2024.07.31ジパング俱楽部冷や汁【宮崎県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2019年8月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
「冷や汁」
のどもとから涼しくなる 宮崎の夏の定番
宮崎県
太陽がさんさんと降り注ぐ南国・宮崎。夏はうだるような暑さが続く、宮崎平野一帯で愛される郷土料理が「冷や汁」です。
温かい麦飯にキンキンに冷えた味噌味の汁をかけて食べますが、「味噌汁ぶっかけ飯?」と思うなかれ。味噌汁と冷や汁は似て非なるものなのです。どう違うのでしょうか?
宮崎市で郷土料理を提供する「ふるさと料理 杉の子」の女将・前田省子さんに教わりました。
家庭料理からおもてなし料理へ 進化をとげた南国の県民食
「一番の違いは味噌を焼いて作ることです。焼いてからだし汁でのばすと、冷やしても味噌特有のくさみがなく、かつ香ばしく仕上がります。昔は夏の農繁期、農作業の合間にパパッとかきこむ農家の家庭料理だったそうです。
作り方も、冷たい井戸水で味噌を溶き、庭先の野菜を刻み入れるという簡単なものでした。食がすすまない夏場でもさっぱり食べられ、夏野菜に体を冷やす作用もあるので、暑い宮崎で好まれました」
具材もたっぷり入ります。必ず入るのは特産品のキュウリ。店では大葉、ミョウガ、焼いたカマスの干物をほぐしたもの、豆腐、すりごまも入れます。地域によっては、切干大根や焼きなすを入れるところもあるそうです。
一見シンプルなのに、味はとても複雑。たくさんの旨みと栄養が溶けこんで、具材の味が渾然(こんぜん)一体となった冷や汁が、夏バテ気味の体に染(し)みこんでいくようです。
材料と作り方 【作りやすい量・10人分】
材料
- 冷やした合わせだし…… 1800cc
- 麦味噌…… 300g
- キュウリ…… 2本
- ミョウガ …… 2個
- 大葉 …… 10 枚
- 木綿豆腐…… 1 丁
- いりこ(煮干し)…… 20g
- カマスの干物(アジやタイなど淡白な魚の干物でも可)…… 1 枚
- すりごま…… 適量
- 麦ごはん(押し麦を30 パーセント程度混ぜて炊いたもの)…… 適量
作り方
- 1.新鮮ないりこを用意する。 頭とはらわたを取り除き、フライパンか鍋に入れ、弱火で5分ほどから煎りする。 ていねいに下処理することで味が良くなる。
- 2.下処理したいりこをすり鉢に入れて、ふわふわの 綿状になるまでする。フードプロセッサーを使うよりも、手でするほうがよりやわらかく、風味も増す。
- 3.すったいりこに麦味噌を半量ずつ2回に分けて入れ、 味噌といりこを合わせる(A)。 Aを100度のオーブンで約15分焼き、焼き味噌を作る。 焦げ目が付かないように低温で焼くのがポイント。 焼き味噌はたくさん作って味噌玉として冷蔵保存しておくとよい。
- 4.焼き味噌にだし汁(かつお節と昆布でとった合わせだしを冷やしたもの)を少しずつ加え、のばす。 泡立て器を使うとのばしやすい。のばした汁を漉(こ)し、麦の粒を取り除く。 冷や汁は冷たい方がおいしく食べられるので、できあがった汁は冷やしておく。
- 5.キュウリを輪切り、ミョウガと大葉を千切りにし、水にさらしておく。魚の干物を焼いて手でほぐし、 骨を取り除く。木綿豆腐は水が出るため、食べる直前に手でほぐす。
- 6.器に具材を盛り付け、食べる直前に、冷やしておいた汁を静かに注ぎ、お好みですりごまを入れ、温かい麦ごはんにかけて食べる。
本場の味を求めて……「ふるさと料理 杉の子」|宮崎市
宮崎の食材を愛した料理人が考案した冷や汁
創業者の森松平(しょうへい)さんが、観光客にも出せるおもてなし料理になるようにと考案したレシピが、料理長の伊藤義晃さん(写真右)に受け継がれます。
本枯節と日高昆布でとるだし、新鮮ないりこ、2種類ブレンドした麦味噌、自家製カマスの干物など、素材すべてにこだわりが光ります。
ふるさと料理 杉の子
問い合わせ先 | 0985・22・5798 |
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時間 | 11時30分~13時30分(要予約)・17時~21時30分 |
定休日 | 不定・年末年始 |
交通アクセス | 日豊(にっぽう)本線宮崎駅から徒歩約20分 |
URL | https://www.miyazaki-suginoko.net/ |
- ※冷や汁単品では販売していません。各種定食は冷や汁付き、夏季は夜の会席コースのごはんを冷や汁に変更可。
2019 年5 月30 日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ