2025.03.19ジパング俱楽部学芸員とめぐる東洋美術の殿堂・岡田美術館|大人のためのミュージアムガイド
神奈川県箱根町
忙しい日常から一歩離れ、知識と感性を豊かにする時間を過ごしませんか。じっくり作品と向き合う時間を楽しむ、大人ならではのミュージアムでの過ごし方を、施設の方にガイドしていただきました。
岡田美術館は2013年、箱根に開館した私設美術館。コレクションは近世・近代の日本画と、中国・韓国・日本の陶磁器を中心に、考古遺品や古代・中世の仏教美術品、さらに書跡、漆器、玉器、金属器、ガラス器などと幅広く、常時約450点の美術品が展示されています。
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岡田美術館について
小涌谷の自然に包まれて立つ美術館
岡田美術館が立つ場所は、明治時代にあった欧米人向けのホテル「開化亭」の跡地です。全5階からなる建物の延べ床面積は約7700平方メートル、展示面積は箱根の美術館では最大級の約5000平方メートルにおよびます。
学芸員の佐藤有沙さんに回り方のアドバイスを尋ねると、「1階から5階まで順に進めば、カテゴリーごとに鑑賞できるので理解しやすいと思います。エスカレーターで昇れますので、楽に移動できますよ」と教えてくれました。
今回案内してくれるガイドさんはこちら
見どころ① 大壁画『風・刻(かぜ・とき)』
天駆ける風神雷神の雄姿は迫力満点!
佐藤さんと並ぶと壁画の大きに驚かされます
1階の展示室に向かう通路に沿って大壁画『風・刻』が展示されています。俵屋宗達の代表作である国宝『風神雷神図屏風』をモチーフに、日本画家・福井江太郎氏によって描かれたもので、640枚のパネルを使用した、縦12メートル、横30メートルにもおよぶ巨大なスケールの壁画です。
「通路は全面ガラスになっているので、屋外の木々や青空など、季節や天候の変化によって壁画の表情も変わって見えます」と佐藤さん。
見どころ② 日本・中国・韓国の陶磁器
日本・中国・韓国の陶磁の名品を一堂に
照明を落とした展示室に浮かぶ陶磁器が幻想的な雰囲気を醸し出す
中国と韓国の陶磁器に関心があるという佐藤さん。中国陶磁の解説には思わず熱が入ります
『色絵唐花文皿』鍋島藩窯・江戸時代(17世紀後半~18世紀前半)/岡田美術館蔵(現在は4階に展示中)
1階は岡田美術館の顔ともいえる中国の陶磁のフロアです。古代から清朝まで歴代の作品が揃う国内有数のコレクションを誇ります。1階と4階の一部にある韓国陶磁は、高麗(こうらい)青磁や、青花(せいか)磁器の繊細な美しさに目がとまります。照明を落とした展示室に浮かび上がるように展示された作品の数々は、色彩や文様がいっそう鮮やかに映え、神々しささえ感じます。
2階は主に日本陶磁とガラスを展示しています。コレクションのなかには、江戸時代の肥前磁器(古九谷・柿右衛門、鍋島)や、野々村仁清(ののむらにんせい)の『色絵輪宝羯磨文香炉(いろえりんぽうかつまもんこうろ)』、尾形乾山(おがたけんざん)の『色絵竜田川文透彫反鉢(いろえたつたがわもんすかしぼりそりばち)』などの重要文化財もあります。
見どころ③ 日本絵画・屛風
日本美術史に名を刻む著名作家が勢揃い
屛風は豪華さが際立ちます
3階は特別展が中心になります。2025年6月1日までは『御舟(ぎょしゅう)と一村(いっそん) 珠玉の日本画』と題して、明治から昭和にかけて活躍し、近代日本画に大きな足跡を残した速水御舟と、御舟を尊敬した田中一村を中心にゆかりの画家たちの作品を併せて展示しています。「御舟の『木蓮』は名品といわれていますので、ぜひご覧いただきたいですね」と佐藤さん。
岡田美術館では尾形光琳(おがたこうりん)、酒井抱一(さかいほういつ)などの琳派(りんぱ)の作品が充実しています。
浮世絵では喜多川歌麿(うたまろ)や葛飾北斎(ほくさい)、ほかにも円山応挙(まるやまおうきょ)や伊藤若冲(じゃくちゅう)、横山大観(よこやまたいかん)、東山魁夷(ひがしやまかいい)など、誰もが知っている著名作家の作品も多数収蔵されているので、特別展の開催状況をチェックしてみてください。
左から速水御舟『木蓮(春風麗華)』(部分)1926(大正15)年、上村松園『汐くみ』(部分)1941(昭和16)年
横山大観『雨後嵐峡』(部分)20世紀後半
日本語・英語・中国語・韓国語・こどもの言葉で解説する液晶タッチパネル
「いくつかの作品には、液晶パネルで日本語・英語・中国語・韓国語の解説や、お子様でも理解できる分かりやすい言葉で解説した『こども語』もあり、大人もこどもも楽しめるところがこの美術館の魅力だと思います」と佐藤さんが話してくれました。
見どころ④ 仏教美術
「祈りの世界」と題した仏教関連の展示
仏像を間近に見られるのも美術館の利点といえます
5階は仏教美術のフロアです。飛鳥時代に造立された誕生仏、平安時代や鎌倉時代の仏像に加え、仏画や経典、仏具などを展示しています。正面に展示された平安時代の「木造薬師如来坐像」は国の重要文化財。やさしいお顔に心が癒やされます。
見どころ⑤ 庭園
箱根の自然を散策しながら体感できる
新緑や森林浴、紅葉など、季節で趣を変える庭園
ボタンは美術館を代表する春の花
庭園は豊かな自然林の中に滝や池などが点在しています。4・5月はヤマツツジやボタン、5~7月はシャガ、6・7月はハナショウブやアジサイなどが咲くので花めぐりも楽しみです。
「美術鑑賞のほかに、足湯カフェでリフレッシュしたり、庭園を散策したり、開化亭で食事や喫茶を楽しんだりと、一日のんびりと過ごしていただくのがおすすめです」と佐藤さんは岡田美術館の楽しみ方を教えてくれました。
岡田美術館
問い合わせ先 | 0460-87-3931 |
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時間 | 9時~17時(16時30分最終入館) |
定休日 | 12月31日・1月1日・展示替え期間 |
交通アクセス | 東海道新幹線小田原駅から大涌谷経由湖尻経由箱根園行き伊豆箱根バスほかまたは箱根町線箱根町港行き箱根登山バスほか約36分の小涌園下車すぐ |
値段 | 2800円 |
URL | https://www.okada-museum.com/ |
ひと休みするならここ 開化亭&足湯カフェ
開化亭
足湯カフェ
「開化亭」は、昭和初期の日本家屋を改装した飲食施設。明治時代にこの地にあった外国人向けホテルにちなんで名づけられました。「季節の魚天うどん」2200円、「牛ごぼううどん」1700円など、うどんが名物です。
「足湯カフェ」は、100パーセントの源泉かけ流しの足湯に浸かりながら、「プレミアムコーヒー」400円や「プレミアム和パフェ」800円などを味わうことができます。正面には大壁画「風・刻」が見えますので、美術鑑賞の余韻を楽しんでみてはいかがでしょう。
ミュージアムショップにも立ち寄ろう
ミュージアムショップ
豆皿5枚セット
岡田美術館のコレクション図録や作品ゆかりのグッズなどが揃います。絵画をモチーフにした手ぬぐいや『風・刻』の携帯クリーナーなど、普段使いできるものが多いのが特徴です。写真の「豆皿5枚セット」は4500円です。
最寄り駅情報 岡田美術館へは小田原駅から
小田原駅は、東海道新幹線と東海道本線のほか、小田急小田原線、伊豆箱根鉄道大雄山線、箱根登山鉄道が乗り入れる駅です。箱根方面に行く多くのバスはここが始発になっています。JRの改札正面に観光案内所があります。 駅に直結して「ラスカ小田原」が、駅前には駅と連絡通路で結ばれた「ミナカ小田原」があります。いずれも駅近なので、鉄道、バスの乗り換え時などに利用するのに便利です。
紹介スポット一覧マップ
写真・文/塙 広明 館内写真/岡田美術館
- ※記事中の情報は2025年3月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。