2024.05.30ジパング俱楽部つけあげ【鹿児島県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2019年5月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
「つけあげ」
地酒と砂糖が織り成す 濃くまろやかな甘みが薩摩流
鹿児島県
口いっぱいに広がる甘みと旨みは、とっておきの"おもてなし"
魚のすり身を油で揚げた料理「薩摩(さつま)揚げ」。
名前のとおり、旧薩摩国で生まれた食べ物ですが、ご当地では「つけあげ」と呼ばれます。発祥の地と謳(うた)われる、いちき串木野(くしきの)市を訪ね、1日1トンものつけあげを製造する「髙浜蒲鉾(たかはまかまぼこ)」の髙濵良太朗社長にお話を伺いました。
つけあげの誕生は江戸時代、薩摩藩主・島津斉彬(なりあきら)が琉球と交易を行なっていた頃のこと。琉球から伝来した料理のなかに「チキアーギ」があり、これがなまって「つけあげ」に変化したと伝わります。
県内でも味はさまざま。いちき串木野では豆腐を入れるのが定番ですが、豆腐を使わないところもあり、魚種や、全卵使うか、黄身または白身だけを使うかによっても味や食感が変わってきます。
が、共通するのはその甘みと旨みです。「この辺りは昔、近海のアジやサバが揚がる漁村でした。高温多湿な気候でも獲れすぎた魚を長期保存できるように、揚げる調理法を取り入れたのでしょう。漁村の知恵ですね。のちにおもてなしの気持ちを表すために甘くなっていったそうです」と髙濵さん。
確かに、かぶりつくとジュワーっと染(し)み出すやさしい甘さを、深い旨みが包みこむよう。
そして魚の味もしっかり主張してきます。甘さの秘密は、地元で地酒と呼ばれる灰持酒(あくもちざけ)にあり。みりんのように甘く、旨み成分も豊富な地酒を加えることで、深く丸みのある甘さが生まれるのです。
濃厚な甘さこそ、本場の味。
食べれば「おじゃったもんせ(ようこそいらっしゃいました)」の気持ちが伝わってくるようです。
材料と作り方 【作りやすい量・小判形で約10枚分】
材料
- 魚(アジなどを3枚におろしたもの)…… 400g
- 木綿豆腐 …… 200g(約半丁)
- 塩 ……小さじ1.5
- 灰持酒(なければ日本酒または料理酒)……大さじ1
- 卵(全卵) …… 1個
- 片栗粉 ……大さじ4
- 砂糖(上白糖) ……大さじ4
- 氷 …… 40g(2~3個)
- 菜種油またはキャノーラ油 ……適量
作り方
- 1.魚をぶつ切りにする。魚はアジ、エソ、イトヨリ、タラなど脂の少ない魚を選ぶ。
- 2.切った魚をフードプロセッサーに入れてこね、塩を加える。
この時、温度上昇を 防ぐために氷を2~3個入れて、すり身の温度を低めに保つ。フードプロセッサーがない場合はすり鉢とすりこぎを使う。
- 3.水切りした木綿豆腐を手でちぎり入れ、なめらかになるまでこねる。
絹ごし豆腐ではうまく揚がらないため、必ず木綿豆腐を使うようにする。
- 4.灰持酒を入れた後に、砂糖、片栗粉と卵を入れこねる。
灰持酒が手に入らない時は日本酒または料理酒で代用可。この時、甘さを抑えたければ砂糖の量で調節を。
- 5.水か油を手につけ、すり身を小判形に成形する。あまり厚くすると火が通りにくくなるので注意。
- 6.160度に熱した菜種油で3~4分じっくり揚げる。
油の中でひっくり返しながら絶えず動かし、こんがりきつね色に揚がったら完成。
まずはそのまま食べるのが一番。うどんにのせたり、ちゃんぽんに入れるのも◎。
本場の味を求めて……「髙浜蒲鉾」
豆腐入り、豆腐なし。両方味わうならココ!
1928(昭和3)年創業。昔ながらの石臼製法で、すり身に卵白などを加えたつけあげは、フワッとした食感とつやつやのテリが自慢です。
豆腐入りで甘みの強い「並揚(なみあげ)」は地元向けの味。豆腐を入れない甘さ控えめの「特上揚(とくじょうあげ)」と食べ比べるのもおすすめです。
髙浜蒲鉾(工場直売店 味の本陣 やまきち屋)|いちき串木野市
問い合わせ先 | 0996・32・8339 |
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時間 | 9~17時(日曜は10時~) |
定休日 | 年始休 |
交通アクセス | 鹿児島本線串木野駅下車、徒歩約2分の串木野バス停から上川内(かみせんだい)行き鹿児島交通バス約2分の薩摩山下下車、徒歩約1分 |
URL | https://satuma-takahama.co.jp/ |
2019年2月12日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ