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2024.12.05ジパング俱楽部岩海苔雑煮・小豆雑煮 【島根県】|知る・作る郷土料理

その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。

  • 会員誌「ジパング倶楽部」2019年12月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。

岩海苔雑煮・小豆雑煮

焼く(厄)のではなく 茹でる餅も特徴のひとつ

島根県

ふるさとの雑煮を聞けば出身地が分かるといわれるほど、雑煮は郷土色を色濃く残します。

各地にさまざまな雑煮がありますが、出雲(いずも)神話の舞台である出雲では、岩海苔雑煮と小豆(あずき)雑煮の両方が食されてきました。どんな謂(いわ)れがあるのでしょうか。

出雲大社参道にある老舗(しにせ)旅館「竹野屋旅館」の顧問・安田政男さんと料理長・桐原(きりはら)輝雄さんに伺いました。


海の岩海苔と山の小豆で厄祓(ばら)い 新年を寿(ことほ)ぐ 神話の里の正月料理


海苔の長さも驚き! 海苔の長さも驚き!

「竹野屋の岩海苔雑煮は出雲大社ゆかりの北島国造家(こくそうけ)のレシピをアレンジしたものです。

北島国造家では十六島町(うっぷるいちょう)で採れる希少な十六島海苔をお使いになるそうです。

だしは、昔は出雲特産のドウメ節(ウルメイワシを蒸して乾燥させた煮干し)でとったものでした。 正月には土地のものを生かし、それぞれの家庭の味で食されます」


国譲り神話の舞台・稲佐の浜。出雲神話には十六島の起源も 国譲り神話の舞台・稲佐の浜。出雲神話には十六島の起源も

十六島海苔は「出雲国風土記(いずものくにふどき)」に紫菜と記され、「延喜式(えんぎしき)」にも朝廷への貢進物だった記録が残ります。出雲大社の教えを広める御師(おし)がお札とともに配った縁起物でもあり、正月雑煮に上盛(うわも)りして食すと一年の災いを祓うと伝わります。

小豆雑煮は小豆の赤が邪気を祓うとされ、無病息災、家内安全を願って食されました。

磯の香りとシャキシャキ感がたまらない十六島海苔の雑煮。豆の滋味が溶けこみ、ふくよかな旨み広がる小豆雑煮。

どちらも、こんなお雑煮があったのかと驚くばかり。日本は広い、と雑煮から教えられました。


竹野屋旅館

問い合わせ先 0853-53-3131
交通アクセス 山陰本線出雲市駅から車で約20分
URL https://takenoya-ryokan.co.jp/

材料と作り方


岩海苔雑煮

材料 【作りやすい量・2人分】

  • 水…… 1500cc
  • 昆布 …… 5cm×15cmを2枚
  • 花かつお…… 40g
  • うすくち醤油…… 大さじ2
  • 酒…… 小さじ1
  • 塩…… 2g
  • 丸餅…… 1 人につき2個
  • 十六島海苔(乾燥したもの。岩海苔でも可)…… 10g

作り方


  • 1.だしをとる。鍋に水と昆布を入れて火にかけ、沸騰する寸前に昆布を引き上げる。 火を止め、花かつおを入れて沈んだら漉(こ)す。出来上がっただしを720cc量り、うすくち醤油と酒、塩で味付けする。

  • 2.別の鍋で丸餅を茹で、やわらかくしておく。

  • 3.十六島海苔を、材料外の酒と水を1対1で割ったものに浸して戻し、水気を切り、ほぐす。 椀に2の餅を入れ、だしをかけ、最後に餅の上に海苔をのせる。 乾燥岩海苔を使う場合は、軽く火であぶってもみ、餅の上にのせる。

小豆雑煮

材料 【作りやすい量・5~6人分】

  • 小豆…… 250g(ひと晩水に浸<つ>けておく)
  • 水 …… 注ぎ足しながら適量
  • 砂糖…… 適量
  • 塩…… 少々
  • 丸餅…… 1人につき2個

  • 1.小豆汁を作る。ひと晩水に浸けておいた小豆を弱火にかけ、ときどきあくを取りながら、茹でこぼしをせず炊く。 できるだけ小豆が煮崩れないように注意。豆が煮汁から頭を出したら、水を注ぎ足す。 小豆がやわらかくなったら、砂糖と塩少々を入れ、ぜんざいより控えめな甘さになるように調味する。

  • 2.別の鍋で丸餅を茹で、やわらかくしておく。

  • 3.碗に②の餅を入れ、小豆汁をかける。

2019年10月10日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ