500系新幹線が大好きな瀧野由美子さんが語る「魅力」とは
1975年3月10日に全線開業した山陽新幹線は、2025年で50周年! 瀧野由美子さんに500系新幹線・山陽新幹線の魅力を語っていただきました。また、時刻表編集システム体験で誕生した、ここでしか見ることのできない瀧野さんオリジナル列車時刻は必見です。
『コンパス時刻表』×トレたび連動企画です。
小学生姉妹だけで乗った新幹線の旅
俳優として幅広く活躍する瀧野さんは、山陽新幹線が走る山口県出身。ラジオの鉄道番組でレギュラーを務めるなど、レールファンとしても知られています。
「アイドルグループ在籍中は、半年に100回くらい新幹線に乗車していました。グループ卒業以降は、乗車回数は減ったのですが、プライベートで乗車する機会が増えたと思います」
最近も北陸新幹線の金沢~敦賀間に乗ったり、東武鉄道の特急〔スペーシアX〕で旅をしたり、鉄道を楽しむ瀧野さん。仕事でも西九州新幹線や冬の秋田内陸縦貫鉄道に乗車したそうです。
そんな瀧野さんが鉄道を大好きになったきっかけは、生まれ育った環境にありました。
「父が大の鉄道好きで、子供の頃からいつも身近に鉄道がありました。家族旅行で乗ることも多かったですし、鉄道車両を製造する日立製作所の一般公開に出かけたこともあります。祖父は昔、国鉄職員だったそうで、そんな家庭に育ったためか、小学生になる頃には鉄道が好きになっていました」
家族だけでなく、住んでいた地域も瀧野さんの「新幹線愛」を育みます。
「通っていた小学校の教室から、背伸びをすれば遠くに山陽新幹線が見えたんです。同級生からの誕生日プレゼントも、新幹線の図鑑でした」
幼い頃から鉄道、とりわけ新幹線に親しんでいた瀧野さんには、忘れられない思い出があります。それは小学2年生の時に、2歳年上のお姉さんと二人だけで新幹線に乗ったこと。
「香川県の祖母の家へ行ったんです。当時は横浜に住んでいて、新横浜駅から新幹線に乗って、岡山駅で快速〔マリンライナー〕に乗り換えました。特に思い出深いのが、車内販売です。小さい頃からずっと車内販売に憧れていたのですが、この時初めて自分で車内販売のお菓子を買ったんです。岡山駅の乗り換えも姉とがんばって、ドキドキ、ワクワクの旅でした」
瀧野さんのお姉さんは今でも旅先で珍しい列車を見かけると、写真つきで報告してくれるそう
深夜の広島で待ってくれていた500系新幹線
2017(平成29)年、アイドルグループのメンバーとしてデビューした瀧野さんは、山陽新幹線に頻繁に乗車するようになります。多忙な生活を送るなか、新幹線での移動はゆっくり過ごせる貴重な時間でした。
「すごいスピードで県境をどんどん越えていくのが何回見ても面白くて、いつも車窓風景をぼーっと見ています。以前住んでいた地域を通る時は、通っていた小学校が見えないか、いつも探しちゃいますね。子供の頃、父や弟と新幹線を見に来た場所も、つい見てしまいます。それから、東京などの仕事先から戻ってきた時は、広島駅の手前でマツダスタジアムが見えると『広島に帰ってきたなぁ』って実感します」
瀧野さんは、プロ野球・広島東洋カープの大ファンでもあります。貨物駅の跡地に建設されたマツダスタジアム(MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島)は、新幹線の車内からグラウンドが見えることが特徴のひとつ。
「新幹線から試合をしているのが見えるとワクワクします。新幹線から見えるところに大きなLEDの掲示板があって、試合中は経過が表示されているんです。『あ、勝ってるな』『引き分けてるな』って思いながら見ていました。逆にスタジアムから、ドクターイエローを見たこともあります!」
そんな瀧野さんがいちばん好きだという車両は、山陽新幹線で300km/h運転を実現した500系新幹線です。
「私、500系と同い年なんです。いつもそばにいる存在で、物心ついた時には好きになっていました。あの格好いいフォルムに一目ぼれしたんだと思います。車体の断面が丸くなっていて、他の車両とは違う、特別な感じがするところが好きなんです」
列車を選べる時には、500系を選んで乗車することも多い(瀧野さん提供)
瀧野さんがデビューした頃、500系はすでに16両編成の〔のぞみ〕運用から引退し、8両編成の〔こだま〕用となっていました。仕事で利用する列車は主に別の車両でしたが、500系への思いは変わらなかったそうです。
「今はダイヤが変わってしまいましたが、以前は東京駅から最終の〔のぞみ〕で広島に帰ってくると、向かいのホームに500系がとまっていたんです。車内灯も消えていましたけど、私の帰りを待っていてくれたみたいで、見るたびにうれしかったですね」
深夜に帰ってくる瀧野さんを迎えてくれたのは、翌朝6時05分に広島駅を発車する博多行き〔こだま775号〕です。2022年には700系に変わってしまいましたが、毎晩広島駅で滞泊し、早朝の出発に備えていました。
500系はピンクも似合っちゃうんだ!
500系といえば、忘れられないのがアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』とコラボした「500 TYPE EVA」と、サンリオとのコラボで今も人気の「ハローキティ新幹線」です。
「もちろん、どちらも乗りました。『500 TYPE EVA』はとにかく格好よかったですし、『ハローキティ新幹線』はとってもかわいくて、500系はピンク色も似合っちゃうんだ!ってびっくりしました。沿線各県オリジナルのハローキティがラッピングされていて、私の出身である山口県はフグを持ったハローキティなんです。どれもかわいいから、いっぱい写真を撮っちゃいました」
乗車時、老若男女から注目を浴びる様子に驚いたという「ハローキティ新幹線」(瀧野さん提供)© 2025 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. L655566
2024年、神戸駅などで駅弁を販売している淡路屋が、山陽新幹線全線開業50周年を記念して「500系ひっぱりだこ飯」を発売した時も、もちろんゲットしたそうです。
「タコや穴子が入っていて大好きな駅弁です。『500系ひっぱりだこ飯』では、器のつぼも500系のボディを再現したデザインになっていて、大切に持ち帰りました。実は、新神戸駅で最初に探した時は売り切れだったのですが、次の日にやっと買えたんです」
やっと手に入れた「500系ひっぱりだこ飯」と(瀧野さん提供)
幼なじみの500系と新大阪~博多間を旅したい
瀧野さんが愛してやまない500系ですが、2027年をめどに引退予定。いつかはその時が来るとわかっていたものの、発表された時はやはり寂しさを感じたそうです。
「いつかは引退する時が来るとはわかっていましたけど、やっぱり寂しいですね。私にとって500系は、人生を一緒に走ってきてくれた『幼なじみ』なんです。デビュー当時は世界最速だったけど、今は〔こだま〕としてのんびり走っていて、どちらの姿も格好いいなって思います。私に財力があったら、車両を買い取ってそこで暮らしたいくらいです。車内のレイアウトは変えたくないので、床で寝起きします(笑)。引退までに、1回でも多く乗りたいです。一度、新大阪~博多間を500系でゆっくり旅したいですね」
山口県の自慢の列車〔SLやまぐち号〕
500系への愛が止まらない瀧野さんですが、新幹線以外にも思い入れのある列車があります。中でも好きなのが、ふるさとである山口県を代表する観光列車の快速〔SLやまぐち号〕です。
家族で何度も乗車した〔SLやまぐち号〕(瀧野さん提供)
「山口県の自慢は何ですか、と聞かれたら、迷わず〔SLやまぐち号〕と答えます。初めて乗ったのは小学生の時。展望車に出たら煙やすすがすごくて、『ああ、SLに乗っているんだ』って感動しました」
瀧野さんの〔SLやまぐち号〕に対する愛情は、単にSLのかっこよさだけに留まりません。
「SLを走らせるのって、年々難しくなっていると思うんです。車両部品の手配や、メンテナンスも大変ですから……。〔SLやまぐち号〕も大きなメンテナンスを経て、また復活してくれたのはすごくうれしかったです。昔の様子を再現した35系客車を新しく作ったというのも、すごいですよね。SLがお休みしてディーゼル機関車が牽引していた時にも乗りました」
瀧野さんは、新幹線と鉄道の旅を心から楽しむとともに、時刻表の愛読者でもあります。仕事で移動するときは、スマートフォンで時刻を調べることもありますが、プライベートで旅をするときは今も紙の時刻表を愛用しているそうです。
「子供の頃は、父と列車を見に行った時に時刻表を見て列車の通過時刻を確認していたので、教わらなくても自然に引き方を覚えました。紙の時刻表は前後の列車を含めて一覧できるので、列車を自由に選びたい時などは、時刻表とにらめっこしてプランを作ります。時刻表を見て旅をすれば、本当に自由で一生の思い出になる自分だけの旅ができると思うんです。ぜひ多くの方に、時刻表を使って自分だけの旅を楽しんでもらえたらいいなと思います」
瀧野由美子さんが時刻表編集システムを体験!
オリジナル新幹線時刻を創作!
普段から時刻表を愛読しているという瀧野さん。インタビュー終了後、『JR時刻表』などの制作に使用されている編集システムを使用して、時刻表制作を体験していただきました。編集者歴約25年の時刻表編集部 鈴木義典が講師を務めます。
鈴木「では、瀧野さんには東海道・山陽新幹線にお好きな列車を作っていただきましょう」
画面には、架空の〔のぞみ000〕号東京5時発広島行きの時刻が用意されています。
鈴木「列車名を自分のお名前に変えたり、時刻を入力したり、自由に列車を作れますよ」
瀧野さん「すごい……。列車名も自在に変えられるんですね」
しばらく興味深そうに画面を見ていた瀧野さんがキーボードに向かい、まずは列車名として〔ゆみこ〕と入力。
瀧野さん「やっぱり、500系で運転したいです」
“500系と幼なじみ”である瀧野さんの要望で、〔ゆみこ〕の暫定終着駅である広島駅の下に「500系」のマークが置かれました。500系で運転される新幹線〔ゆみこ〕の誕生です。
緊張の面持ちで列車名を打ち込む瀧野さん
瀧野さんが生み出した驚きの列車とは?
いよいよ、時刻の設定を行います。まずは東京駅の発車時刻。
瀧野さん「お昼の12時発にします。私、朝早いのが苦手なので(笑)」
鈴木「では、品川駅の時刻は……」
瀧野さん「通過にもできるんですか?」
鈴木「もちろんです。自由に設定できますよ」
瀧野さん「じゃあ、通過で。新横浜も通過します!」
鈴木「では、名古屋は」
瀧野さん「通過でお願いします!」
鈴木「京都は」
瀧野さん「通過します!!」
瀧野さんプロデュースの新幹線〔ゆみこ〕は、〔のぞみ〕停車駅をことごとく通過。広島までノンストップ?と思いきや、広島駅も通過します。
「じゃあ、新岩国駅も通過でいいですか?」と編集部・鈴木が促すと、瀧野さんが言いました。
瀧野さん「新岩国は、停車します。山口県なので!」
なんと新幹線〔ゆみこ〕は、東京駅から瀧野さんの出身地である山口県までノンストップの列車だったのです。東京〜新岩国間の通常の所要時間は、広島駅での乗り換えを含めて4時間あまり。
瀧野さん「せっかくノンストップなので、もっと早くしてもいいですか。所要時間は3時間くらいかな……。新岩国駅は15時発にします!」
ここから新幹線〔ゆみこ〕は各駅に停車します。瀧野さんは、実際の所要時間を時刻表で調べて、徳山15時12分発、新山口15時27分発、厚狭15時37分発と設定しました。
夢が詰まった新幹線〔ゆみこ924号〕、ついに誕生!
瀧野さん「新下関は15時49分着。新下関駅を終点にします!」
新下関駅の時刻の下に、この駅止まりを示す二重線(通称:ドンマーク)を置いて、オリジナル列車が完成しました。列車の号数は、瀧野さんの誕生日である9月24日にちなんで「924号」に。運転日は「12月22日」としました。これは、瀧野さんの愛犬・あんこちゃんの誕生日です。
最後に列車の記事として「家族のみ乗車できます」と記載しましたが、ここで少し考えた瀧野さんは「家族のみ乗車可」と書き直しました。
瀧野さん「このほうが、時刻表っぽいと思いませんか?」
こうして、東京と山口県の各駅を直結し、東京〜新下関間を3時間49分で結ぶスペシャルな500系新幹線〔ゆみこ924号〕が誕生しました。
瀧野さん「山口県の5つの駅は全部停車する、“みんな山口においでませ”列車です。普段は〔こだま〕しか停車しない厚狭駅にもとまっちゃうんです!」
完成した時刻ページは、プリントアウトして記念にお持ち帰りいただくことになりました。
瀧野さん「すごく楽しかったです! 想像でどんな列車も作れて、現実にはありえない時刻にもできるなんて、可能性が無限大だなって思いました」
最後は時刻表編集部を表敬訪問
時刻編集体験のあとは、『JR時刻表』のバックナンバーから瀧野さんが生まれた1997年の9月号と、在籍したグループが誕生した2017年の3月号を読んでいただきました。瀧野さんが特に注目したのは、広島駅の構内図(主要駅のご案内)。
「(1997年3月号を手にして)今は再開発の工事が進んでいてどんどん変わっているので、昔の広島駅がとっても懐かしいです。新山口駅も、昔は小郡(おごおり)駅でしたね。厚狭駅もなかったんだなあ……」
鉄道の歴史を噛みしめるように、1ページずつ読み進める
いつまでも時刻表を見ていたそうな瀧野さんを促し、最後は『JR時刻表』や『コンパス時刻表』を制作している編集部を訪問しました。サイリウム振る編集部員が、総出で瀧野さんを大歓迎。
「時刻表編集部には、女性の方も大勢いらっしゃるんですね。皆さんすてきな方ばかりで、貴重な体験ができました!」
時刻表愛読者の瀧野さんは、時刻表編集を体験して、ますます時刻表への愛も深まったようでした。
500系新幹線・山陽新幹線へ、瀧野さんが送ったメッセージは「感謝」
瀧野 由美子(たきの ゆみこ)
著者紹介
時刻表を手軽にアプリでも!『デジタル時刻表』
コンパス時刻表2025年3月号
- ※取材・文=栗原 景
- ※撮影=交通新聞クリエイト(木田慎一)
- ※掲載されているデータは2025年2月1日現在のものです。