トレたび JRグループ協力

2025.03.25ジパング俱楽部桜えびのかき揚げ【静岡県】|知る・作る郷土料理

その土地の産物をうまく活用し、作られてきた “郷土料理”。
知って作って食べれば、彼の地へ行ってみたくなりそうです。

  • 会員誌「ジパング倶楽部」2020年4月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。

桜えびのかき揚げ

桜色に輝く駿河(するが)湾の宝石 揚げたての香ばしさを召し上がれ

静岡県

駿河湾に面した由比(ゆい)は、古くは歌川広重(うたがわひろしげ)の『東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)にも描かれた宿場町。国内で二カ所だけある桜えび水揚港のひとつ、由比漁港があることでも知られます。

駿河湾は日本一水深が深い湾で、急に深くなっているのが特徴です。この地形が桜えびの生育に適しているといいます。また、流れ込む川が多く栄養豊富であることも、大きくておいしい桜えびが育つ理由です。


桜えびの漁場・駿河湾には富士山の雪解け水も流れ込みます 桜えびの漁場・駿河湾には富士山の雪解け水も流れ込みます


由比港にある直売所。大きな桜えびのモニュメントが目印 由比港にある直売所。大きな桜えびのモニュメントが目印

漁は春と秋の年2回、年間で通算40日ほどしか行なわれません。

桜えびは足が早く、生で流通しにくいため、昔はほぼ干しえびにして出荷されました。由比でも、加熱してかき揚げや、生の桜えびと豆腐とネギを煮付けた「沖(おき)あがり」で食べるのが主でした。

「昔は干しえびを水で戻してかき揚げを作ることもありましたが、今は冷凍技術が進化し一年中生のものが手に入ります」(由比港漁業協同組合・広報担当者さん)

下処理いらずで簡単に作れるのも嬉しい


「由比では不漁の年でもかき揚げを通年食べられますよ」と、渡辺さん(左)と山崎さん 「由比では不漁の年でもかき揚げを通年食べられますよ」と、渡辺さん(左)と山崎さん

さて、今回は静岡市の前浜(まえはま)エリアを盛り上げるために活動する「しずまえ振興協議会」のお二人、磯料理「くらさわや」の渡辺一正さんと「鮨処やましち」の山崎伴子(ともこ)さんに作り方を教わりました。

「コツは衣を少なめにしてカラッと揚げることです」(渡辺さん)

揚げたてをいただくと、カリカリの衣の中に、桜えびがぎっしり、しかもモチモチ。桜えびの甘みと旨みと香ばしさ、三位一体のおいしさに思わず笑みがこぼれました。

材料と作り方


材料 【作りやすい量・4枚分】

  • 桜えび(冷凍)… 200g
  • 天ぷら粉 … 60g
  • 水… 60mℓ
  • サラダ油 … 天ぷら鍋に合わせて適量

作り方


  • 1.冷凍桜えびを流水で解凍し、水を切る。天ぷら鍋でサラダ油を160~170℃に熱しておく。

  • 2.桜えびに天ぷら粉をふり 5かける。全体が白くなるようにまんべんなく粉をかける。

  • 3.手順2に、水60mℓを少しずつ入れながら、桜えびを傷めないようにサッとまぜる。

  • 4.おたまですくい、箸ですりきる。おたま1杯分がかき揚げ1枚分になる。

  • 5.天ぷら鍋の手前側から油に落とし、鍋肌と箸を使って、丸く形を整える。そのまま入れるとちらばるので、鍋肌と箸でうまく形を作るのがポイント。

  • 6.箸で触って表面がカリカリしてきたら、一度だけひっくり返す。揚げ時間の目安は片面につき約1分。反対側の表面もカリッと揚がったら、油から引き上げる。

本場の味を求めて……由比港漁協直売所|静岡市

漁期中の生桜えびは売り切れ御免


身が大きく甘い駿河湾の桜えびを直売する漁協直営店。自然解凍で生食できる冷凍生桜えびや、沖漬け、素干し、炊き込みごはんの素など加工品も豊富。漁期中、前日に漁があった日の朝からは、生桜えびが販売されます。


由比港漁協直売所

問い合わせ先 054-377-1111
時間 8~17時
定休日 月曜・祝日の翌日・年末年始
交通アクセス 東海道本線由比駅から徒歩約15分

2020 年1 月30 日取材 文/吉野りり花 撮影/鈴木康史 イラスト/渡辺トモコ