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2024.11.05ジパング俱楽部うつぼのたたき【高知県】|知る・作る郷土料理

その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。

  • 会員誌「ジパング倶楽部」2021年2月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。

うつぼのたたき

高知県須崎市

一度食べたら忘れられない! 土佐のパワー食


やわらかい甘みとプリプリの食感が魅力の「うつぼのたたき」 やわらかい甘みとプリプリの食感が魅力の「うつぼのたたき」

雄大な太平洋に面する高知県の郷土食といえば「かつおのたたき」が有名ですが、ほかに「うつぼのたたき」もあることはあまり知られていません。

ウツボは日本近海に広く分布しているものの、食用にするのは高知、千葉、和歌山などごくわずかな地域だけ。とくに高知ほど多様なウツボ料理がある所はほかにないとか。

黒潮が育(はぐく)む珍味 高知のうつぼ料理


鋭い歯と獰猛な見た目から「海のギャング」と呼ばれるウツボ 鋭い歯と獰猛な見た目から「海のギャング」と呼ばれるウツボ

今回は港町・須崎(すさき)の海鮮居酒屋「須崎魚河岸(うおがし) 魚貴(うおたか)」の社長・宮本貴光(たかみつ)さんに話をうかがいました。

「高知の中でも、ウツボを食べるのは須崎市、土佐市戸波(へわ)、中土佐町久礼(くれ)など一部のみです。昔は海沿いから魚を輸送する時、物々交換用にウツボを切って持って行ったそうです。 山間では産後の体力回復食として重宝されました。ゼラチン質が多いのが特徴で、私の祖母は煮こごりにして食べていましたね」

職人の技が引き出すギャップの“味力”

ウツボの調理には熟練の技術が必要です。骨の入り方が独特で骨抜きが難しいため、料理人でも捌(さば)けるようになるまでに数年はかかるといいます。

でも、ひとたび捌いてしまえば、淡白な白身にはやわらかい甘みがあり、カツオよりもウツボのほうが好きという人もいるほど。

須崎ではたたきのほか、唐揚げやすき焼でも食されてきました。
なかでも須崎で古くから食されてきたのが「うつぼのたたき」です。おそるおそる口に運ぶと、意外や意外。その味は珍奇な外見からは想像がつかないほど上品で、プリプリの弾力は魚というよりも鶏肉のようです。

このギャップがおもしろい。うつぼのたたきは、食べると思わず誰かに話したくなるような、驚きを秘めた郷土料理でした。


高知特産のミョウガや旬の柑橘などを添え、彩りよく盛り付ければ完成 高知特産のミョウガや旬の柑橘などを添え、彩りよく盛り付ければ完成

火入れも職人技の見せどころ。バーナーであぶり、絶妙な火入れ加減に  火入れも職人技の見せどころ。バーナーであぶり、絶妙な火入れ加減に

材料と作り方 【1人分】

材料

  • ウツボ(サク)……80~100g
  • 薬味(ネギ、ミョウガ、ニンニクなど) …… 各適量
  • ポン酢 ……適量

作り方

  • 1.電子レンジのスチーム調理機能や蒸し器を使い、ウツボを加熱する。中までしっかり火が通ったら、冷水で締める。さらに冷蔵庫に入れ、しっかり冷えるまで寝かす。
  • 2.ネギを小口切りに、ミョウガを千切りにし、ニンニクは薄くスライスする。
  • 3.バーナーで手順1のウツボの表面をあぶる。または、フライパンで手順1のウツボを弱火でじっくり乾煎りし、皮がやわらかくなったら火からおろす。ウツボの背を下にして、ひと口大に切る。
  • 4.切ったウツボと薬味を皿に盛り付け、ポン酢をたっぷりかける。

本場の味を求めて……須崎魚河岸 魚貴 須崎本店|須崎市

魚のプロが目利きした須崎の魚と天然素材を堪能


社長の宮本さん(右)と店長の田中英二さん。土佐の地酒も揃っています 社長の宮本さん(右)と店長の田中英二さん。土佐の地酒も揃っています

水産仲買人である社長・宮本さんが「地元須崎に本物の魚を自信を持って出せる店を作りたい」と始めた店。

須崎でその日水揚げされた鮮魚をみずから目利きし仕入れ、その魚に合った調理法で本当のおいしさを引き出します。「うつぼのたたき」1155円、「うつぼ唐揚げ」935円も通年メニューにあり。


須崎魚河岸 魚貴 須崎本店

問い合わせ先 0889・42・5170
時間 11時30分~13時30分・17時30分~22時(ドリンクは22時30分LO)
定休日 年末年始
交通アクセス 土讃(どさん)線多ノ郷(おおのごう)駅から徒歩約5分
URL https://uotaka.jp/

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文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ