穿ちます。御扉が付くことは造営工事の完了を意味します。 | 〇 参道 |
| 9月 | 御船代奉納式 (みふなしろほうのうしき) |
御神体のお鎮まりになる「御船代」を刻み、御正殿に奉納します。 | 〇 参道 |
| 9月 | 洗清 (あらいきよめ) |
新殿の竣功にあたり殿内と殿外を洗い清める儀式です。 | 〇 参道 |
| 9月 | 心御柱奉建 (しんのみはしらほうけん) |
心御柱は正殿の御床下に建てられる特別な御柱で、忌柱(いみばしら)、天ノ御量柱(あめのみはかりのはしら)とも呼ばれます。心御柱の奉建は、遷宮諸祭のなかでもひと際重んじられる秘儀です。 | × |
| 9月 | 杵築祭 (こつきさい) |
新殿の竣功を祝し、大宮処(おおみやどころ)を撞(つ)き固めるお祭りです。祭儀に先立ち五丈殿で饗膳(きょうぜん)の儀を行ない、神職は白杖(びゃくじょう)を持ち新殿の周りをめぐり、古歌を歌いながら柱の根本を撞き固めます。 | 〇 参道 |
| 10月 | 後鎮祭 (ごちんさい) |
新宮の竣功に際し、御正殿の床下に天平瓮(あめのひらか)を奉居するお祭りです。大宮処の平安を祈った鎮地祭の対になるお祭りです。 | 〇 参道 |
~神遷しのお祭り~
令和15年(2033)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 10月 | 御装束神宝読合 (おんしょうぞくしんぽうとくごう) |
天皇陛下より大御神に献ぜられる御装束神宝を、新宮の四丈殿において、式目(しきもく)に照らし読み合わせる儀式です。 | 〇 参道 |
| 10月 | 川原大祓 (かわらおおはらい) |
遷御の前日、仮御樋代(かりみひしろ)・仮御船代(かりみふなしろ)や御装束神宝を始め、遷御に奉仕するすべての奉仕員を「川原祓所(かわらはらいしょ)」で祓い清める儀式です。 | 〇 参道 |
| 10月 | 御飾 (おかざり) |
遷御当日、新調された御装束で殿内を装飾し、大御神にお遷りいただく準備をする儀式です。 | × |
| 10月 | 遷御 (せんぎょ) |
大御神が本殿から新殿へとお遷りになる式年遷宮の中核をなすお祭りです。100名をこえる奉仕員は御装束神宝(おんしょうぞくしんぽう)を手に整列し、天皇陛下がお定めになられた時刻に大御神は本殿から出御(しゅつぎょ)され、新殿に入御(じゅぎょ)されます。 | × |
| 10月 | 大御饌 (おおみけ) |
遷御の翌日の早朝、新殿において初めて大御神に神饌(しんせん)を奉るお祭りです。 | 〇 参道 |
| 10月 | 奉幣 (ほうへい) |
古くは「一社奉幣(いっしゃほうへい)」と称され、遷御とともに一際重んじられてきたお祭りです。天皇陛下より奉られる幣帛(へいはく)を奉納し、その後五丈殿で饗膳の儀が行なわれます。 | 〇 参道 |
| 10月 | 古物渡 (こもつわたし) |
古殿内の神宝類を新宮の西宝殿に移す儀式です。大御神がお遷りになった後の古殿は昨日までと違った雰囲気が漂っています。 | 〇 参道 |
| 10月 | 御神楽御饌 (みかぐらみけ) |
御神楽を執り行なうに先立ち、大御神に神饌を奉るお祭りです。 | × |
| 10月 | 御神楽 (みかぐら) |
新宮の四丈殿において、天皇陛下がお遣わしになった宮内庁楽師(がくし)が御神楽を奉納します。遷宮諸祭の最後を飾るお祭りです。 | × |
令和16年(2034)
| 開催 | 行事名 | 概要 | ◎見学可 〇条件付き ×非公開 |
|---|---|---|---|
| 順次 | 別宮の遷宮 | 内宮、外宮、荒祭宮(あらまつりのみや)、多賀宮(たかのみや)に続き、残りの12所の別宮でも遷宮が執り行なわれます。 | 〇 参道 |
- ※伊勢神宮「遷宮予定年表」より
この記事を書いた人
- ※記事中の情報は2026年1月時点のものです。
- ※写真はすべてイメージです。
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