東京と真逆の「ふるさとの風景」をイメージ
藁葺き屋根の民家を田んぼや畑が囲み、遠くには山々が連なるのどかな里山――。そんな日本の「ふるさと」の風景を具現化したコンセプトの列車が「おいこっと」です。
北陸新幹線の金沢延伸に合わせて、長野・新潟県境の山々の中を走る飯山線で2015年に運行を開始。2025年で10周年を迎えました。少し風変わりな列車名は、東京の真逆にあるという意味を込めて「TOKYO」を反対から読んだもの。ひらがな表記が親しみやすさを感じさせます。
「おいこっと」はどんな列車?
古民家をイメージした車両
1号車
2号車
車両はもともと秋田エリアの特急用として製造されたキハ110系を改造したもの。外観はアイボリーとえんじ色を基本に、古民家をイメージさせるデザインになっています。長野寄りの1号車はアイボリー基調、十日町よりの2号車はえんじ色が基調と、1・2号車で異なる塗装パターン。藁葺き屋根の民家の襖や障子をイメージした窓周りのデザインは、唱歌「故郷(ふるさと)」の歌詞に登場する「兎」や「小鮒」、「友がき」などをアイコン化し、五線譜をモチーフにした格子線と組み合わせています。
どこか懐かしい雰囲気の車内
木目調の車内には和柄モケットのシートや障子をイメージしたロールカーテンを備え、夏休みに遊びに行っていた「田舎のおばあちゃんの家」のような、どこか懐かしくほっとする雰囲気が漂っています。
座席は1両ごとに、2人掛けのボックスシートが5か所、4人掛けのボックスシートが4か所、2人掛けのロングシートが6か所と、バラエティ豊か。それぞれ、肘掛けには収納式のテーブルが備わっています。
「まんが日本昔ばなし」でおなじみの声
車内のナレーションは、沿線の長野県下高井郡(現・木島平村)出身の声優・常田富士男さんが担当しています。アニメ『まんが日本昔ばなし』の語り手として知られる常田さんの声は、「おいこっと」の懐かしい雰囲気にぴったりです。
「おいこっと」はこう楽しむ!
飯山駅の産直市「おいこっと まるしぇ」
途中の飯山駅では「おいこっと」の運行日に合わせて、地元の特産品や郷土食を取り揃えた産直市「おいこっと まるしぇ」を開催。下り(十日町行き)列車では18分、上り(長野行き)列車では37分の停車時間があるので、ゆっくり買い物を楽しむことができます。
「おいこっと あてんだんと」の新制服
運行開始10周年を節目に、車内で旅のお手伝いをする「おいこっと あてんだんと」の制服がリニューアルされました。これまでは「もんぺ」風の衣装でしたが、新たな制服のデザインは十日町市在住のデザイナー・杉浦ミツヨシさんが担当。襟と袖口に新潟県十日町市の着物生地を使ったクレリックシャツに、着物生地で作られたネクタイやポシェットを取り入れ、現代的ながらも伝統文化を感じさせる制服になっています。
車内で楽しむ沿線の食
おいこっとふるさと御膳(ごはんあり)
「おいこっと」に乗るなら、車内で楽しめるお弁当やスイーツの予約を忘れずに。午前中に運転する下り列車では、飯山線沿線の郷土料理を盛り込んだ「走る農家レストラン おいこっとふるさと御膳(ごはんあり)」と「走る農家レストラン おいこっといいやませんセット(ごはんなし)」を用意。どちらも長野県飯山市の割烹料理店「つるのゆ」が手掛け、飯山線沿線の郷土料理が詰め込まれた盛りだくさんの内容です。
奥信濃BUNZO_生チョコ4種アソートセット
また、上り列車では飯山市のチョコレートショップ「奥信濃BUNZO」で人気の生チョコ4種(ミルク・いちご・抹茶・ビター)の食べ比べセットが用意されています。
- ※お弁当は乗車日の5日前、生チョコセットは8日前までに、「JRE MALLオーダー」での予約が必要です。
列車情報
運転日 | 7月5・6・12・13・19〜21・26・27日、8月2・3・9〜17・23・24・30・31日、9月6・7・13〜15・20〜23・27・28日 |
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運転区間 | 長野〜十日町間(しなの鉄道北しなの線、飯山線経由) |
運転時刻 |
長野駅9:15発→十日町駅11:42着 十日町駅13:05発→長野駅16:02着 |
著者紹介
- ※文/佐藤正晃
- ※写真/交通新聞クリエイト
- ※掲載されているデータは2025年6月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください