釧路湿原をのんびり走る、ノロッコ車両に乗車!
高まる気温に夏の気配を感じるとある週末、爽やかな風を求めて北海道の道東エリアに出かけてきました。お目当てはもちろん、JR北海道 釧網(せんもう)本線の〔くしろ湿原ノロッコ〕号。
いくつか運転パターンがありますが、今回はオーソドックスな釧路~塘路(とうろ)間(営業キロ27.2キロ)1日1往復の日を選びました。
『JR時刻表』×トレたび 連動企画です。
11時06分 釧路駅発の〔くしろ湿原ノロッコ2号〕で旅がスタート
目的の〔くしろ湿原ノロッコ2号〕の釧路駅発時刻は11時06分。朝一の特急なら10時57分に釧路駅へ到着できるので、札幌からの当日アクセスも可能です。釧路市内に前泊して迎えた乗車当日は薄雲のかかった1日でしたが、釧路の最高気温は18度。予報で本州各地が真夏日、札幌も最高27度を示していたので、夏も涼しい道東ならではの気候を感じられる旅でもありました。
車内の様子を紹介!
駅員さんに教えてもらった時刻に合わせて釧路駅3番乗り場で待っていると、〔くしろ湿原ノロッコ2号〕が定刻通り入線してきました。出発までの約30分間で客車内を探検します。展望客車である2~4号車の座席構成は6人掛けボックスシート、2人掛けベンチシート。いずれも木目調の落ちついた雰囲気の指定席です。
2号車は車内販売カウンターがあり、3号車はバリアフリー車両、4号車にはタンチョウとエゾシカのオブジェが飾られています。最も塘路側の1号車は普通気動車同様のボックスシートとロングシートの構成。展望車ではありませんが唯一の自由席なので早くも席は埋まり始めていました。
客車を引くディーゼル機関車(DE10)を眺めていると発車時刻に。駅員さんに見送られて出発です。座席は2号車。今年導入された「えきねっとチケットレス座席指定券」での利用です。1週間ほど前に専用サイトから購入したときには窓側は全て満席。ただ、通路側でも景色は十分楽しめるとのことで、ボックス席通路側を選びました。
いよいよ出発! 車内アナウンスとともに沿線風景を楽しむ
東釧路駅を出発すると、2号車後方でガイドさんの車内アナウンスが始まりました。これからはポイントに合わせて、丁寧な見どころ案内が次々続きます。通過駅・遠矢の市街地を過ぎると自然は一気に深まります。徐行とともに紹介された「岩保木(いわぼっき)水門」の付近からはついに国立公園の中へと入っていきます。
釧路湿原は、国内湿原の総面積の約6割に当たるそうです。底なし沼などもあって人の立ち入りが制限され、動植物の楽園となっています。展望台が各所にありますが、有名なのは細岡展望台。次に停車した釧路湿原駅が最寄りで乗客の一定数はこちらで下車しました。カラマツで造られたログハウス風駅舎は景観にマッチ。車内から撮影する方も多くいました。
釧路湿原駅を出発
距離、乗車時間ともに既に中間地点を過ぎましたが、景色はここからが本番。釧路川の蛇行に沿うよう列車は大きくカーブを描いて走ります。
湿原のきれいな広がりを眺めていると、駅間は営業キロでわずか2.4キロなのですぐ細岡駅に到着。カヌーの拠点がある駅で、ホームにはインストラクターの方がお迎えに立っていました。「朝のツアーでお世話になった〇〇です!今度はノロッコに乗っています!」と乗客の一人が手を振って交流していたのが印象的でした。
細岡駅を出発
まずは低層湿原が開けます。ガイドさんからは「この一帯は動物が多く出没いたしますのでぜひ目を凝らして探してみてください」との案内。続いて「左手に沼が2つ見えてまいります。暑い日になりますとシカが沐浴している姿をみることができ……あ、今日いますね、左側に」とアナウンス。車内がざわつく中、残念ながらこの様子は見逃しました。気温20度ぐらいになるとチャンスとのことでした。
続いて、「鉄道でしか見ることのできない一番の見どころ」との紹介。釧路川と列車の距離がぐっと近くなり、木立の隙間から見えていた川が徐々に開けて目前に広がりました。川が大きく蛇行する雄大な自然を徐行する列車内からじっくり眺めることができました。
車掌さんから乗車証明書をいただき、終着の塘路駅に定刻の11時51分に到着。塘路湖やサルボ展望台まで足を延ばすのもおすすめですが、この日は折り返し〔くしろ湿原ノロッコ1号〕で戻ります。ノロッコ号は機関車の付け替え不要な“プッシュプル・トレイン”。復路は運転台付き制御客車の4号車が先頭となります。
復路は〔くしろ湿原ノロッコ1号〕で釧路駅を目指す
塘路駅から折り返し運転
周辺を見学し、再び塘路駅ホームに戻ってくると、ガイドさんが車掌さんと話し込んでいる場面に出くわしました。聞くと、運転士さんが見つけた動物の情報を車掌さん経由で共有しているとのこと。少しでも遭遇率を挙げようとチーム一丸となって取り組んでいることを知り驚きました。これぞおもてなしの神髄ですね。もしかしたら復路の方が動物と会える可能性は高いのかもしれません。
戻りも2号車に乗車です。運よく指定の取れたベンチシートに座り、定刻の12時17分に塘路駅を出発。早速一番の見どころ・最接近する釧路川を迎えます。そこでは往路はいなかったカヌーを楽しむ一団に出会うことができました。列車内から手を振り、カヌーからも手を振り返すなかなか貴重な光景から復路の旅は始まりました。
“二度目”の正直で、先ほど逃した沐浴するシカを見ることができ満足していると、車掌さんから復路版の乗車証明書をいただきました。毎年異なるデザインのためにコレクターもいるといいます。今年は高級感あるエンボス加工がされた名刺大。裏返すと往路版とデザインがつながる仕掛けになっていました。
山側ベンチシートならではのメリットも
線区の特性上、主な見どころは川側に集中していますが、山側のベンチシートは背もたれを返して体を通路側に向けることも可能。返す手間はあるものの川側景色も十分楽しむことができます。また、すぐに立ち上がりやすいのがベンチシートのメリットです。車内を歩きながら景色を楽しんだり、もちろん他の方には配慮はしながらですが、山側、川側共に景色が開ける塘路~細岡間の達古武(たっこぶ)湖の近辺では、その場に立って吹き込む風を顔に直接感じてみたり。気持ち良い瞬間を過ごしました。
車内販売のおみやげにも注目!
釧路湿原駅が迫ってきたタイミングで車内販売のおみやげを探します。他の方が買う様子を見て気になっていましたが、カウンターが空くタイミングを見計らって伺いました。オリジナルグッズが豊富で目移りしつつも、新商品「デザインBOXクッキー」(800円)や、売店を担当するノロッコレディおすすめの名物「ノロッコ号プリン」(360円)を購入。プリンを早速いただいたところ、口どけなめらかな絶品牛乳プリンでした。
旅も終盤……名残惜しい気持ちでいっぱい
水門付近まで帰ってきました。アナウンスのおかげもあって、ここまでにエゾシカと何度も出会うことが出来たのに、まともに撮影できたものはありませんでした。タンチョウにも会いたいのでまた挑戦したいです。列車は国立公園からは出ましたが、遠矢~東釧路間では湿原の広がりを再度見ることができ、これが名残惜しさを掻き立てます。東釧路駅を経て、釧路川橋梁を渡ると、13時5分の定刻に釧路駅に到着。降車時はスタッフの方々がお見送りしてくれました。
今回は片道約50分を往復しましたが、あっという間だった、というのが率直な感想。アナウンスを聞き、動物を探し、プリンを食べ、写真を撮りと欲張り、見逃したビューポイントもありました。片道利用、途中下車などの旅程も考えられ、期間中は2往復する日、川湯温泉駅まで延長運転する日もありますから、楽しみ方はまだたくさんありそう。降車前にもう一回探索した車内ではガイドの一人が手掛けたという案内地図を見つけました。次回乗る際の貴重な情報となりそうです。
列車情報
運転日 | 2022年10月10日(月・祝)までの毎日 ※9月14日(水)~16日(金)を除く ※9月20日(火)~22日(木)は〔夕陽ノロッコ〕号が運転 |
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運転区間 | 釧路~塘路 ※2022年10月8日(土)は川湯温泉まで延長 |
運転時刻 |
2号 釧路発11:06 → 塘路着11:51 1号 塘路発12:17 → 釧路着13:05 他 |
備考 | 詳しくはJR北海道のホームページをご覧ください。 |
- ※撮影・文/編集部
- ※掲載されているデータは2022年7月1日現在のものです。