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2025.10.27ジパング俱楽部【髙石あかりさんインタビュー】連続テレビ小説『ばけばけ』の見どころ&松江での撮影秘話

連続テレビ小説『ばけばけ』は、小泉セツと夫・八雲をモデルにした夫婦の物語です。ヒロインの髙石あかりさん(セツ=松野トキ役)に、二人が出会い、暮らした松江の魅力、番組の見どころ、撮影時のエピソードをうかがいました。

連続テレビ小説『ばけばけ』


この世はうらめしい。けど、すばらしい。 「怪談」をこよなく愛した小泉セツと夫・八雲がモデルの夫婦の物語。

連続テレビ小説『ばけばけ』は、松江の没落士族の娘・小泉セツとその夫で作家の小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにした物語です。

時代は明治初頭、文明開花の頃。物語は、宍道湖(しんじこ)の夕景が美しい島根県松江から始まります。家族想いの松野トキ(小泉セツがモデル)と、松江に魅せられて滞在するレフカダ・ヘブン(八雲がモデル)が出会い、言葉や文化の違いに悩まされながらも「怪談が好き」という共通点を見つけて心を通わせて人生をともに歩んでゆく……。

急速に西洋化が進む時代に翻弄されながら生きた市井の人たちの、なにげない日常のおかしみや不条理がていねいに描かれます。

公式ホームページ
https://nhk.jp/bakebake/

昔のままの空気感も、少しシャイな方も、松江のすべてが大好きになりました。

―――ヒロイン役が決まって、島根県松江を訪ねた時の印象をお聞かせください。


八重垣神社の鏡の池で「縁占い」をするシーン。トキの占いの結果は? 八重垣神社の鏡の池で「縁占い」をするシーン。トキの占いの結果は?

小泉八雲さんの作品を読んで、その世界に親しんでから、松江を訪ねました。まず最初に、レフカダ・ヘブン役(八雲がモデル)のトミー・バストウさんと散策をしたのですが、昔のままの松江城、橋や小径など、作品に描かれる町の風景がたくさん残っていることにとても驚きました。そして、八雲さんとセツさんが生きた時代の空気感に包まれながら過ごせる松江が、大好きになりました。

町を歩いたり、「怪談」にまつわる場所を訪ねて気づいたのは、松江の“人”の魅力です。「最初は少し人見知りするけれど、打ち解けたらとても心強い味方になってくださる」と聞いていたので、行く先々で積極的に話しかけてみたんです。そうしたら、本当にそのとおり! お話しているうちに、「あの道を歩くとおもしろいよ」とか、「宍道湖の夕日はこちらから見るのがきれいです」と、とっても親切に教えてくださるんです。

町の雰囲気だけじゃなく、松江の方々も大好きになっちゃいました。だから、松江には「行く」ではなく、「帰る」感覚なんです。

 

―――トキにとって大切な家族、松野家のみなさんとのエピソードを教えてください。

松野家の家族みんなと過ごす時間がとにかく楽しくて。家族シーンの撮影があると、本当にうれしい! 明るさがあふれるおじいさま(松野勘右衛門/小日向文世さん)、憎らしいけれどみんなを笑顔にしてくれるお父さん(松野司之介役/岡部たかしさん)、家族のバランスを保って支えてくれるお母さん(松野フミ/池脇千鶴さん)、そして、意思が強く前向きで感情豊かなトキ。どこか似ているところがあって、不思議なほど自然に引き寄せられているんです。松野家は「奇跡の4人」だと感じています。


“川の向こう”の長屋で、貧しいながらも明るく暮らす松野家。右から、小日向文世さん、髙石あかりさん、池脇千鶴さん、岡部たかしさん “川の向こう”の長屋で、貧しいながらも明るく暮らす松野家。右から、小日向文世さん、髙石あかりさん、池脇千鶴さん、岡部たかしさん

『ばけばけ』は、ふじきみつ彦さんの脚本で、台詞がとてもリアルな会話劇になっています。明治時代のお話ですが、今の時代の皆さんが観てもまったく違和感はないでしょう。アドリブもたくさんあります! 

また、各シーン、細部までさまざまなこだわりが施されています。たとえば、食事のシーン。大阪のスタジオで撮影する時も、食材はすべて松江県産のものを取り寄せて調理しているんです。食卓に欠かせない「しじみ汁」のシジミは、もちろん宍道湖産。そして、食べ終わった後の貝殻は、松野家がある長屋の路地に散りばめていたり。目に見えないところにもこだわるていねいな番組作りが、画面からにじみ出て伝わると信じています。

―――家族のシーンのほかに、『ばけばけ』の見どころを教えてください


「怪談を語るシーンにご注目ください」(髙石あかりさん談) 「怪談を語るシーンにご注目ください」(髙石あかりさん談)

『雪女』、『耳なし芳一』など日本の怪談を再話した著書『怪談』が、小泉八雲さんの代表作です。八雲さんの作品はどれも人間模様が魅力的で、人の悲しみ、苦しみ、愛が深く描かれていると感じます。

松野トキは、こどもの頃から怪談が好きなちょっと変わった女の子。つらいことがあるといつも母・フミに怪談を話してもらって育ちます。そして、お話を自然に覚えてしまう。

『ばけばけ』ではいくつもの怪談を語りますが、とにかく聞き手を驚かせたい、と思って挑んでいます。とくに、言語の通じない聞き手(ヘブン)に語るのはとても難しくて、どんな風に驚いてもらえるかが、肝なんです。語りのシーンにもぜひご注目ください。

言語や文化が違うからこそ、生き生きと心豊かな日常になる

―――『ばけばけ』で描かれる夫婦の魅力を、どんな風に感じていらっしゃいますか。


書籍や資料を読んで、小泉セツさんと八雲さんは、なんていとおしい夫妻なんだろうと思っていました。そのかわいらしい2人の魅力が、少しでもみなさんに伝わったらいいなと思っていたんですけど、ふじきみつ彦さんの脚本があまりにもかわいくて。「これならきっと、どんな人でも2人が好きになっちゃうよ!」と、演じながら確信しています。

言語も文化も違う2人ですが、その違いや壁があるからこそ、とても楽しい生活が生まれるのかもしれません。『ばけばけ』のキャッチコピー、「この世はうらめしい。けど、すばらしい」と思えるような日々を重ねて、しっかり伝えられる朝ドラになると思います。

 

―――最後に、髙石さんの旅への思いと、ジパング俱楽部会員へのメッセージをお願いいたします。


小泉八雲も愛した宍道湖の夕景 小泉八雲も愛した宍道湖の夕景

私にとって旅は必要不可欠なものなのです。宮崎で生まれ育ったから自然を求めてしまうので、旅先はいつも自然が豊かなところ、海や山を眺めてリフレッシュして、また仕事を頑張ろうって思える。そう思えることが旅に出る素晴らしさ。ひとつ前を向ける時間です。

ジパング俱楽部会員の皆さんに『はばけばけ』を観て、松江へ行きたいな、と思ってほしいですね。

松江を旅するなら、晴れでも曇りでもない“松江の天気”のように、独特な雰囲気を感じながらお散歩して景色を楽しんでください。そして私も大好きになった松江の方々とお話をして仲よくなっていただきたいです。気軽に、「夕日はどこから見たらきれいですか?」など質問してみてください。とっておきの場所を教えてくださいますよ。

『ばけばけ』にもきれいな夕日が出てきますので、お楽しみに。



髙石あかり

2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。幼少期から俳優を志し、2019年より本格的に俳優活動を始動。2021年に映画初主演。映画、ドラマ、CMなどでも活躍するほか、2023年には第15回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞を受賞。代表作に映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ、『私の幸せな結婚』、『遺書、公開』、『ゴーストキラー』、『夏の砂の上』、ドラマ『わたしの一番最悪なともだち』、『御上先生』、『アポロの歌』、『グラスハート』などがある。
NHK連続テレビ小説のヒロインは「こどもの頃から夢だった」と語る。


連続テレビ小説「ばけばけ」

:ふじきみつ彦
音楽 :牛尾憲輔
主題歌 :ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
キャスト  :髙石あかり、トミー・バストウ/吉沢亮 ほか  

公式サイト:https://nhk.jp/bakebake/

小泉セツ&八雲(ラフカディオ・ハーン)夫妻がモデルの物語。
明治の松江。怪談を愛する夫婦のなにげない日常を描きます。

文/松井一恵 写真/NHK、松江観光協会(宍道湖)