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2025.03.19ジパング俱楽部草笛光子さん主演映画『アンジーのBARで逢いましょう』松本動監督インタビュー

草笛光子さん演じる、映画史上最高齢の“お尋ね者”⁉

ジパング世代のみなさまからも人気を集める、草笛光子さんの主演映画『アンジーのBARで逢いましょう』が2025年4月4日から劇場公開!

草笛さんといえば、第48回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞されたばかり。

編集部では、草笛さんの魅力や映画の見どころを、大林宣彦監督などの助監督を長年務めた松本動(まつもと ゆるぐ)監督にインタビューしました。
最後までゆっくりお楽しみください!

【2025年4月4日公開】映画『アンジーのBARで逢いましょう』


旅するように生きる自由な人生に、乾杯!

ある町に風に吹かれてやってきた、白髪の女性。

みずからを「お尋ね者」と名乗るアンジーは、いわくつきの物件を借り、BARを開きます。

さまざまな問題を抱えながら生きる町の人々は、アンジーと出会い、自分らしく変わっていく――。 生き生きと飾らない、かっこよくてチャーミング! 

90歳を超えてさらに輝き続ける草笛光子さんが新しい主演映画で演じるのは、ミステリアスな“お尋ね者”。旅するように生きるアンジーに会いに、劇場へ足を運んでみませんか?

笑って泣いて、共感して魅せられる、不思議で痛快な物語。観賞後は、背筋をのばして新しい一歩を踏み出したくなる。温かなエールをもらえる映画です。




松本動 まつもとゆるぐ

東京都立川市出身、在住。1990年代から8ミリフィルムで自主映画制作を始め、商業映画の道へ。
フリーの助監督として石井隆、山﨑貴、佐藤信介などのさまざまな劇映画にかかわり、大林宣彦作品『花筐/HANAGATAMI』(2017)では監督補佐として多くのシーンを演出。

これまでの監督作品に、東日本大震災で被災した障がい者と支援者の活動を描いた『星に語りて〜Starry Sky〜』(2019)、短編『在りのままで咲け』(2022)、長編『在りのままで進め』(2023)などがある。

松本監督が語る、草笛光子さんの魅力

「私、アンジーみたいな役をずっとやってみたかったのよ」

――高齢者が主人公の作品を撮ろうと決めて、草笛さんが主演になったそうですが、草笛さんの現場での印象や、撮影秘話をお聞かせいただけますか?

撮影現場に草笛光子さんが入って来られると、空気がキリッとして、役者もスタッフも気持ちが引き締まる感じがしましたね。かといって雲の上の人ではなく、いつも笑顔で明るく、包容力にあふれる太陽のような存在でした。


ひさしぶりに共演する、親子のように仲良しの寺尾聰さんと ひさしぶりに共演する、親子のように仲良しの寺尾聰さんと

現場ではよくお話しました。一番心に残っているのは「おもしろい人よね、この女(アンジーのこと)。でも私、アンジーみたいな役をずっとやりたかったのよ。ふふふふ……」と、いたずらっ子みたいにかわいい笑顔を浮かべておっしゃったこと。何度もおっしゃっていて、アンジーを心の底から楽しんで演じてくださっているなと感じた瞬間です。


草笛さんが楽しく演じてくださることでアンジーが魅力的になると、僕はクランクインする前から確信していました。だからこの言葉がとてもうれしくて。最高の思い出になっています。

いつまでも童心を抱いていらっしゃる感じが素敵でした。

役作りのこだわりとアイデアが映画をさらにおもしろくする

草笛さんは役作りへのこだわりがとても強い方で、台本を読みながら質問をたくさん投げかけてくださいました。時には30分ぐらい長電話してディスカッションしたり。

撮影現場でも演技の細やかな打ち合わせを重ねるのですが、草笛さんのアイデアに気付かされることもたくさんありました。僕は、映画づくりってみんなでアイデアを出し合うとどんどんよくなると思っているんです。


町の人たちとアンジーのかけあいもおもしろい 町の人たちとアンジーのかけあいもおもしろい

草笛さんのアイデアが生きている好きなシーンは、アンジーがBARの前でひとり座っていて、悩みを抱える高校生(青木柚)が前を通り、対峙する場面です。彼に向かって草笛さんが少し手をあげるのですが、その手にやさしい思いが感じられて……。さりげない所作 があんなに様(さま)になる人はほかにいないと思います。

セリフはありませんが、「おかえり」「大丈夫だよ」「ちゃんと見ているよ」と声が聞こえてくるようなのです。


BARの前で、アンジーは何を考えるのか…… BARの前で、アンジーは何を考えるのか……

――今回の撮影現場・ロケ地について印象的なエピソードはあるでしょうか。

アンジーは、たまたま風が吹いてこの街に居座りました。これまでの人生、きっといろんな街を渡り歩いてきた人だと思うんです。

ロケーションも、千葉県や埼玉県などいろんな街へ行きました。ラストシーンは富士山を望む山梨県でした。颯爽と登場する素敵な青年とバイクに乗って、再びどこか遠い町へ旅立つのだろうと想像させられます。

ロールスロイスに乗るように……?


乗り物といえば、リヤカーに乗ってBARの開店準備の買い出しに行くシーンがあります。

人力の不安定なリヤカーにも余裕で乗れる草笛さんにも驚きなのですが、本番前に「ロールスロイスに乗るように、気品高く優雅に乗ってください」と、演出のお願いをしたんです。それはもう、優雅に乗られて……このシーンも見どころですよ。見どころばかりですね(笑)

松本監督が旅する、全国のロケ地

――今回の映画のほかにも、松本監督がこれまで訪ねたロケ地の思い出をお教えください。


佐賀県唐津市にあるミニシアター「THEATER ENYA」 佐賀県唐津市にあるミニシアター「THEATER ENYA」

ロケで訪ねる町では、人とのつながりも深くなって、特別な思いを抱きますね。

たとえば大林宣彦監督の監督補佐を務めた『花筐/HANAGATAMI』(2017)は、佐賀県唐津市でオールロケをした作品です。大林監督は、日本の伝統ある地方の町を舞台に、その町の人々とともに「古里(ふるさと)映画」の製作をライフワークにしてこられました。

映画づくりには市民のみなさんが大勢かかわってくださり、とても熱い時間を過ごしました。今も交流が続いています。

じつは、唐津市には映画館がなかったのですが、この映画をきっかけにミニシアター『THEATER ENYA(シアターエンヤ)』がオープンしました。『花筐/HANAGATAMI』は毎月第2金曜日に上映し続けているんです。

映画のロケ地を訪ねる旅や、その土地ならではのミニシアターを訪ねる旅も、違った楽しみ方ができていいですよ。

松本監督から『ジパング倶楽部』の読者へメッセージ

映画から元気を。そして、アンジーのような生き方を。


――最後に、映画の公開を楽しみにしている『ジパング倶楽部』読者へのメッセージをお願いいたします。

読者のみなさんには、アンジーの自由な暮らし、生き方をぜひ観ていただきたいです。

ご高齢の方が主人公だと病気や死がテーマの作品が多いんですよね。僕はそうではなくて、とにかく高齢者が主人公の、明るい映画を創りたかったんです。

ご高齢の方の存在は、ややもすれば説教じみた感じの話になることもありますが、アンジーは言葉で諭すのではなくて、自分の生き方を周囲に見せて、周囲が少しずつ気づいて変わっていく……。

アンジーの人生が周囲に影響を与えるのです。

映画館で、かっこよくてチャーミング、すごく素敵なアンジーに逢ってください。きっと、草笛さんみたいになりたいと思ってくださる方がいらっしゃるでしょう。

草笛光子さん=アンジーのような生き方を感じて、元気を受け取っていただけたらうれしいです。



『アンジーのBARで逢いましょう』

監督: 松本 動
脚本: 天願大介
キャスト: 草笛光子
松田陽子 青木 柚 六平直政 黒田大輔 宮崎吐夢 工藤丈輝
田中偉登 駿河メイ 村田秀亮(とろサーモン) 田中要次 沢田亜矢子 木村祐一
石田ひかり ディーン・フジオカ
寺尾 聰
配給: NAKACHIKA PICTURES

©2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会
4月4日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
公式サイト: https://angienobar.com/

文/松井一恵 写真/北原千恵美