2024.10.30ジパング俱楽部豚丼【北海道】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2021年3月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
豚丼
北海道
開拓の始めから 十勝(とかち)に根づいた豚肉
十勝平野は明治時代、開拓のために多くの人が移り住んだ土地です。十勝開拓の父と呼ばれた依田勉三(よだべんぞう)が詠(よ)んだ句に「開墾のはじめは豚とひとつ鍋」というものがあります。
豚を連れて入植した開拓当初の苦労を詠んだものです。この頃から飼育された豚は、当地では身近な食材。今や、すき焼もカレーも牛肉ではなく豚肉で作るほど、豚食文化が根づいています。
丼の蓋から豚肉がはみ出る! 豪快な盛りつけが食欲を刺激します
十勝平野の中心都市である帯広の名物グルメ「豚丼」にも、豚肉が使われますが、どのように誕生したのでしょうか。「元祖 豚丼のぱんちょう」の代表・山田美鶴さんに聞きました。
炭火で炙(あぶ)ってあっさり 豚丼はうな丼の豚肉版
「祖父(初代・阿部秀司(ひでし)さん)が豚丼を考案したのは昭和の初め頃のこと。当時、庶民にとって高嶺の花だったうな丼をもっと気軽に食べられるように、ほかの食材を使って作ってみようと考えたのがきっかけです。
そこで初代が目を付けたのが豚でした。試行錯誤の末、炭火で炙ることで豚の脂を落とし、さっぱり食べられる豚丼を考案。今では帯広を代表する郷土料理として定着しました。スーパーに豚丼のタレが何種類も並ぶほど定番なんですよ」(山田さん)
豚丼を考案した初代・阿部秀司さんと、看板娘だった妻のウメさん
道産の生豚肉を厚く切り炭火で炙ることで、店ならではの味わいに
豚丼という名前からは牛丼の豚肉版を想像してしまいますが、実際に食べてみると違いは歴然です。
噛んだ瞬間 ジュワッと広がる豚の旨み
ごはんの上にドーンとのった豚肉は、タレが照り輝く炭火焼きスタイル。甘辛いタレが染みたごはんと豚肉を一緒にかき込むと、香ばしい匂いがうな丼を彷彿とさせますが、食べごたえ抜群で、満足度はうな丼以上です。開拓時代から人々を支えた豚は、ボリューム満点のソウルフードとなって、今も当地で愛され続けています。
「元祖 豚丼のぱんちょう」の「豚丼(梅)」1150円
材料と作り方 【1人分】
材料
- 豚肉(ロースの薄切り肉)……150g
- 長ネギ …… 1/4本
- 醤油 ……大さじ2
- 砂糖 ……大さじ1
- みりん ……大さじ1/2
- ごはん ……200g
作り方
- 1.長ネギを切り、白髪ネギを作る。豚肉は筋切りをしておく。
- 2.フライパンを熱し、肉を並べて両面を焼く。8割ほど焼けたら、いったんフライパンから取り出す。
- 3.フライパンに出た脂をふき取り、醤油、砂糖、みりんを入れ、煮詰める。とろみが出てきたら、肉をフライパンに戻し、タレを絡めながら火が通るまで焼き、取り出す。
- 4.お椀にごはんを盛り、その上に肉をのせ、タレを回しかける。最後に白髪ネギをのせる。
本場の味を求めて……元祖 豚丼のぱんちょう|帯広市
元祖のレシピと秘伝のタレを一族で守る豚丼専門店
代表の美鶴さん(中央)、息子の大河さん(左)、四代目社長の辰巳博史さん
1933(昭和8)年に食堂として創業。
初代・阿部秀司さんが考案した豚丼が口コミで人気を博したことから、昭和40 年代からはメニューを豚丼のみに。 以来、豚丼発祥の老舗(しにせ)として市民からも観光客からも愛されています。
メニューの松竹梅のなかで梅が一番上等なのは、初代の妻として店を支えたウメさんにちなみます。 店名の「ぱんちょう」は中国語で食堂を意味する「飯亭」から名づけられました。
元祖 豚丼のぱんちょう
問い合わせ先 | 0155・23・4871 |
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時間 | 11~19時 |
定休日 | 月曜と第1・第3火曜。ゴールデンウィーク・お盆・年末年始は不定休(要問い合わせ) |
交通アクセス | 根室本線帯広駅から徒歩約5分 |
URL | https://obikan.jp/post_spot/955/ |
十勝には植物性の有機物を多く含む「モール温泉」が湧出します。写真の「十勝川温泉 観月苑」の湯は、肌がつるつるすべすべになると評判です
文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ