トレたび JRグループ協力

2024.10.10ジパング俱楽部『ごんぎつね』 愛知県半田市|名作の舞台へ

いつか、あの作品の舞台へ行ってみたい――。
小説、映画、ドラマ、音楽……名作にはそんな、人を引きつける力があります。ずっと心に残る、名作の舞台を紹介します。

  • 会員誌「ジパング倶楽部」2020年12月号で掲載した記事を、再編集してお届けします。

『ごんぎつね』

愛知県半田市


『ごんぎつね』

:新美南吉
:黒井健
価格 :1540円(税込)
販売元 :偕成社

※2024年10月時点の情報です

今も多くの人々に読み継がれる『ごんぎつね』のお話。
『桃太郎』のような昔話ではないのですが、1956(昭和31)年から今日まで小学校の国語の教科書に掲載され続け、幅広い年代の人々に親しまれてきました。


南吉の生家・渡辺家。童話『狐』など、いくつもの作品が生まれた場所 南吉の生家・渡辺家。童話『狐』など、いくつもの作品が生まれた場所

1932年、児童雑誌『赤い鳥』でこの話が発表された当時、作者の新美南吉(にいみなんきち)はまだ18歳でした。愛知県知多(ちた)郡半田町岩滑(やなべ/現・半田市)に生まれた南吉は、幼少期に実母と死別し養子に出されるなど、孤独な少年時代を過ごします。

14歳頃から童話や童謡を書き始め、東京で進学・就職するも、病気のため帰郷。わずか29歳で亡くなるまで1500余りの作品を残しています。

23歳で故郷に帰った南吉は、教員として勤めながら創作を続けます。その多くは故郷の身近な動物たちや庶民の生活を描いたもので、『ごんぎつね』の舞台も岩滑の村。話に出てくる土地やモチーフは今も名残を留(とど)め、“中山のお城”ゆかりの地には、「新美南吉記念館」と「童話の森」が広がっています。

主人公の兵十(ひょうじゅう)がウナギを獲った川は彼岸花で有名な矢勝川(やかちがわ)、ごんが隠れた六地蔵も南吉の墓のそばに移されています。


南吉は生徒らと詩集を編むなど、短くも充実した時を過ごしました 南吉は生徒らと詩集を編むなど、短くも充実した時を過ごしました

半田市と阿久比町(あぐいちょう)の境を流れる矢勝川 半田市と阿久比町(あぐいちょう)の境を流れる矢勝川


南吉の自筆原稿や日記などを展示する「新美南吉記念館」 南吉の自筆原稿や日記などを展示する「新美南吉記念館」

悲しい結末に気を取られがちですが、物語を改めて読んでみると、村の自然や人々の暮らしが丁寧に描かれていることに気づきます。

「百姓達の村には、ほんとうに平和な金色の夕暮をめぐまれることがある」―― 南吉が数多く残した日記や手紙にも、故郷への温かな眼差しが溢れているのです。


南吉の生家

問い合わせ先 0569-26-4888(新美南吉記念館)
時間 9~17時
定休日 年末年始
交通アクセス 半田駅から車で約10分
値段 無料
URL https://www.aichi-now.jp/spots/detail/944/

新美南吉記念館

問い合わせ先 0569-26-4888
時間 9時30分~17時30分(cafe&shopは10~17時)
定休日 月曜・第2火曜(祝日の場合は翌日)・12月29日~1月3日休
交通アクセス 武豊線半田駅から車で約15分
値段 220円
URL https://www.nankichi.gr.jp/

文/綿谷朗子 写真/新美南吉記念館