2024.11.25ジパング俱楽部鮭の焼漬(やきづけ)【新潟県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2021年1月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
鮭の焼漬(やきづけ)
新潟県村上市
保存食をおいしく味わう先人の知恵
新潟県の最北端にある村上市は鮭の町です。晩秋になると三面川(みおもてがわ)に鮭が遡上し、伝統の「塩引き鮭」作りが始まります。
民家の軒下に多くの鮭が吊るされ寒風干しされる風景は、この地の風物詩です。 村上には百種を超える鮭料理が伝わるといいます。なぜそれほど多くの鮭料理が生まれたのでしょうか。
「千年鮭 きっかわ」の社長・吉川真嗣(きっかわしんじ)さんに聞きました。
約千年の歴史を持つ村上の鮭料理
「村上では約千年前から鮭の食文化がありました。平安時代には朝廷へ鮭の加工品(5品目)が租税として納められた記録が残り、江戸時代には鮭が村上藩の貴重な収入源でした。しかし江戸時代中期になると三面川で鮭が獲れなくなってしまいます。
この時、青砥武平治(あおとぶへいじ)という一人の村上藩士が、鮭が生まれた川に帰ってくる回帰性を発見。鮭の産卵にふさわしい分流(種川)を造りました。
当時の土木技術では大変なことだったでしょうね。鮭が再び遡上するようになった後、藩を救ってくれた鮭への感謝の気持ちから、身、皮、中骨、内臓まですべて食すようになったのです」
焼いて漬け込む鮭の町の定番家庭料理
村上には「塩引き鮭」や「鮭の酒びたし」など、独特の鮭料理が多数ありますが、一般家庭でよく作られるのは簡単に作ることができる「鮭の焼漬」です。
「おいしく作るコツは、かえし醤油を冷やしておき、焼いた鮭を熱いままジュっと漬け込むこと。煮付けのように熱い汁で煮込まないため、身が固くなりません」(吉川さん)
確かに、2日漬け込み、飴色に色づいた焼漬はふっくらふくよか。まろやかな甘さの醤油味が全体によく染み、白いごはんとも相性抜群です。「ありがとう」の気持ちをこめて、村上流に、皮まで全部いただきましょう。
材料と作り方 【4人分】
材料
- 生鮭の切り身 ……4切
A
- 水(またはだし汁) …… 100cc
- みりん ……80cc
- 酒 ……60cc
- 醤油 ……40cc
- 酢 ……小さじ1/2 弱
作り方
- 1.Aを鍋に入れて火にかけ、煮切り、かえし醤油を作る。
- 2.かえし醤油を冷やしておく。
- 3.皮付きの生鮭の切り身を、皮に少し焼き色がつくまで焼く。
- 4.焼いた鮭を熱いうちに、かえし醤油に1~2日漬け込む。
本場の味を求めて……「千年鮭きっかわ 井筒屋(いづつや)」|村上市
松尾芭蕉(まつおばしょう)ゆかりと伝わる旅籠(はたご)を受け継ぐ鮭料理専門店
「千年鮭 きっかわ」直営の食事処。築130年の建物は、芭蕉と弟子の曾良(そら)が 『おくのほそ道』の道中で宿泊したとされます。
「鮭料理」(八品3025円~)や「極上 豪快はらこ丼」4752円に、ひと口大の鮭の焼漬が付きます。 村上の米どころ・岩船産コシヒカリを土鍋でふっくらと炊き上げたごはんとともに、炭火で焼き上げた塩引き鮭、鮭の皮や骨、内臓を使った珍味の数々を食べ比べれば、“鮭食文化”の奥深さが感じられます。
千年鮭きっかわ 井筒屋
問い合わせ先 | 0254・53・7700 |
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時間 | 11~14時 |
定休日 | 年末年始、1・2月は火・金曜、3~9月は火曜(祝日の場合は水曜) |
交通アクセス | 羽越(うえつ)本線村上駅から徒歩約25分 |
URL | https://www.murakamisake.com/idutsuya/ |
文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ