2024.08.26ジパング俱楽部味噌煮込みうどん【愛知県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2019年10月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
味噌煮込みうどん
鼻で、舌で、しっかり感じる熟成した大豆の旨み
愛知県
麺を味噌で煮込んだ郷土料理は全国に数ありますが、なかでも個性派といえば愛知県の「味噌煮込みうどん」です。
見るからに濃厚なチョコレート色のつゆ、塩を使わない麺を使うため、煮込んでもやわらかくなりにくいうどん。一度食べれば記憶に残るその味の決め手となるのが「八丁味噌」です。
八丁味噌とは、岡崎城から西へ8丁の距離にある東海道筋の八帖町(はっちょうちょう/旧八丁村)で、江戸時代から造られてきた豆味噌のこと。今も同じ場所で2軒の老舗(しにせ)が味噌造りを続けます。
そのひとつ「まるや八丁味噌」を訪ねました。
社長の浅井信太郎さんによれば、八丁味噌は甘みが少なく旨みが豊富なのが特徴だそう。
レシピ開発を担当する料理研究家の西川理恵さんも、「煮込んでも香りが飛ばず、塩辛くならないので、煮込み料理に合うんですよ」と教えてくれました。
土鍋で食べれば体もポカポカ 力強い香りとコクでやみつきに
西川さんお手製の味噌煮込みうどんが運ばれてくると、土鍋からはグツグツとよい香りが。ご当地流に、土鍋の蓋を取り皿代わりにし、白いごはんを添えていただきます。
酸味、渋味、苦味を持つ八丁味噌の独特な風味に、煮干しだしの力強さ、具材の旨みが混じり合い、パンチのある味わいが舌の上で躍ります。
なんというコク、なんというまろやかさ。おかずにもなる濃厚うどん、その複雑な旨みを生み出す発酵の力に完敗です。
材料と作り方 【作りやすい量・1人分】
- ※レシピの写真は3人分です。
材料
- 冷凍うどん…… 1 玉
- 煮干しだし…… 400cc
- 八丁味噌 …… 18g
- 赤だし味噌 …… 18g
- みりん …… 大さじ1/2~1(お好みで加減)
- 鶏もも肉 …… 80g
- 生卵 …… 1 個
- 油揚げ…… 1枚(約12g)
- 長ネギ …… 1/2 本
- シイタケ …… 2 枚
- かまぼこ …… 2切れ
作り方
- 1.煮干しでだしをとる。頭とはらわたを取り除き、手で開いて、水に浸(つ)けておいたものを強火にかける。
- 煮立ったらアクをとり、弱火で煮出す。次に具材の準備をする。 シイタケは軸をとる。
- 油揚げは細長い千切りに、鶏もも肉はひと口大に、長ネギもひと口大に斜めに切る。
- 2.八丁味噌(大豆、塩、水のみで造った豆味噌)と赤だし味噌(八丁味噌に米味噌などを調合したもの)が味のベース。
- 土鍋に煮干しだし、2種の味噌、みりんを入れ、混ぜながら中火にかける。
- 八丁味噌は硬くて溶きにくいので、温かい煮干しだしにしばらく浸してから溶くとよい。
- 3.沸騰したら鶏もも肉を入れ、火が通るまで煮る。
- 4.生卵・かまぼこ以外の具材とうどんを入れる。
- 塩を使わない味噌煮込み専用の麺は現地以外では手に入りにくいので、家で作る場合は冷凍うどんで代用するとよい。
- 5.蓋をして中火で2~3分煮込む。
- 具材から水が出てくるので、味見をし、薄ければ八丁味噌を足す。
- 6.生卵を割り入れ、かまぼこをちらし、蓋をして少々煮込む。
- 卵が好みの煮え加減になったら、完成。グツグツ煮えた状態で食卓へ。
本場の味を求めて……まるや八丁味噌
伝統の道具で昔ながらの味噌造りを守る老舗
濃創業1337(延元2)年。原料は大豆、塩、水のみ。 人の手を入れずに二夏二冬(ふたなつふたふゆ)、自然の力だけで天然醸造した八丁味噌は、海外でも高い評価を得ています。 工場見学では、味噌蔵に重石をのせた木桶が並ぶ様子や、職人の石積み作業を見学できます。売店では各種味噌の販売もあり。
まるや八丁味噌 蔵見学・売店
問い合わせ先 | 0564・22・0678 |
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時間 | 蔵見学は9時~16時20分、売店は~16時30分(12~13時は除く)。毎時0分、30分に案内開始 |
定休日 | 年末年始 |
交通アクセス | 東海道本線岡崎駅から愛知環状鉄道約6分の中岡崎駅下車、徒歩約1分。 |
値段 | 蔵見学は無料 |
2019 年7月31日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ