2024.08.28ジパング俱楽部『さびしんぼう』 広島県尾道市|名作の舞台へ
いつか、あの作品の舞台へ行ってみたい――。
小説、映画、ドラマ、音楽……名作にはそんな、人を引きつける力があります。ずっと心に残る、名作の舞台を紹介します。
- ※会員誌「ジパング倶楽部」2020年9月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。
『さびしんぼう』
広島県尾道(おのみち)市
作品情報 「さびしんぼう<東宝DVD名作セレクション>」
北前船(きたまえぶね)寄港地として得た財により、数多くの寺社が建立された尾道
大林宣彦(のぶひこ)監督が1980年代に故郷で撮った映画『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』は、尾道三部作と呼ばれています。
監督の造語がタイトルになった『さびしんぼう』は、少年時代の不思議な恋の物語。誰もが覚えのある青春のときめきや寂しさが、瀬戸内の港町を舞台に描かれています。
寺の息子である高校生のヒロキ(尾美としのり)は、密かに憧れていた少女・百合子(富田靖子)に❝さびしんぼう❞という名をつけます。
ある日、掃除の最中、古い写真をばらまいてしまったヒロキの前に、ピエロのような顔の❝さびしんぼう❞と名のる少女が。
ヒロキと百合子が初めて出会う坂道、百合子が通学に使う渡船、寺の境内から望む尾道の町並みと海……。
映画の中に次々と現れるシーンは、「初めて見る人でもなぜか懐かしい」風景なのです。
大林作品によって多くの人が訪れるようになった尾道ですが、監督は単に記念スポットで写真を撮るのではなく、迷子になりながら歩いてそれぞれ心の中のスクリーンと出会ってほしい、と語っています。
路地や坂道をめぐって自分だけの地図を作る、そんな旅が尾道には似合うのかもしれません。
監督は晩年、少年時代に体験した戦争を憑(つ)かれたように描き始めます。 遺作となった作品は、『海辺の映画館 ― キネマの玉手箱』。 人生をかけて愛した映画、反戦への強い思い。大林監督のすべてが詰めこまれたこの映画もまた、尾道を舞台に描かれたのです。
尾道
問い合わせ先 | 0848・36・5495(尾道観光協会) |
---|---|
交通アクセス | 山陽本線尾道駅下車。浄土寺は尾道駅から東尾道駅・高須車庫行きほかおのみちバス約7分の浄土寺下下車、徒歩約6分。「猫の細道」は尾道駅から徒歩約15分。 |
URL | https://www.ononavi.jp/ |
文/綿谷朗子