2025.03.05ジパング俱楽部いりもち【高知県】|知る・作る郷土料理
その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2020年3月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
いりもち
万病に効くと伝わる春のヨモギをたっぷり練り込んだ山里のおやつ
高知県
あざやかな緑の皮と、ぎっしり詰まったあんこ。
高知県の山間(やまあい)にある仁淀川町(によどがわちょう)で愛される「いりもち」は、春に芽吹くヨモギを使った変わり餅です。その由来を、仁淀川町で自然素材活用に取り組む「によど屋」の井上光夫さんと観光ガイドのみなさんに伺いました。
仁淀川の清流がいりもちに使うヨモギを育みます
「今ではヨモギとあんこ入りのいりもちが定着しましたが、昭和の頃までのいりもちは小麦粉、塩、砂糖を練って焼くだけの素朴なものでした。この辺りは山間で昔は米がなかなか食べられなかったので、米を節約するための田舎の知恵として作られたんでしょうね」(ガイドの山中陽子さん)
昔は、釜(かま)で茶を煎(い)った後、その余熱を利用して小麦粉と塩だけを練った生地を焼いて食べたといいます。春は芽吹いたばかりのヨモギを練り込み、旬をいただいたのだそうです。
香りで季節を味わう 元気が出るおやつ
「いりもちは漢字で煎餅と書きます。平安時代に弘法大師によって京都・小倉山(おぐらやま)の麓の住人に煎餅が伝えられたという伝説がありますが、それは小麦粉を練って焼いたもので美味だったそうです。ひょっとすると、平家の落人が京都から仁淀に伝えたのかもしれませんね」(井上さん)
昭和のいりもちは、小麦粉などを練って焼くだけの素朴なものでした
「作り手によって色、形、味が違うんですよ!」と話す井上さん(左)と山中さん
おいしく味わうには焼きたてをいただくのが一番。ふんわり甘いふわふわの皮をかみしめると、芽立ちのヨモギならではの力強い春の香りが広がります。これぞ旬をいただく幸せ。口の中に、春がやってきました。
材料と作り方
材料 【作りやすい量・約60個分】
- あんこ …1 個につき30g(全1.8kg)
- 中力小麦粉 …1kg
- だんご粉(うるち米ともち米をブレンドした米粉) … 400g
- 三温糖 … 300g
- 塩 …大さじ1
- ヨモギ(茹でたものまたは冷凍) … 200g
- ぬるま湯 … 700cc
- 重曹 … 15g
- 酢 … 180cc
作り方
- 1.あんこは1個分ずつ丸めておく。ボールに中力小麦粉、だんご粉、三温糖、塩を入れ、泡立て器でかき混ぜながら合わせる。次に別のボールにざるを重ね、合わせた粉をざるに移し、泡立て器でかき混ぜながら粉をふるう。
- 2.沸かした湯に重曹(材料外)を入れ、生のヨモギを茎がつぶれるくらいのやわらかさになるまで茹でる(摘んだ時にまとめて茹で、冷凍しておくとよい)。ミキサーにぬるま湯700ccと茹でたヨモギ200gを入れ、10秒ほど撹拌(かくはん)し、ペースト状にする。
- 3.手順1の粉に手順2のペーストを入れ、さらに重曹と酢も入れ、木べらで混ぜ、生地を練る。生地が硬ければぬるま湯(材料外)を足す。
- 4.ホットプレートを180℃に熱しておく。手を水で湿らせ、丸めたあんこをのせる。手順3の生地をスプーンですくい、あんこに垂らすようにしてくるむ。
- 5.手順4をホットプレートにのせ、焼く。表面にプツプツと穴があいてきたら、フライ返しなどでひっくり返す。
- 6.約100ccの水(材料外)を入れ、蓋をして蒸し焼きにする。ほぼ火が通ったら、もう一度ひっくり返し、ホットプレートの電源を消して、余熱で焼き上げる。すぐに食べない分は冷凍保存可。
本場の味を求めて……によど屋西の谷店|吾川郡いの町
名越屋沈下橋近くのみやげ店
によど屋西の谷店
「羽田から一番近い沈下橋」のひとつとして話題の名越屋沈下橋すぐそばにある、「によど屋」の支店。「によど屋」のいりもちをはじめ、「仁淀川きくらげ」や芋けんぴなどの特産品が販売されています。観光ガイドコーナーもあり。
によど屋西の谷店
問い合わせ先 | 090-8696-7707 |
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時間 | 10~15時 |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | 土讃線伊野駅から車約15分 |
- ※「によど屋」のいりもちは「によど屋西の谷店」で販売されているほか、高知市内の日曜市でも出店・販売されています。
2019年12月20日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ