トレたび JRグループ協力

2025.04.07ジパング俱楽部高菜めし【熊本県】|知る・作る郷土料理

その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。

  • 会員誌「ジパング倶楽部」2020年7月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。

高菜めし

野菜から手づくり 阿蘇に根づいた昔ながらの味を守る

熊本県阿蘇市


「あそ路」の「元祖たかなめし」630円 「あそ路」の「元祖たかなめし」630円

阿蘇(あそ)の気候が育むピリリと辛い阿蘇高菜

活火山である阿蘇山の麓(ふもと)に広がる阿蘇谷は、標高500メートル前後の高地にあり、四季を通じて冷涼な地域。この地に春の訪れを告げる野菜が阿蘇高菜です。

在来野菜である阿蘇高菜は、阿蘇の気候のもとで、冬の寒さに耐えながら育ち、小ぶりでピリッとした辛みを持つ独特の味になります。

阿蘇高菜は主に高菜漬けに加工されます。高菜漬けには数日漬けただけの「新漬け」と、長期間漬け込む「古漬け」があります。この古漬けを混ぜごはんにした郷土料理が高菜めしです。

飲食店で初めて高菜めしを提供した「あそ路(じ)」の店長・井芹正吾(いせりせいご)さんに伺いました。

発酵で旨みを増す古漬けが味の決め手に


井芹さんの高菜畑。冬の冷え込みや霜も高菜の生育には不可欠 井芹さんの高菜畑。冬の冷え込みや霜も高菜の生育には不可欠

「高菜めしは先人たちが脈々と受け継いできた土着のスローフードです。昔はどこの家でもおばあちゃんがわが家用に高菜を漬けていましたから。

店でも、畑で高菜を育てるところから、収穫、漬け込みまですべて自分たちで行なっています。秋に種を蒔まき、収穫するのは3〜4月頃。茎の部分をポキポキ手で折って収穫するので、これを高菜折りと呼びます。 収穫期間が短いうえに手作業なので、高菜折りはとても大変。親戚総出で作業するんですよ。

収穫した高菜は洗わずに樽に漬け込み、畑にいる常在菌の力を借りて乳酸発酵させます」(井芹さん)


古漬けの樽。塩と唐辛子のみを加え1~3年かけて乳酸発酵させます 古漬けの樽。塩と唐辛子のみを加え1~3年かけて乳酸発酵させます

そうしてできあがった古漬けをたっぷり混ぜ込んだ高菜めし。

味わうと、まず酸味が、その後から幾層にも重なる旨みが追いかけてきます。発酵で深みを増し、油で炒めることでさらに甘さを増した高菜は、シャキシャキの歯触りで香りふくよか。

途中、甘い錦糸玉子で味の変化を楽しみながら完食すると、日だまりのような高菜の残り香に包まれました。

材料と作り方


材料 【1人分】

  • 阿蘇高菜の古漬け(茎の部分)…35~40g
  • タケノコの水煮 …少々
  • サラダ油 …適量
  • 醤油 …少々
  • 酒 …少々
  • 塩 …少々
  • 炊きたてのごはん …丼1杯分
  • 錦糸玉子、紅ショウガ …適宜

作り方


炊きたてのあたたかいごはんを使い、手早く混ぜ合わせるのがコツ 炊きたてのあたたかいごはんを使い、手早く混ぜ合わせるのがコツ

  • 1. 高菜の古漬けとタケノコの水煮を細かく刻む。熱したフライパンにサラダ油を引き、刻んだ高菜とタケノコを入れる。
  • 2. さらにサラダ油を回しかけ、火力を全開にする。
  • 3. 醤油、酒、塩を入れ5分ほど炒め、取り出す。
  • 4. ボウルに炊きたてのごはんと、炒めた高菜とタケノコを入れ、混ぜ合わせる。皿に盛り付け、お好みで甘めの錦糸玉子や紅ショウガを添える。

本場の味を求めて…… あそ路|阿蘇市

毎日食べたくなるおばあちゃん特製の高菜めしを再現


井芹さん(中央)、スタッフの古荘真由美さん(左)、園田順子さん 井芹さん(中央)、スタッフの古荘真由美さん(左)、園田順子さん

井芹正吾さんの曽祖母・サキさんが、こどもたちのために作っていた高菜の混ぜごはんを、井芹さんの祖父である創業者・久徳さんがメニュー化したのが「元祖たかなめし」の始まり。

自家栽培の阿蘇高菜を漬け込んだ自家製高菜漬けで、懐かしい家庭の味を再現します。

だご汁などが付いた「たかなめし定食」1540円もあります。


あそ路

問い合わせ先 0967-35-0924
時間 11~15時
定休日 月曜(祝日の場合は翌平日)・年末年始
交通アクセス 豊肥(ほうひ)本線市ノ川駅から徒歩約1分

阿蘇の雄大な景色を堪能できるD&S列車の特急「あそぼーい!」は熊本駅と別府駅を結びます 阿蘇の雄大な景色を堪能できるD&S列車の特急「あそぼーい!」は熊本駅と別府駅を結びます

2020 年5 月13 日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ