トレたび JRグループ協力

2009.10.01鉄道鉄道遺産を訪ねて―トワイライトエクスプレスや北斗星の食堂車 当時のメニュー厨房も

未来に伝えたい鉄道遺産

1872(明治5)年の新橋駅~横浜駅間開業以降、全国にその網を広げ続けてきたに日本の鉄道。厳しい地理的条件を克服するために、さまざまな技術が施された場所も少なくありません。できあがった当時の社会や先人たちの苦労を、無言で語っているかのような鉄道遺産。そんな、未来にも伝えていきたい名建築を訪ねる旅に出てみませんか。

走るレストラン列車「食堂車&ビュッフェ」


1899年に営業を開始し、日本初の食堂車といわれる山陽鉄道の「一等寝台食堂合造車」食堂内部(写真協力=鉄道博物館)

現在、日本の食堂車は「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」の3列車でしか運転されていませんが、昭和の時代を中心に、かつては特急列車、新幹線など多くの優等列車に「食堂車」が連結されていました。


0系新幹線の食堂車風景。東京〜大阪などの出張はまず食堂車でくつろぐのが定番だった

食堂車は旅のレストラン。コックさんが揺れる厨房で腕を奮い、ハンバーグやエビフライなど美味しい料理で旅人たちを満足させました。


シチュービーフ定食の文字も見られる。ハンバーグなどはオーブンでしっかり焼き込んでいた

食堂車の機能を簡単にし、立席カウンターを設け、コーヒースタンド的に気軽に利用できるようにした軽食堂が「ビュフェ」です。急行列車などに多く連結され、寿司やそばなどが人気メニュー。新幹線でも大いに活躍しました。


新大阪〜博多間に走った「ウエストひかり」には拡張された広いビュフェがあり人気だった

しかし、人手不足や外食文化、旅行習慣の変化、列車の速達化、ビジネス化など様々な要素が食堂車、ビュフェを廃止させ、日本では風前の灯火となってしまいました。今回は、数少ない“走るレストラン”を紹介します。

今なお残る食堂車とビュッフェ

食堂車「グランシャリオ」(寝台特急「北斗星」)

定期列車で奮闘する唯一の食堂車


食堂車ならではの夜景を眺めての食事は味も格別。自然と笑みがこぼれてくる

上野と札幌を結ぶ寝台特急「北斗星」に連結された食堂車です。現在、定期列車で食堂車を営業している列車は「北斗星」の1往復のみとなりました。

「グランシャリオ」は1988(昭和63)年の寝台特急「北斗星」誕生と共に、豪華フランス料理を予約制で食べられる食堂車としてデビュー。それは現在も変わっていません。下り1回、上り列車2回のディナータイム(予約制)では、肉料理、魚料理を中心としたフランス料理のフルコース、または和食の懐石御膳を楽しむことができます。

ディナータイム終了後のパブタイムは予約無しで誰もが利用でき、ハンバーグやビーフシチューなど往年の食堂車を彷彿とさせる洋食メニューもあるほか、コックさんの個性が表れるピザなどの軽食、ビールなどのアルコールやソフトドリンクも各種揃います。パブタイムは23時までとたっぷりの営業なので、温かい食事やアルコールなどとともに、夜景を眺めながら思う存分に走るレストランを満喫することができます。


モーニングタイムのスクランブルエッグ、魚料理を中心としたメニュー。食後にはコーヒーや紅茶が付く

翌朝のモーニングタイムも予約無しで利用ができ、スクランブルエッグを中心とした朝食が用意されています。卵料理もコックさんの腕次第で味付けが変わるメニューであり、列車食堂の醍醐味を堪能できます。ともあれ、定期列車で予約無しで昔ながらに食事ができる食堂車は「グランシャリオ」のパブタイムとモーニングタイムだけなのです。

食堂車「ダイナープレヤデス」(寝台特急「トワイライトエクスプレス」)

豪華コースディナーで圧倒する洗練メニュー


テーブルクロスが掛けられた室内。日本最長距離を走行する列車にふさわしい豪華な造りだ

大阪〜札幌間を走破する豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の食堂車です。この列車は朝、昼、晩の3食を列車の中で楽しむことができる国内唯一の列車です(下り8001列車のみ)。

「ダイナープレヤデス」が誇るのは、何といってもその豪華な食材とメニューです。“乗務員になる前はフランス料理店をやっていた”一流のシェフたちが腕を奮って料理を提供します。

各列車ともに2回行なわれるディナータイム(要予約)は、シェフの技が活かされたフランス料理のフルコースです。季節感たっぷりの車窓同様、メニューも春夏秋冬、年4回変わります。味は最高級。至福のひと時が待ち受けています。


優雅なディナータイム。贅を尽くしたフランス料理のコースを車中で堪能できる

下り列車のランチメニューではハンバーグ、ビーフカレー、オムライスなど町の洋食屋さんのテイストが味わえます。しかも予約無しで価格もリーズナブル。往年の食堂車の雰囲気が甦ります。

流れ行く車窓を見ながら、ゆったり味わう食事は人々を、楽しく幸福な気分にさせてくれます。それが食堂車の最大の魅力なのです。

ディナータイム終了後のパブタイムも、オードブルとアルコールを中心に予約無しで誰もが利用できます。モーニングタイムは美味しい卵料理が中心ですが、事前に予約が必要です。

走るレストランの「ダイナープレヤデス」も昭和40年代の特急食堂車を改造しており、車齢がかなり高くなっています。今後の末永い活躍、あるいは新しく未来を拓く次期食堂車の誕生を大いに期待してやみません。

ビュッフェ(特急「ゆふいんの森」)

乗務員の笑顔も素敵な軽食堂

時刻表の標記に、コーヒーカップを表した「ビュフェ」のマークが今でも輝いているのが特急「ゆふいんの森」です。(当該列車での名称はフランス語読みBuffetに従い「ビュッフェ」と呼んでいます)。鹿児島本線の博多駅と久大本線の由布院・大分駅を結ぶ同列車は、JR線の定期列車では唯一のビュフェを営業した列車です。


お弁当や飲み物、スイーツをはじめ、ゆふいんの森号オリジナルグッズまで揃うビュフェ

ビュフェは小さなカウンターテーブルのある供食設備で、座席車1両の約半分を軽食堂にした造りになっています。特急「ゆふいんの森」のビュフェでは、美味しそうなひきたてのコーヒーの香りが漂い、客室乗務員の方々が笑顔で迎えてくれます。

由布院の食材をふんだんに使用した名物弁当「ゆふ味弁当」をはじめとしたオリジナルメニュー、生ハムチーズ、自家製生ジュースやグラスワインなど飲み物やおつまみなどが豊富に揃っています。


客室乗務員がいれてくれるコーヒーはひきたての香ばしいコーヒー豆の香りがして格別

観光名所も多く、車窓も美しい久大本線。客室乗務員の方々も親切に車窓ガイドをしてくれるので、食事もいっそう美味しいものとなります。このような人々とのふれあいや和みがあるのは、ビュフェならではと言えましょう。

特急「ゆふいんの森」は列車により車両のタイプが異なり、特急「ゆふいんの森」1・5・2・6号はビュフェスペースが広く大型窓の新型車。「ゆふいんの森」3・4号はビュフェスペースは小さいが隣接の3号車のサロンスペースでもゆったり食事ができる従来車になります。共に、車両は天然木を使用し、広い窓で眺望に配慮した観光用の展望車です。


特急「ゆふいんの森」についてもっとくわしく

ゆふいんの森―木の温もりあふれる71系・72系が活躍。温泉地への旅に必ず乗りたい特急列車(THE列車)

  • 文:斉木実
  • 写真協力:JR九州、結解喜幸、加藤昌人、浅水浩二
  • 掲載されているデータは2009年10月現在の情報です。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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