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2025.01.10ジパング俱楽部鹿児島県指宿の「鰹節作り」を体験してみよう!大人の社会科見学の旅へ|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発!おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。

今回紹介するのは「鰹節(かつおぶし)工場見学」。「NPO法人 指宿(いぶすき)観光&体験の会」のベテランガイドさんとともに鰹節工場を訪ねる旅です。

鰹節ができるまでを見学

本枯節の一大産地。指宿の山川港


指宿山川の「大丸鰹節」にて鰹節作りを見学 指宿山川の「大丸鰹節」にて鰹節作りを見学

だしの材料となり和食には欠かせない食材・鰹節。鹿児島県は高知県や静岡県と並ぶ鰹節産地であり、指宿から枕崎にかけての一帯が一大産地となっています。なかでも指宿市は、本枯節(ほんかれぶし※)の生産量の全国の約7割を占める産地。

指宿市は薩摩半島の南端に位置し、一年を通じて暖かく、南国ムード満点の温泉地です。全国に先駆けて咲く菜の花や、頭だけすっぽり砂から出して全身砂に埋められる天然のサウナ「砂むし温泉」が有名ですが、ほかにも忘れてはならない名物が。それは、和食に欠かせないだしの材料となる鰹節です。

鰹節の一大産地となっているのは指宿市内の山川港一帯です。山川港ははるか昔に火山活動によってできた天然の良港で、古くは琉球貿易の基地として、近代に入ってからは遠洋漁業の基地として栄えてきました。現在は遠洋で漁獲されたカツオやマグロが豊富に水揚げされ、そのカツオが鰹節作りに利用されます。

そして、ここ山川港では、全国でも珍しい鰹節作り見学ができるツアーがあります。指宿駅前にある「指宿観光&体験の会」は、指宿に詳しいシニアガイドさんが指宿の地理・文化・歴史を深く知る旅へナビゲートしてくれる団体。こちらの体験プログラム「鰹節工場見学と茶節体験」では、冷凍カツオの水揚げや鰹節工場内で鰹節作りを見学することができます。

しかも、見学後は直売店でおみやげに鰹節を購入したり、鰹節を使った郷土料理「茶節」を味わったりすることも可能。今回は、鰹節作りの見学の様子を紹介します!

  • 鰹節の表面にカビを付けた鰹節のこと。

温暖で日照時間が長い、指宿の気候が育む鰹節


南洋から冷凍されて運ばれてくるカツオ 南洋から冷凍されて運ばれてくるカツオ

山川港ではまず、冷凍カツオの水揚げを見学。

主に遠洋で漁獲されるカツオはカチカチに凍った状態で水揚げされ、ベルトコンベアで運ばれます。


マイナス50度の冷凍庫でカチカチ体験!? マイナス50度の冷凍庫でカチカチ体験!?

次はカツオ専用の冷凍庫内部を体験。カツオを保存するための冷凍庫はマイナス30度とマイナス50度の2種類。

水に濡らしたタオルが一瞬でカチカチに凍ってしまう温度です。

マイナス50度の冷凍庫内に入ると寒すぎて痛いくらい!


熟練の職人さんたちの手作業を近くで見学 熟練の職人さんたちの手作業を近くで見学

鰹節作りの工程は本枯節を作っている「大丸鰹節」の工場内へお邪魔します。

熟練の職人さんたちが慣れた手つきで作業中。ここではなんと、毎日約1000本のカツオを捌(さば)くのだそう。

まずは解凍したカツオの頭・内臓をとりのぞき、鰹節のサイズに切り分けます。


炊納屋(たきなや)でじっくりと燻し水分を抜きます 炊納屋(たきなや)でじっくりと燻し水分を抜きます

次におろした身を大きな釜で煮熟(じゃじゅく)したら、骨をとり形を整え、いよいよ焙乾(ばいかん)の工程です。

焙乾のための炊納屋(たきなや)内には、樫(かし)の木を燃やした煙がもうもうと立ち上っています。ここで1時間30分〜2時間ほど燻(いぶ)していきます。

炊納屋の戸が開くと、燻製のようなよい香りが漂ってきます。


カビ付けと天日干しを4回繰り返します カビ付けと天日干しを4回繰り返します

その後は表面に出たタール分や脂肪分を小刀で削りとる作業。

こうしてできあがった「裸節(はだかぶし)」と呼ばれる状態から、カビ付けと天日干しを繰り返したものが「枯節」、カビ付けと天日干しを3〜4回繰り返したものが「本枯節」になります。

じつは、スーパーなどでよく販売されている「花かつお」とは、カビ付け前の「裸節」を削ったものなのだそうです。


大丸鰹節社長の浜村昭仁 (はまむらあきと)さん 大丸鰹節社長の浜村昭仁 (はまむらあきと)さん

指宿山川では最終工程のカビ付けと天日干しを4回繰り返し、約6カ月かけて「本枯節」が作られています。

この工程で、じっくりと鰹節の水分を抜き、まるで水分が枯れたようになることから「本枯節」の通称で呼ばれています。

長い時間と手間をかけてできあがった「本枯節」は鰹節の最高級品で、京都の料亭などに出荷されているのだそうです。

「本枯節」でひいただしはすっきりと上品な味わい。ぜひ試してみてほしい!

骨一本まで余さず利用する鰹節作りはSDGsの先駆け


完成した鰹節を割ると中身はまるでルビーのよう 完成した鰹節を割ると中身はまるでルビーのよう

「天日干しの工程で水分は大敵。雨粒が一滴落ちただけでも鰹節はダメになってしまいます。だから毎日天気予報とにらめっこですよ」と教えてくれたのは、大丸鰹節の社長・浜村昭仁さん。

完成した鰹節を割って断面を見せてもらうと、水分がすっかり抜け美しいルビー色になっています。

しかも、伝統的な鰹節作りではとりのぞいたカツオの頭や内臓や骨も捨てずに、粉砕して飼料の原料にし、再利用されるのだそうです。工場から出た排水は、きれいにしてから海へ戻します。鰹節作りはSDGsが提唱されるずっと前からSDGsだったんですね。


削りたての本枯節はふわふわ 削りたての本枯節はふわふわ

本枯節で作った茶節 本枯節で作った茶節

鰹節がこれほどに大変な手間をかけて作られていることを知ると、だしの一滴まで飲み干したくなりますね。ツアーの最後は売店に立ち寄りますので、指宿の鰹節・本枯節をおみやげにどうぞ。

削りたての本枯節と麦味噌を湯で溶いて作る「茶節」はご自宅でも簡単に作れる郷土食です。ぜひ味わってみてください。


鰹節工場見学と茶節体験

問い合わせ先 0993-23-8800(NPO法人 指宿観光&体験の会)
交通アクセス 集合場所の指宿観光体験の会へは、指宿枕崎線指宿駅から 徒歩約2分(指宿観光体験の会から体験場所の山川水産加工業協同組合への送迎あり。現地直接集合も可能)
値段 2200円
URL https://www.ibusukikankoutaiken.com

この記事を書いた人

吉野りり花

鹿児島県出身。指宿育ち。日本の郷土食や食文化、食の民俗を取材する旅エッセイスト。著書に『日本まじない食図鑑 お守りを食べ、縁起を味わう』(青弓社)、『ニッポン神様ごはん 全国の神饌と信仰を訪ねて』(青弓社)がある。

https://lyricayoshino.com 連載公開中▸▸ 知る・作る郷土料理

  • 記事中の情報は2025年1月時点のものです。
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