トレたび JRグループ協力

2025.02.25ジパング俱楽部太巻きずし【千葉県】|知る・作る郷土料理

その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。

  • 会員誌「ジパング倶楽部」2020年7月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。

太巻きずし

米への思いが溢れる料理 作っても食べても楽しい

千葉県鴨川市ほか

千葉県の上総(かずさ)・安房(あわ)地域で受け継がれてきた太巻きずしは、昔からお祝いや祭りなどのハレの日に、おもてなしのご馳走として作られてきました。
切ると断面に梅や桜、アジサイやカタツムリ、文字など、にぎやかな図柄が現れます。


創意工夫で華やかに時代に合わせて進化

そのルーツははっきり分かっていませんが、江戸時代末におにぎりから巻き物へ変化し、千葉の農家で代々受け継がれてきたのではないかと考えられます。
1955(昭和30)年からは、太巻きずしに魅了された千葉伝統郷土料理研究会の龍﨑英子(りゅうざきえいこ)さんが調査普及に尽力し、県内各地に広まりました。

その後、伝統の技術を守りながら、食材や作り方に創意工夫を加え、よりカラフルで今風の図柄が多数考案されました。

太巻きずしの主役は豊かな自然が育む米


長狭米の収穫地・「日本の棚田百選」に認定された「大山千枚田」 長狭米の収穫地・「日本の棚田百選」に認定された「大山千枚田」

今回は鴨川市農林業体験交流協会の体験工房「花味結(はなみゆい)」で、代表の清水宏さんとスタッフの平野富恵さんに話をうかがいました。

「花味結のある長狭(ながさ)地域は米どころ。江戸時代の米の格付けでは『上の上』を得、明治天皇の大嘗祭に米を献上する斎田(さいでん)にも選ばれました。

長狭は清澄(きよすみ)山系と嶺岡(みねおか)山系にはさまれ、ミネラル豊富な土壌と良質な水に恵まれるため、おいしい米が育ちます」(清水さん)

さあ、平野さんに太巻きずしを作ってもらいましょう。色とりどりのすし飯を細巻きにして、積木のように組み合わせ、巻きすで巻いたら出来上がり。名人技に見惚れていると、みるみるうちに断面に大輪の向ひまわり日葵の花が咲きました。

てりてりと輝く玉子焼きの黄色が食欲をそそります。
「この辺の味付けは砂糖たっぷりの甘め。玉子焼きは上総では薄焼きですが、ここは厚焼きにして豪華にします」(平野さん)

材料にも、味にも、作り方にも地元らしさがいっぱい。作っても見ても楽しい太巻きずし、食べれば気分まで晴れ渡るようです。


菜箸で溝を作り、黄色の細巻き(向日葵の花びら部分)をのせていきます 菜箸で溝を作り、黄色の細巻き(向日葵の花びら部分)をのせていきます

キュウリの細巻き(葉の部分)をのせて巻けば、向日葵の花が完成 キュウリの細巻き(葉の部分)をのせて巻けば、向日葵の花が完成

材料と作り方


材料 【1本分、7~8切れ】

  • すし飯(白)…430g
  • 黄色のすし飯(クチナシの煮出し汁で色付け)…240g
  • ピンクのすし飯(色付き粉末すし酢または桜でんぶで色付け)…80g
  • 海苔(1/4 切)…8 枚
  • 海苔(半切)…1 枚
  • 玉子焼き(卵6個を23cm×21cmの長方形に焼いたもの)…1枚
  • 煮たかんぴょう…4~5 本
  • キュウリ…1 本
  • 紅しょうが…5g

作り方

  • 1.3色のすし飯を準備しておく。ピンクのすし飯に刻んだ紅しょうがを混ぜる。
  • 2.黄色のすし飯と1/4切の海苔で直径1cm程度の海苔巻きを8本作る(ア)。ピンクのすし飯を煮たかんぴょうで巻く(イ)。
  • 3.キュウリを縦半分に切り、中心に半切の海苔を巻き込むように、海苔巻きにする(ウ)。
  • 4.巻きすの上に玉子焼きをのせ、上下1cm空けて白いすし飯を広げる。上にアを並べ、その上の中央にイをのせて巻く。最後にウをのせ、白いすし飯で間を埋め、巻く。※エンボス加工の手袋をすると、すし飯がくっつかず作りやすくなります。

本場の味を求めて…… 花味結|鴨川市

農家の家屋を改修した工房で鴨川の食と農を体験


大中小の巻きすや飯台、盆ざるなど、さまざまな道具を使って仕上げます 大中小の巻きすや飯台、盆ざるなど、さまざまな道具を使って仕上げます

太巻きずし作り体験ができる地産地消の体験工房。体験後はその場で作りたてのおすしを味わえます。

太巻き祭り寿司体験は5〜20名で1名あたり2200円(所要約1時間、3日前までに要予約)。 ほかにも豆腐作りや団子作りなどの体験メニューあり。

花味結のすしや弁当は、近隣の「里MUJI(ムジ)みんなみの里」でも販売されます


花味結

問い合わせ先 04・7099・8073
時間 8時30分~12時
定休日 月~水曜・年末年始
交通アクセス 内房線・外房線安房鴨川(あわかもがわ)駅から鴨川日東バス長狭線・金谷(かなや)線約24分の御園橋下車、徒歩約15分

2020 年5 月13 日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ