2025.04.28ジパング俱楽部魚飯【広島県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2020年11月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
魚飯
目にも楽しい彩り豊かな海辺のごちそう
広島県竹原市
「味いろいろ ますや」の「たけはら魚飯」
塩作りで栄えた町のもてなし料理
「安芸(あき)の小京都」と呼ばれる竹原は、塩作りで栄えた塩の町。
平安時代から京都・下鴨神社の荘園として発展し、江戸時代前期に竹原湾の干拓地に入浜式(いりはましき)塩田が導入されてからは、約320年もの間、製塩業でおおいに栄えました。
製塩業や酒造業で栄えた商家が立ち並ぶ「たけはら町並み保存地区」
旧森川家住宅の対岸には、塩田から港まで塩を運んだ舟の係留所があったそう
潮の満ち引きを利用した、入浜式塩田による塩作りが行なわれていた頃の様子
塩田の主は「浜旦那(はまだんな)」と呼ばれ、この浜旦那が来客時や祭事のもてなし料理として供したのが「魚飯」です。1959(昭和34)年からの国策による塩田の廃止で、魚飯は徐々に姿を消しましたが、旧家では代々受け継がれてきました。
それを、地元の有志「竹原の食を考える会」が、1979年の芸南新聞掲載記事をもとに、2008年に魚飯を再現。幻の郷土料理となった魚飯を見つけ出しました。
浜旦那ゆかりの味を再現料理で味わう
今回は「味いろいろ ますや」で魚飯を作っていただきました。
具材の下準備には手間がかかります。
魚は鯛などの白身魚が定番ですが、店では地元でドーマルと呼ばれるトラギスを使い、身は焼いてからそぼろに、骨は揚げて骨せんべいに。
竹原の海の砂地で捕れる白身魚・ドーマルは淡白で上品な味わい
ほかにも錦糸玉子、焼き穴子、シバエビ、野菜の煮付けなど、一つひとつ準備します。竹の器に盛り付ければ、彩り豊かな魚飯のでき上がり。ごはんに具をのせ、だし汁をかけ、さあいただきます。
味わうと、煮付けた野菜と骨せんべいの旨みが溶け込んだだし汁が、ごはんを包み込むような優しい風味。焼いてから作るそぼろの香ばしさ、ゴーヤの野性味もよいアクセントになり、サラサラとかき込む手が止まりません。
「昔は焼きたての塩の中に鯛を入れて蒸し焼きにしてから、そぼろを作ったそうです。塩を煮詰めた後の残り火で作ったのかもしれませんね」(ご主人・升谷隆美〈ますたにたかみ〉さん)
復活した魚飯から、浜旦那のおもてなしが目に浮かぶようです。
一般的な材料と作り方
材料 【4人分】
- 白身魚(尾頭付き)……120g
A
- 塩……ひとつまみ
- 酒……20g
- シバエビ……40g
- 干ししいたけ……6g
B
- 酒……8g
- 砂糖……8g
- 醤油……12g
- 水……340㎖
- ニンジン……40g
- サヤエンドウなど緑の野菜……40g
- 卵……120g
- 焼き海苔……適量
C
- 水と干ししいたけの戻し汁……400㎖
- 昆布……4g
- かつお節……4g
- 魚の骨醤油……8g
- ごはん……300g
作り方
- 1. まず具を作る。白身魚に塩(分量外)をふって焼き、皮と骨を取る。鍋にほぐした身とAを入れ、炒めてそぼろにする。シバエビは、酒(分量外)を振りかけて炒める。干ししいたけを水で戻し(戻し汁は別に少し取っておく)、Bで煮る。ニンジンを切り、茹でる。サヤエンドウをさっと茹で、せん切りにする。卵を溶き、薄く焼いて錦糸玉子を作る。焼き海苔を刻む。
- 2. 具を皿に盛り付ける。
- 3. Cでだし汁を作る。水と手順1で取っておいた干ししいたけの戻し汁に、昆布、かつお節、さらに、手順1の魚の骨を入れ、煮てだしを取る。醤油で味を整える。
- 4. お椀にごはんを盛り、具をのせ、温かいだし汁をかけて食べる。
本場の味を求めて…… 味いろいろ ますや|竹原市
竹原の厳選食材を化学調味料を使わない優しい味付けで
隆美さんと奥様の昌子さん。お二人の温かい接客も魅力
市内では、現代風にアレンジした魚飯を8店舗で提供。ますやの「たけはら魚飯」1540円(1週間前までに要予約)は、ドーマルのそぼろ、焼き穴子、シバエビ、錦糸玉子、こんにゃくのほか、タケノコ、シイタケ、ゴーヤの辛子和え、ゴボウ、大根など季節の野菜もいろいろ入って具だくさん。
24時間かけてじっくり取っただし汁にもこだわりあり。
味いろいろ ますや
問い合わせ先 | 0846-22-8623 |
---|---|
時間 | 11時~13時30分・17時~20時30分(夜の営業はコースの予約のみ)※夜は魚飯の提供はありません |
定休日 | 月曜。年末年始は不定休 |
交通アクセス | 呉線竹原駅から徒歩約3 分 |
2020年8月28日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ