2024.10.10ジパング俱楽部栗きんとん【岐阜県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2020年10月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
栗きんとん
口の中でやさしくほどける 山里の秋の味覚
岐阜県
東美濃(ひがしみの)随一の宿場町・中津川(なかつがわ)発祥の菓子
江戸時代、五街道のひとつとして整備された中山道(なかせんどう)。江戸から数えて45番目の宿場であり、木曽路から美濃十六宿に入り二つ目が中津川宿です。
中津川には、京や江戸から茶の湯が伝わり、おいしいお茶に合う菓子を作ろうと菓子職人が腕をふるいました。この地で誕生した和菓子が栗きんとんです。
栗きんとんといえば、正月のおせち料理に入っている黄金色(こがねいろ)のものを想像する方も多いでしょう。 でも中津川のものは、おせちのそれとは違います。蒸した栗の実をつぶし、砂糖を加えて練り上げ、茶巾で絞った淡黄色(たんこうしょく)の菓子です。
今回は江戸時代末期から続く御菓子所「川上屋」代表取締役の原潤一郎(はらじゅんいちろう)さんと、総務の堀田兼央(ほったかねひさ)さんに話をうかがいました。
ほくほく、しっとり。栗の風味をそのままに
「山間(やまあい)にある中津川では、栗はとても身近な食材でした。昔は山に野生の山栗が実り、栗ごはんや焼き栗にして食べたそうです。
砂糖が普及してからは、家庭でも蒸した栗をすり鉢でつぶして砂糖を加え、餅やごはんにまぶしたり、ふきんで絞ったりして食べるようになりました。
和菓子店で栗きんとんが販売されるようになるのは明治時代中頃のこと。中津川宿までは峠を越えるため、甘い栗きんとんで旅人に疲れを癒やしてもらったのです。大正時代に入り栗の栽培が始まり生産量も増え、和菓子店の数も増えました」(原さん)
「栗きんとんはとても繊細な菓子です。栗の実の出来によって味が変わるので、その年の気候によっても違う味になります。それに、手絞りで作るのでひとつとして同じ形はないんですよ」(堀田さん)
ひと口食べると、滋味深い甘さと、栗の自然な風味が口いっぱいに広がります。素朴で愛らしい栗きんとんは、山が育む秋の実りと、街道が運んだ文化の結晶でした。
材料と作り方 【作りやすい量・約20個分】
材料
- 生栗(鬼皮の付いたまま水に数時間浸し茹でる)…… 1kg
- 砂糖…… 300g
- 塩…… 少々
作り方
- 1.茹でた栗を半分に切り、熱いうちにスプーンなどで中身を取り出す。
- 2.栗をつぶしながら砂糖と塩を加えて混ぜ、厚手の鍋に入れ、弱火にかけてよく練る。
- 3.約30gずつ取り分け、握りやすいように丸く形を整える。
- 4.水で湿らせたふきんにのせ、包む。ねじったら逆さにし、裏側を親指で軽く押さえ、ふきんから外してでき上がり。
本場の味を求めて……「川上屋 本店」|中津川市
創業1864(元治元)年、中山道の旅人に愛された老舗
季節の栗菓子が豊富に揃う店。「栗きんとん」 1個280 円(9~12月の限定商品)は、国産栗を丹念に炊き上げ、砂糖のみを加えた上品な味わい。
秋になると一日3~5万個の栗きんとんを手作業で仕上げます。
中津川駅横の「にぎわい特産館」で販売される、市内14店舗の栗きんとんが7店舗ずつとお茶がセットになった「中津川栗きんとんめぐり」2500円でも味わうことができます。
川上屋 本店
問い合わせ先 | 0573・65・2072 |
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時間 | 8 時~19時30分 |
定休日 | 水曜・年始 |
交通アクセス | 中央本線中津川駅から徒歩約15分 |
URL | https://www.kawakamiya.co.jp/ |
2019 年11 月5・6 日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ