2024.08.08ジパング俱楽部ののこめし(いただき)【鳥取県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2019年9月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
ののこめし(いただき)
じゅわりと味がしみた油揚げに 具材の個性が光ります
鳥取県
鳥取県西部の弓浜(きゅうひん)半島一帯で江戸時代から食されてきた「ののこめし」。パッと見は大きなおいなりさんですが、作り方や味はいなり寿司とは少し違います。
油揚げにたくさんの具材と米を詰めてから炊く製法は、まだサツマイモなどが主食だった時代、貴重な米を少量でもおなかいっぱいに感じられるようにと編み出されたものです。
「六大栄養素」がすべて含まれ、ボリューム満点なので、これひとつあればおかずいらず。冷めてもおいしいので、農作業時に携帯するお弁当にも、祭りのふるまいにも重宝されました。
米と具材を詰めて炊くだけ。でも!簡単調理に工夫がいっぱい
呼び名には「ののこめし」と「いただき」の二通りがあります。
「布子(ぬのこ)」がなまって「ののこ」になったという説。
大山(だいせん)の頂に形が似ているから「いただき」と呼んだという説。
貴重な米を使うので、「もらう」のではなく「いただき」と称したという説。
たっぷり中身が詰まったきれいな三角形を見ると、どの説も納得です。
「ふんわり炊けるように野菜の切り方を工夫し、隅まできっちり米を詰め、焦げつかないように煮干しを敷く。きっと昔の人が研究を重ねて、この作り方になったんでしょうね」(門脇さん、松本さん)。
ほおばれば、ゴボウの香りがふわり広がりああ幸せ。
優しい味からは、暮らしの知恵と食べる人への心遣いも伝わってきます。
材料と作り方 【作りやすい量・6個分】
材料
- ※一升釜で6個分炊ける。5合釜なら半量の3個分で作るとよい。
- ※今回は、三角形の油揚げを使用。
- 米 …… 2 合
- 油揚げ …… 6 枚
- 干ししいたけ…… 3 枚
- ゴボウ …… 1/2 本
- ニンジン …… 1/2 本
- 鶏肉 …… 100g
- 煮干し …… 40g
A
- だし汁(干ししいたけの戻し汁と昆布だしを合わせたもの)…… 5カップ
- 砂糖 …… 80g
- 塩 …… 小さじ1/3
- 酒 …… 大さじ2と1/2
- 醤油 …… 大さじ2と1/2
作り方
- 1.米をとぎ、30分水に浸けてからざるにあげる。 油揚げを湯で1~2分煮てからざるにあげ、油抜きする。 しっかり油抜きすることで、味がしみこみやすく作業もしやすくなる。
- 2.油揚げの短い方の一片に切り目を入れる。
- 干ししいたけを水で戻し、戻し汁と干ししいたけに分ける。戻し汁と昆布だしを合わせ、だし汁にする。 戻した干ししいたけを細切りに、ニンジンを拍子木切りにし、鶏肉も小さく切る。
- ゴボウはささがきにし、太く短く米粒大に切るのがコツ。ゴボウを入れて米の入れすぎを防ぐことで、炊きあがり をふっくらと仕上げることができる。
- 3.だし汁に調味料を入れ、Aとする。手順1でといだ米と具材をボウルで混 ぜ合わせ、Aの1/3量を注ぎ、浸す。
- 4.手順3でできた中身を6等分にして、油揚げに詰める。
中身の量は多すぎても少なすぎても食感が悪くなるため、きっちり量ることがポイント。 - 油揚げの切り目を爪楊枝で縫うようにして留める。
- 5.表面を菜箸で10カ所ほどつついて穴を開けたら、炊飯器の内釜の底に煮干しを敷き、その上に並べる。
- 6.残りのAを内釜に入れ、 皿などで落とし蓋をしてから、炊飯器で炊き上げる。
本場の味を求めて……「千代むすび酒造 岡空(おかそら)本店 茶房『蔵や』」|境港市
水木しげるロード沿い酒蔵内の喫茶スペース
濃醇辛口の日本酒を醸(かも)す蔵元の喫茶。
仕込み水を使ったコーヒーや日本酒のほか、夏休み期間中の土・日曜と8月10〜18日のランチタイム限定で、吟醸粉を練りこんだ「酒蔵そば上代(かみだい)」と、「こめや産業」のののこめしがいっしょに味わえる、魅力的なセットが登場します。
千代むすび酒造 岡空本店 茶房「蔵や」
問い合わせ先 | 0859・42・3191 |
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時間 | 10~15時(そばとののこめしの提供は夏休み期間中の土・日曜と8月10〜18日の11時~14時30分) |
定休日 | 酒蔵見学開催時 |
交通アクセス | 境線境港駅から徒歩約5分 |
URL | https://www.chiyomusubi.co.jp/ |
2019 年7月5日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ