2025.11.25ジパング俱楽部善通寺駅スタート!弘法大師空海もきっと眺めた絶景低山・香色山|鉄道で行く低山ハイク

天気のいい日は、列車に乗って気軽な日帰りハイキングへ。ここでは駅からのアクセスがしやすくて、体力的な難易度の低い、低山トラベラー・大内征さん監修の低山歩きコースを紹介します。
善通寺駅から気軽にアクセスできる香色山(こうしきざん)。駅から歩くことで、町歩きも楽しむことができます。善通寺にも立ち寄りお参りをしたら、登山道へ。大内征さんが実際に歩いた様子を紹介します。
香色山
隣り合う山と瀬戸内海を望む「低い絶景」が魅力!
香川県善通寺市
360度の大展望が広がる香色山。讃岐富士こと飯野山も
お椀のような姿のよい低山がひしめき合う香川県。とくに弘法大師空海の生誕地として知られる善通寺市には、五岳山(東から香色山、筆ノ山〈ふでのやま〉、我拝師山〈がはいしさん〉、中山〈なかやま〉、火上山〈ひあげやま〉。それらの別称を屛風ヶ浦)と呼ばれる山岳が連なっていて、山と町をセットで楽しめる絶好のロケーション。琴平駅や丸亀駅といった近隣の要所とアクセスよく結ばれているのもうれしいポイントです。
香色山もお椀を伏せたような丸っこい山容をしていて、遠くから見るだけでも「ああ、香川に来たんだなぁ」と思うわけです。今回の旅は、そんな「これぞ香川!」を体現する低山ハイク。町歩きを経てから山歩きに転じる歩き旅を楽しみます。
本記事のアドバイザー・大内 征(おおうちせい)さん
コース概要
| 所要時間 | 約1時間35分 |
|---|---|
| 歩く距離 | 約4.5キロ |
| 標高 | 153.2メートル |
| 低山ハイクの注意点 | ほんの裏山といった印象の香色山でも、山は山。履きなれた靴、両手の空くザック、雨具や折り畳み傘を忘れずに。トイレがないので、事前に済ませておきましょう。 |

スタートは土讃線善通寺駅
旅のはじまりは、土讃線善通寺駅。なんとこの駅舎、国の登録有形文化財です。開業は1889(明治22)年の5月という古さ。今年は2025年だから、すでに136年の歴史!いきなり飛び出したご当地トリビアに、今回の旅の濃さを予感せずにはいられません。
土讃線は、さほど鉄道に詳しくないぼくでも知っている絶景路線。香川・徳島・高知と四国を斜めに大縦断する路線であり、いつか途中下車をしながら低山を歩く旅とかやってみたいなぁと、憧れの列車旅を思い描いたこともありました。
① 弘法大師空海ゆかりの寺院・善通寺が素晴らしい!
南大門。広い境内を通過して、いざ香色山へ
善通寺は正式名称を「屏風浦五岳山誕生院善通寺」といいます。なるほど五岳山が連なるさまはまるで屏風のようであり、山際は入江(つまり浦)のように入り組んでいます。空海さんが生まれたから誕生院なのでしょう。そんな風に漢字から由来を推測するのも、見知らぬ土地の楽しみ方です。あとから善通寺のホームページで確かめてみると、まさにそう書いてありました。
伽藍からの眺め。向かって左側が香色山(標高153.2メートル)、右側が筆ノ山(標高296メートル)
御影堂の山門。向かって左側の香色山が近くなってきました
御影堂を抜けると、香色山はすぐ目の前!
善通寺駅からほぼ真っすぐ西へと歩くこと約20分で、南大門に至ります。見上げると山号の「五岳山」という扁額(へんがく)が掲げられており、その奥は広い境内となっていて、伽藍(がらん)と五重塔の存在感が素晴らしい。仏さまを前に、穏やかな気持ちで門をくぐり、金堂で山旅の安全を祈願します。
手を合わせながら西側を向くと、これから登る香色山が美しいお椀型の姿で佇(たたず)んでいます。その奥には五岳の一座・筆ノ山もチラリ。山に向かって西へと進み、空海さんのご実家・佐伯家の邸宅跡に建てられたという御影堂でお参りをしたら、いよいよ香色山へ。こうして弘法大師空海ゆかりの寺院を訪ねながら歩を進めると、自然と香色山の登山口にたどり着くのです。
② 正一位稲荷大明神から香色山の頂へ
登山口に鎮座する正一位稲荷大明神。御利益ありそう
香色山の登山口には、とてもいい雰囲気のお稲荷さんがあります。商売繁盛や金運上昇で知られるウカノミタマノミコト(倉稲魂命)という稲の神さまですが、じつは空海さんとは深い関わりがあったりして。初めての出会いは遣唐使として訪れた唐でのことです。その後、帰国した空海さんが熊野で修行している時に再会を果たします。そのご縁から真言密教の根本道場たる東寺の守護神になっていただいた、という伝承。おもしろいですねぇ。
この香色山は、幼いころの空海さんが修行で登った山で、その際に“縦走”したのが五岳山と呼ばれる山々。ぼくも五岳を一気に歩いたことがありますが、なかなかハードでした。いやはや、幼少期から傑出した修行者だったんでしょうね、空海さん!
③ 標高153メートルにして絶景の宝庫、香色山
善通寺の市街地から瀬戸内海まで広く見渡せる絶景の山頂
登山口のお稲荷さんから山頂までの道は、とても歩きやすく整備されています。その間、木々の間から見える善通寺の町並みや、少しずつ見えてくる瀬戸内海の眺めに励まされながら、あっという間に山頂です。所要時間は25分ほど。
とはいえ、低山ハイクをはじめたばかりの方にとってみれば、油断は禁物。そこが町なかでも山中でも、足もとの小さな障害物に気がつかなければ躓いて転倒してしまいます。ケガやトラブルは、山の高さや低さはさほど関係ないと心得ておきましょう。ぼくなんて、ふつうの舗装路の小さな段差で転んだことがありますからね……。
眼前には迫力の筆ノ山!その向こうが聖地・我拝師山
山頂には空海さんの祖先(佐伯家)の石廟も
さて、山頂に到着したら、360度の低い眺めをじっくりと味わってください。町がとても近く、隣り合う筆ノ山は眼前に迫る迫力で、瀬戸内海と讃岐の空は真っ青に広がっています。これぞ「低い絶景」です。
特徴的なのは、この香色山と似たような形をしたお椀型の低山をいくつも確認できることでしょうか。とくに東にそびえる三角形の山は、讃岐富士の美称をもつ飯野山。低山ハイクの楽しさを知ったら、あちらの山にも、いつかぜひ。
④ 大師堂を経てふたたび善通寺へ
大師堂はこちらから下山。ぐるりとまわってお稲荷さんへ
戻る道中、ひそやかに神仏が見守ってくれています
山頂は広く、やや下ったところに東屋とベンチもあるので、弁当やおやつを広げてもよさそう。ひと息ついたら下山開始です。安全に下りるなら、来た道をそのまま逆戻りする「ピストン」で。大師堂を経てぐるりと回りこむなら「五岳山」というプレートから下ります。こちらはややむき出しの岩場があるものの、特別に危ない場所はありません。ゆっくり慎重にいきましょう。
大師堂まで下りてしまえば、そこからは整備された道となります。登山口のお稲荷さんに合流したら、ふたたび善通寺の境内に入るので、御影堂や金堂で無事の下山の報告を。
⑤ 善通寺駅でゴール!
さあ、ここからは下山後のお楽しみが待っています。善通寺駅に戻る道中には、これまたさまざまなローカルグルメやみやげ店があるので、寄り道を楽しみたいところです。ぼくは喫茶ブーケの「コスモポリタン」が前々から気になっていたので、ちゃっかり食べて帰りました。もう大満足。
町の歴史に触れたり、山の信仰に触れたり、現代のローカルカルチャーやグルメを味わったり。そしてビールも飲める。ああ、素晴らしいかな、鉄道で低山ハイク。最高か。
下山後のお楽しみ
大川製麺所
「四国まるごとうどん」1玉380円
香川県といえば、やっぱりうどんです。個人的には朝昼晩と3度食べてもいいくらい好きですが、香川ではあえて1日1食に集中してストイックに味わうことにしています。そんなわけで、善通寺なら大川製麺所がお気に入り。名物「乃木うどん」は品切れだったので、今回は四国4県の名物が入った「四国まるごとうどん」にしました。香川がうどん、徳島が鳴門ワカメと赤板カマボコ、愛媛がじゃこ天、高知が土佐しょうが。たしかに四国がまるごと味わえます。朝から美味でございました。
大川製麵所
| 問い合わせ先 | 0877-62-0141 |
|---|---|
| 時間 | 7~13時(土・日曜・祝日は6時30分~) |
| 定休日 | 水曜 |
| 交通アクセス | 土讃線善通寺駅から徒歩約10分 |
喫茶ブーケ
ついに食した「コスモポリタン」。個人的定番のバタートースト添えで完璧な布陣
喫茶ブーケの名物「コスモポリタン」770円は前々からの憧れで、今回ついに食べることができました。デミグラスソースとホワイトソースを合わせたオリジナルパスタで、表面にはカリカリになったチーズ。まるでグラタンを食べているかのような食感です。絶品すぎて腰を抜かしました。お店の雰囲気も最高。
ブーケ
| 問い合わせ先 | 0877-62-0688 |
|---|---|
| 時間 | 10~18時(食事提供は15時まで) |
| 定休日 | 不定休 |
| 交通アクセス | 土讃線善通寺駅から徒歩約18分 |
川向製菓店
「カタパン」330円
ガリっと噛んではいけません!
低山ハイクには、ご当地の銘菓を持っていくのがマイルール。和菓子でも洋菓子でもいいけれど、とにかく甘いものが食べたい気分になります。善通寺なら、名物のカタパンはどうでしょう。その名の通り、堅いです。ガリっと噛んではいけません。口の中で少しずつ柔らかくするのです……。すぐに嚙み砕いて飲み込むものではないことが、かえって少量でもお腹を満たしてくれる秘密なのかも。ほんのり甘くて素朴な味わいの、不思議なおやつ。好きです。保温ボトルにコーヒーを入れていけば、なおよし。
川向製菓店
| 問い合わせ先 | 0877-62-0046 |
|---|---|
| 時間 | 9時~17時30分(2026年から変更予定) |
| 定休日 | 日曜、1月1・2日 |
| 交通アクセス | 土讃線善通寺駅から徒歩約20分 |
紹介スポット一覧マップ
文・写真/大内 征
- ※記事中の「歩く距離」はスタート駅からゴール駅までの徒歩での移動距離を記載しています。「所要時間」は食事や休憩や見学の時間を含まない時間を記載しています。
- ※本記事の地図はコース概要を示したもので、実際の登山道の詳細をすべて網羅したものではありません。安全のため、登山の際は必ずGPS対応の登山アプリや登山地図を携行し、現地の案内表示を確認しながら行動してください。
- ※記事中の情報は2025年11月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。

