2024.12.24ジパング俱楽部博多雑煮【福岡県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2020年12月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
博多雑煮
主役のだしが華やかな具材をみごとにまとめる
福岡県
古くから諸外国との貿易港として栄えてきた町・博多。海も山も川も近く、食材が豊富な博多では、正月にどんな雑煮が食されてきたのでしょうか?
郷土料理店「博多石焼 大阪屋」の女将・西川ともゑさんに聞きました。
出世魚のブリと“勝男菜“で縁起よく
「博多は外国貿易に従事する博多商人が住んだ町。裕福な商人が多かったので、雑煮も豪華やね」ともゑさんが言うとおり、博多雑煮は具だくさんでにぎやか。
具材は縁起よく1人分7種類を串に刺し、準備しておきます
具材はさまざまですが、あごだしベースの澄まし汁に、餅は丸餅、ブリとかつお菜が入るのが定番です。使う食材にはたくさんの験げん担ぎが込められています。
ブリは成長とともに名前の変わる出世魚で、"家人に出世してほしい“という願いが込められました。
一説には、博多では”嫁さんぶりがよい〝とかけ、年末にその年結婚した新郎の実家から新婦の実家へ、大きなブリを一本持っていく風習があったことから、雑煮に使われるようになったとか。
かつお菜は”勝男菜“と書き、縁起がよいとされました。
複雑な旨みを味わう だし自慢の贅沢(ぜいたく)雑煮
博多雑煮のおいしさの真髄は、焼きあごからじっくり取っただしにあります。
あごとはトビウオのこと。焼き干ししたあごは旨みが増幅し、昆布と干ししいたけとの合わせだしにすることで、風味豊かで上品なだしになります。具材をだしで煮込まずに茹で、最後にだしを注ぐのみにするのは、このだしそのものを味わうためです。
お椀の蓋を取ると、ふわっとやわらかい香りが。ひと口含むと、ブリの味がほのかに移っただしのふくよかさに、心がほどけていくようで、いつまでも余韻を楽しみたくなります。
かつお菜の苦みにも、郷土が香ります。
町の豊かさに育まれた博多雑煮は、ご馳走と呼ぶにふさわしい一杯でした。
材を串に刺しておくのは、人が多い商家で入れ忘れを防ぐための工夫
伝統野菜のかつお菜、五島列島近海のあごなど、地の物がいっぱい
材料と作り方
材料 【作りやすい量・4人分】
- 焼きあご … 4匹
- 羅臼(らうす)昆布 … 12~15センチのもの1枚
- 干ししいたけ … 小4 個
- 水 … 2ℓ
- かつお菜 … 葉1枚
- ニンジン … 中1/3 本
- 里芋 … 2 個
- 醤油 … 大さじ2(色、味をみて調整する)
- 塩 … 小さじ2
- ブリ … 4切
- 丸餅 … 8 個
- 紅白のかまぼこ … 各4 切
- 昆布 … 4切
- するめ … 4 切
作り方
- 1.だしを取る。焼きあごを割き、羅臼昆布といっしょに1ℓの水に、前の晩から浸(つ)けておく。別の容器で、干ししいたけも1ℓの水に浸け、一晩おく。
- 2.ブリを焼いておく。野菜はひと口大に切り、下茹でしておく。手順1のだし汁2種を鍋に入れて合わせ、火にかけ沸騰したら、こし、醤油と塩で味付けする。
- 3.別の鍋に手順1で使った羅臼昆布を敷いて湯を沸かし、丸餅が柔らかくなるまで煮る。
- 4.お椀にだし汁を少量入れ、丸餅、具材の順に一つずつ盛り付ける。最後に温めただし汁を注ぐ。元日だけ、細切りにした昆布とするめをのせる。
12月下旬までクリスマスイルミネーションが楽しめる福岡タワー
本場の味を求めて…… 博多石焼 大阪屋|福岡市
1926(大正15)年創業 博多の美味がなんでも揃う
博多の食を伝える活動にも尽力するともゑさん(右)と、社長の西川真太郎さん
博多の新鮮な魚介や野菜を石の鍋で焼く伝統的な郷土料理「博多石焼」のほか、「博多がめ煮」「あぶってかもの塩焼」など、博多の郷土料理が豊富に揃う店。
「博多雑煮」950円は、女将が博多の女性たちに聞き取りを重ね、完成させた味。 単品料理として通年食べられるほか、冬のコース料理の一品としても登場します。
博多石焼 大阪屋
問い合わせ先 | 092・291・6331 |
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時間 | 11時30分~13時30分・17時~21時30分 |
定休日 | 日曜・祝日不定。12月31日~2025年1月3日 |
交通アクセス | 九州新幹線博多駅から市営地下鉄空港線約3分の中洲川端駅下車、徒歩約2分 |
2020 年10 月2 日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ