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2025.03.25ジパング俱楽部長崎奉行所跡に立つ「長崎歴史文化博物館」の見どころを徹底解説!|大人のためのミュージアムガイド

長崎県長崎市

芸術鑑賞は難しいものだと思っていませんか? 急ぎ足の観光ではなく、じっくり作品と向き合う時間を楽しむ、大人ならではのミュージアムでの過ごし方を、学芸員さんおすすめのまわり方、鑑賞ポイントなどとともに案内します。

鎖国の時代、日本で唯一西ヨーロッパに開かれ、貿易地だった長崎。海外との交流が盛んに行なわれるなかで、独自の歴史や文化が育まれました。そんな近世までの長崎の歴史と文化を紹介する「長崎歴史文化博物館」をガイドさんの案内のもと、徹底解説します!


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長崎歴史文化博物館について


建築家・黒川紀章(きしょう)氏が設計した建物は長崎奉行所の復元を図っており、当時の面影を今に伝えます 建築家・黒川紀章(きしょう)氏が設計した建物は長崎奉行所の復元を図っており、当時の面影を今に伝えます

近世長崎の海外交流史をテーマにした体験型博物館。“れきぶん”の愛称で親しまれています。2005年に開館し、2025年で20周年を迎えました。

約400年にわたる長崎の歴史と文化を貴重な歴史資料や美術工芸品で紹介する「歴史文化展示ゾーン」がある建物と、江戸時代の長崎奉行所立山役所を復元整備した「長崎奉行所ゾーン」の建物に分かれています。


今回案内してくれるガイドさんはこちら

広報・企画担当の早田 萌さん。

広報担当の早田 萌さんが今回、特別に案内してくれました。「展示室が2つの建物に分かれており、見どころも多いので、ぜひ時間をかけてじっくり見学してください」。

見どころ① 歴史文化展示ゾーン

貴重な歴史資料から五感で楽しめる体験まで充実!

最初に案内してもらったのが歴史文化展示ゾーン。長崎貿易、中国との交流、長崎の暮らしなど8つのコーナーに分かれています。


『南蛮人来朝之図』 『南蛮人来朝之図』

入ってすぐの「西洋との出会い〜南蛮貿易とキリスト教〜」のコーナーの目玉は『南蛮人来朝之図』。縦168センチ×横390センチの巨大な屏風(びょうぶ)が横に2つ並ぶ様子は圧巻です。
来航したポルトガル人との交易の様子が細やかに描かれており、よく見るとロザリオを首にかけた武士の姿も。当時の風俗や交易品を知ることができる貴重な資料です。

早田さんがとくにおすすめするのが「長崎貿易〜唐船、オランダ船と行き交う商品〜」のコーナー。江戸時代、唐船やオランダ船によって長崎に輸入された品物や、出島から海外に輸出された品物を紹介しています。


「長崎貿易〜唐船、オランダ船と行き交う商品〜」のコーナー 「長崎貿易〜唐船、オランダ船と行き交う商品〜」のコーナー

「展示されている貿易品に実際に触れていただけます。輸入品を鑑定する“目利き”になった気分で、長崎貿易を体感してみてください」と早田さん。


輸入された薬種で作られた薬の“目利き”を体験 輸入された薬種で作られた薬の“目利き”を体験

唐船から長崎にもたらされた薬の原料や、これらの複数の原料を調合して日本で作られた薬を展示。実際に原料に触れたり、薬の匂いを嗅いだりすることができます。

また、東南アジアの鹿皮や鮫皮で作られた刀の柄も展示。「鮫皮と言われていますが、鮫皮はとても貴重品なので、実はエイの皮なんですよ」と早田さん。触れてみるとザラザラとした感触でした。

「オランダとの交流〜出島と蘭学〜」のコーナーでは、江戸時代に前野良沢(りょうたく)や杉田玄白らがオランダ語を翻訳した解剖書『解体新書』の原本を展示。「『解体新書』のレプリカもあり、自由に手に取っていただくことができます。『解体新書』を読める施設は全国でも珍しいと思います」と早田さん。


『解体新書』のレプリカ 『解体新書』のレプリカ

『蘭館図屏風』 『蘭館図屏風』

めくってみると、内臓や筋肉、骨格などの図の緻密さに圧倒されました。また、出島での暮らしが生き生きと描かれた屏風絵『蘭館図屏風』も必見です。

「近代化の魁(さきがけ)・長崎 〜長崎発、西洋の知と技〜」のコーナーでは、幕末から明治時代にかけて日本近代化の先駆けとなった長崎を紹介。日本初の写真技術者で“写真の開祖”と呼ばれる上野彦馬(ひこま)が長崎で開いた写真館には、かの坂本龍馬やグラバーらも訪れたそうです。


モールス符号で電報を送ろう!のコーナー モールス符号で電報を送ろう!のコーナー

上野彦馬が実際に使用していたカメラが展示されているほか、当時の撮影方法で坂本龍馬のパネルと一緒に写真撮影体験もできます。

ほかにも、活版印刷の植字やモールス符号の発信など、楽しい体験が盛りだくさんです。

見どころ② 長崎奉行所ゾーン

同じ場所にあった長崎奉行所立山役所を復元

長崎歴史文化博物館の建物が立つのは、江戸時代に長崎奉行所立山役所があった場所。「長崎奉行所ゾーン」では、当時の絵図面や発掘調査をもとに長崎奉行所立山役所の往時の姿が復元されています。


長崎奉行所立山役所を復元整備した「長崎奉行所ゾーン」 長崎奉行所立山役所を復元整備した「長崎奉行所ゾーン」

裁きの場である御白州(おしらす)のほか、藩主などの対応にあたった書院、外国人との面会や貿易船が運んできた積荷を検分する対面所・次之間・使者之間などがあり、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。御白州では、密貿易や漂流民などの裁きの様子を再現した「寸劇」が毎週日曜に実施されているそうです。


「寸劇」で使用される衣装や小道具などを展示 「寸劇」で使用される衣装や小道具などを展示

毎週日曜、裁きを再現した「寸劇」を実施 毎週日曜、お裁きを再現した「寸劇」を実施

展示室では、江戸時代に幕府の管轄地として行政や裁判、外交、貿易、キリシタンの取り締まりなど幅広い執務を担っていた長崎奉行所の役割や機能などを解説しています。


「犯科帳」 「犯科帳」

なかには、国指定重要文化財である「犯科帳」や「踏み絵」の展示も。

「犯科帳」とは長崎奉行所の判決記録で、密貿易やキリシタン関連、外国人とのトラブルなど、さまざまな事件がまとめられています。

見どころ③ 遺構&体験

正面玄関には江戸時代の石垣と石段が現存


発掘された遺構を利用して築かれた正面玄関の石垣と石段 発掘された遺構を利用して築かれた正面玄関の石垣と石段

かつて長崎奉行所立山役所があった長崎歴史文化博物館の敷地内には、当時の遺構が一部現存しているということで、早田さんに案内してもらいました。正面玄関にある石垣と石段は、発掘された遺構を利用して築かれているそうです。


「色が濃いこの部分が江戸時代のものです」と早田さん 「色が濃いこの部分が江戸時代のものです」と早田さん

「江戸時代のものと最近のものは色の違いで分かると思います。色の濃い部分が江戸時代の遺構です」。

石垣は色の違いが一目瞭然。石段もよく見ると、遺構である下段の方が濃くなっています。この場所に長崎奉行所があったことをより身近に感じられました。


ステンドグラスの体験。キーホルダーやペン立てなどを作れます ステンドグラスの体験。キーホルダーやペン立てなどを作れます

敷地内の伝統工芸体験工房では、ステンドグラスや長崎刺繍、長崎銀細工など、長崎の伝統工芸を体験できます。

日によって体験内容が異なるので、事前にホームページでカレンダーを確認してみてください。予約なしでも体験可能ですが、人数に限りがあるので予約しておくのがおすすめです。

見どころ④   ミュージアムショップ

収蔵品をモチーフにしたオリジナルグッズに注目!


絵手ぬぐいのほか、長崎の銘菓や伝統工芸品などがずらりと並びます 絵手ぬぐいのほか、長崎の銘菓や伝統工芸品などがずらりと並びます

ミュージアムショップでは、長崎歴史文化博物館の収蔵品をモチーフにしたオリジナルグッズに注目。

南蛮屏風がパッケージにあしらわれた南蛮菓子「有平糖(あるへいとう)」や、国指定重要文化財の絵画「絹本著色鯉魚跳龍門図 熊斐筆(けんぽんちゃくしょくりぎょちょうりゅうもんず ゆうひひつ)」が描かれた「絵てぬぐい」1320円などがあります。


オリジナルの「有平糖」648円 オリジナルの「有平糖」648円

オリジナルの「れきぶん缶バッジ」1個200円 オリジナルの「れきぶん缶バッジ」1個200円

手軽さで人気なのが「れきぶん缶バッジ」。れきぶんオリジナルキャラクターと長崎弁のかけ声がデザインされたカラフルな缶バッジは、愛らしさ満点です。

また、同館で開催された企画展の図録や長崎関連の書籍も購入可能。ほかにも、カステラなどの銘菓から、べっ甲や長崎ガラスといった工芸品まで長崎みやげが豊富に揃います。


長崎歴史文化博物館

問い合わせ先 095-818-8366
時間 8時30分~18時30分(12~3月は~17時30分)
定休日 第1・3月曜(祝日の場合は翌日)
交通アクセス 西九州新幹線長崎駅から徒歩約14分
値段 630円
URL https://www.nmhc.jp/

ひと休みするならここ レストラン銀嶺(ぎんれい)


長崎名物の「トルコライス」(スープ付き)1550円 長崎名物の「トルコライス」(スープ付き)1550円

「長崎歴史文化博物館」の敷地内にある老舗(しにせ)洋食店。1926(昭和元)年に長崎市鍛冶屋町で創業し、博物館の開館と同時に現在地へ移転しました。

アンティークな調度品に囲まれて、「銀嶺特製ビーフカレーライス」1150円や「銀嶺特製ハンバーグランチ」1300円など創業当時の味を受け継ぐランチを味わえます。人気の「トルコライス」は、とんかつ、ピラフ、ナポリタンが一皿に盛られた長崎名物です。

レストランのみの利用も可能。


レストラン銀嶺

時間 10時30分~18時30分(4~11月は~19時)
定休日 第1・3月曜(祝日の場合は翌日)
URL https://www.nmhc.jp/floor-guide/2f/restaurant/

最寄り駅情報 長崎歴史文化博物館へは長崎駅から!


2022年9月に開業した西九州新幹線の始発・終着駅。駅周辺では大規模開発が進められており、2024年10月には駅から徒歩約10分の場所に大型複合施設「長崎スタジアムシティ」がオープン。

サッカー競技場のスタジアムを軸に商業施設やホテル、オフィスビルなどが揃い、長崎の新名所として話題を集めています。

紹介スポット一覧マップ

文/佐藤 史 写真/玉村恵理子

  • 記事中の情報は2025年3月時点のものです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。