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2026.02.03旅行旧国鉄宮原線跡や南阿蘇鉄道も! 熊本の阿蘇地域の鉄道スポット・おすすめ観光地をご紹介【体験レポート】

鉄道ファン必見! ぜひ訪れたい熊本県の阿蘇地域の鉄道スポット

熊本県の阿蘇といえば、世界有数のカルデラとその周辺からなる地域を指し、阿蘇山・草千里の雄大な自然、あか牛といった絶品グルメが有名で、良質な温泉街も点在しています。2009年には日本ジオパーク、2014年には世界ジオパークに認定され、日本を代表する大自然エリアの一つですが、実はここ、鉄道ファンにとっても注目の場所なのはご存じでしょうか。旧国鉄時代から残る遺構や、今でも人気のローカル線と、鉄道の魅力が豊富なエリアでもあるのです。

今回は新旧の鉄道を辿るため、編集員が実際に現地へ。おすすめの観光地も訪れつつ、阿蘇地域の鉄道の軌跡をご紹介します。

「旧国鉄宮原(みやのはる)線遊歩道」でかつての鉄道と自然を感じる

旧国鉄宮原線とは、大分県九重町と熊本県小国町を連絡していた路線。1954年に開通しましたが、国鉄再建法によって日本全国の赤字路線廃止が進む中、1984年、およそ30年間という短い期間で廃止となってしまいました。

現在では線路もほとんどがなくなってしまいましたが、アーチ橋やトンネルといった遺構は今でも残っており、在りし日の雰囲気を今に伝えています。

まずはこの旧国鉄宮原線遊歩道を歩きながら、宮原線の歴史を感じてみましょう。

JR阿蘇駅からスタート


JR阿蘇駅に到着!

豊肥本線のスイッチバックも体験しつつ、まずは阿蘇駅にやってきました。レトロな駅舎が特徴的で、すぐ隣には「道の駅 阿蘇」もあり、新鮮なお野菜や阿蘇ならではのお土産も購入することができるようになっています。ここ阿蘇駅を起点にレンタカー等で観光スポットを巡っていきます。

駅前には、人気マンガ『ONE PIECE』の「麦わらの一味」銅像の「ウソップ」にも出会えます。これは2016年4月に発生した熊本地震の復興に向けて、『ONE PIECE』と熊本県が連携した「ONE PIECE 熊本復興プロジェクト」の一環。熊本県庁プロムナードにいる主人公の「ルフィ」像をはじめ、熊本県内にある10体の像の一つです。


「麦わらの一味」銅像の一人、「ウソップ」がお出迎え ©尾田栄一郎/集英社

小国のシンボル「小国 ゆうステーション」と肥後小国駅跡


突然、目の前にミラーガラスの建物が

まずやってきたのは、小国町にある道の駅「小国 ゆうステーション」。
外観がミラーガラスで近未来的な雰囲気のある建物ですが、なんとこちらが道の駅。熊本出身の建築家・葉 祥栄(よう しょうえい)が設計を担当し、骨組みには地元の「小国杉」をおよそ2461本使用するなど、小国ならではの建物でもあります。

ここにきたのは、旧国鉄宮原線の肥後小国駅跡を見るためです。線路は実際に使用されていたものがしっかりと残され、当時の雰囲気を残すための駅名標も立てられています。この駅がある場所の地名「宮原」が宮原線の由来になりました。

ゆうステーションと一緒になった肥後小国駅跡は、今でもこの地域のシンボルになっています。


当時の線路が残る肥後小国駅跡

実際に使われていたであろう設備も

旧国鉄宮原線ウォークスタート!


特徴的なデザインの「木魂館」

ゆうステーションからさらに車でおよそ10分、やってきたのは旧国鉄宮原線遊歩道の入口近くにある「学びやの里」です。宿泊施設の「木魂館(もっこんかん)」をはじめ、お食事や温泉、キャンプも楽しむことができる施設になっています。ここから5分ほど歩くと、道路の横にひっそりとした小道が。これが旧国鉄宮原線遊歩道の入口です。


道路の脇にふと現れる旧国鉄宮原線遊歩道への入口

まず現れたのは大自然の中にまっすぐ通った道。ここがかつて宮原線が走っていた場所です。道の脇には桜や紅葉が道に沿って植えられており、四季折々の景色が楽しめます。道中には小国杉の林に囲まれているところもあり、栗の実が落ちていたり、動物がいた痕跡が残っていたりと、自然を間近に感じながらウォーキングを楽しめます。


かつて鉄道が走っていた道をどんどん進んでいく

最初の見どころは「北里トンネル」

見どころの一つが旧国鉄時代に実際に使われていたトンネル、通称「北里トンネル」です。中はとても暗いですが、照明を自由に付けられるスイッチが入口にあるのでご安心ください。


いざトンネルの中へ

中は鉄道が走っていた当時のまま残されていて、鉄道が通過する際に作業員が退避するためのスペースや蒸気機関車が走っていた時代についた煤の跡も残っていました。また、小国は阿蘇外輪山の上に位置しているので、冬には降雪が多い地域。その寒い気候ならではなのが、つららを落とすための道具をかけておくためのフック。

古くなったトンネル内には水が染み出しているところもありましたが、それがむしろ長い歴史を感じさせています。


天井に残っている煤の跡

ここにつららを落とすための道具がかかっていたそう

「幸野川橋梁」から田園風景を望む


田園風景の中にたたずむ幸野川橋梁

トンネルを抜けて林の中を少し歩くと、一気に視界が開けて、橋梁に差し掛かります。これが「幸野川橋梁」です。1939年に完成して、2004年には国指定の有形文化財にも指定されたこの橋は、芯に鉄ではなく竹を使用した、鉄筋ならぬ「竹筋橋」と言われているのも特徴の一つ。これは、この橋が造られた当時が戦時中で、鉄の確保がままならなかったという歴史に由来しています。そんな中でも橋を造り上げた、当時の技術者の矜持を今に伝える遺構でもあります。

橋の横にある小道から下に降りると、少し離れて橋の全景を眺めたり、橋の真下まで行くってつぶさに観察にしたりもできます。


橋の上から景色を一望

すぐ真下から橋を見ることができる

旧国鉄宮原線遊歩道は今回訪れたスポットも含めて、およそ4kmのウォーキングコースとして整備されています。鉄道遺構や自然の中をゆったりと歩きたい方にはおすすめのコースです。


旧国鉄宮原線ウォーキング

住所 熊本県阿蘇郡小国町大字宮原1754-17(道の駅 小国ゆうステーション)
問い合わせ先 0967-46-2113(小国町役場情報課)、0967-46-4440(ASOおぐに観光協会)
値段 旧国鉄宮原線は無料で自由に散策可能 ※ ガイドには料金がかかります。 詳細は「小国ガイドクラブ(電話:090-7399-4457)」までお問い合わせください。
URL https://ogunitown.info/tourism/62/

南阿蘇鉄道のトロッコ列車「ゆうすげ号」で阿蘇の大自然を体感

次は阿蘇の“新しい”鉄道スポット、「南阿蘇鉄道」です。

南阿蘇鉄道は1986年に開業した歴史がありますが、“新しさ”のポイントは2016年の熊本地震の影響で不通となっていたところ、車両や駅舎もリニューアルされながら、2023年7月に全線開通を果たした点。そんな南阿蘇鉄道の“新しさ”も感じながら、トロッコ列車「ゆうすげ号」に乗車してみます。

オシャレにリニューアルされた「高森駅」付近で街歩き


高森駅に到着!

まずやってきたのは高森駅。ここの駅舎はリニューアルされて2023年4月に新駅舎として運用が開始されたばかり。白を基調にしたオシャレな駅舎に芝生広場もあり、「とにかく広いプラットフォーム」になっています。

ここでは「麦わらの一味」銅像の一人、「フランキー」がお出迎え。運がよければ、2023年7月に運行開始した、同作のサウザンド・サニー号がモチーフの列車「サニー号トレイン」と並ぶ姿を見ることもできます。駅内には売店やラウンジの他、漫画家の色紙がずらりと並ぶ展示室も。実はここ高森は、公立高校としては全国唯一のマンガ学科がある高森高校もあり、マンガの街としても有名。高森駅がまるでその象徴のようになっています。


サニー号トレインとフランキーの2ショット ©尾田栄一郎/集英社

高森駅では、出発までの間の街歩きがおすすめです。地元で有名な「阿蘇マルキチ醤油」の本店や、約260年にわたり阿蘇で日本酒を作り続ける「れいざん酒造」と、街には見どころがたくさんあります。

トロッコ列車をモチーフにした解放感ある「トロッコトゥクトゥク」が期間限定で土・日曜・祝日に運行されていて、高森駅からぐるっと街を一周。道中の景色も楽しみながら街をまわることができました。


街中を走るトロッコトゥクトゥク

実際に乗ってみると解放的な乗り心地

鉄道工事に由来する「高森湧水トンネル公園」


高森湧水トンネル公園の入口

高森まできたらぜひ訪れたいのが「高森湧水トンネル公園」です。湧水が流れる広場の奥にあるトンネルですが、実はここも鉄道に関連するスポット。旧国鉄の鉄道工事でトンネルを掘削した際に、地下水源を切断し大量の出水に見舞われ、鉄道建設は中止に。その跡地にできたのがこの公園で、未成線の鉄道トンネルと湧水を活かした施設として、全国でも珍しい鉄道遺構の一つです。


中を進んでいくとライトアップされた空間が

中に入ってみるとここちよい暖かさに。トンネル内は一年を通して17度くらいになっており、夏は涼しく、冬は少し暖かく快適です。奥に進んでいくときれいにライトアップされた場所や、特殊ストロボを使って、流れる水が真珠のように丸くなって見える「ウォーターパール」と、飽きることなくトンネル探索を楽しめます。

七夕とクリスマスの時期になると、町内外の学生さんや事業所が出展したオブジェが並び、1番を決める投票も行われています。訪れた際はちょうどクリスマスツリーの装飾が始まった時期。トンネルの中に個性的なツリーが並ぶ姿は圧巻です。


水が特殊ストロボの効果で丸くなるウォーターパール

訪問したときにはクリスマスツリーがずらり


高森湧水トンネル公園

住所 〒869-1602 熊本県阿蘇郡高森町高森1034-2
問い合わせ先 0967-62-3060
時間 4~10月:9:00~18:00 、11~3月:9:00~17:00  ※入園は30分前まで。 ※イベント期間中は、閉園時間が変わります。
定休日 無休
交通アクセス JR・南阿蘇鉄道 高森駅から徒歩10分
値段 300円 、小学生:100円 、未就園児:無料
URL https://asotakamori-kanko.com/sightseeing/%E9%AB%98%E6%A3%AE%E6%B9%A7%E6%B0%B4%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E5%85%AC%E5%9C%92/

トロッコ列車「ゆうすげ号」にいざ乗車!

トロッコ列車「ゆうすげ号」の入線を見るために高森駅に戻ってきました。

トロッコ列車「ゆうすげ号」は1986年から運行を開始した、高森駅~立野駅を走る観光列車です。人気のポイントは、トロッコ列車ならではの開放感たっぷりの車窓から、雄大な阿蘇の山々、阿蘇ならではの水源を間近に見ることができる点。3月から11月の土曜日・日曜日・祝日や大型連休の際に1日2往復で運行されています。


現在の機関車は2007年に運転開始

車両は前後の機関車の間に3両のトロッコ車両がありますが、場合によっては、「サニー号トレイン」と連結して運行されることもあります。

魅力の1つは、移動中のおよそ55分の間、車掌さんがノンストップで沿線の魅力を紹介するガイド。高森駅を出発したとたんにスタートして、阿蘇の自然、歴史と、より阿蘇に詳しくなれる内容を次から次へと解説してくれます。


車掌さんのガイドにみんな注目

また、特に印象に残ったのは、地元の方々の温かいお出迎え。駅ごとに個性あふれる人のおもてなしがあり、トロッコ列車が通ると地元の人も足を止めて手を振ってくれます。まさに地元に愛される列車です。

クライマックスは白川第一橋梁からの絶景が広がります。真下には白川が流れ、渓谷の奥に阿蘇長陽大橋、新阿蘇大橋がかかっている景色は圧巻です。

川をよく見ると、熊本地震の影響で川にながされた鉄骨の残骸も見え、熊本地震の被害を物語っています。実はこの橋も甚大な被害を受けたところの一つ。2022年には新しい橋に建てかえられ、翌年にレール締結されて南阿蘇鉄道が全線開通した、まさに復興のシンボルともいえる存在です。そんな背景も知っていると、この景色も感慨深く感じました。


阿蘇長陽大橋、新阿蘇大橋と大自然の絶景


列車情報

運転日 2026年3月14日(土)〜2026年11月30日(月)までの土・日・祝日と3月20日(金)~4月5日(日)、4月29日(水)〜5月6日(水)、7月18日〜8月23日(日)、8月27日(木)〜8月30日(日)、9月の木・金曜
運転区間 立野駅~高森駅
運転時刻 高森駅発:9:40発~13:40発
立野駅発:11:30発~15:35発

阿蘇地域にはそのほかに魅力的なスポットも!

鉄道スポットの合間にちょっと寄り道した、おすすめの観光スポットもいくつかご紹介します。

北里柴三郎博士の生涯と業績を後世に伝える「北里柴三郎記念館」

北里トンネルがある場所の地名は、その名の通り北里。そこに住んでいる方も北里という苗字が多いそうなのですが、北里といえば、新1000円紙幣の顔にもなった北里柴三郎博士。その生家がある場所に建てられているのが、「北里柴三郎記念館」です。


涌蓋山をモチーフにしたドンネル館

ここにはいくつかの施設がありますが、まずは2023年に開館した「ドンネル館」。博士のニックネームでもあった「雷おやじ」のドイツ語に由来した名前のこの施設では、博士の生涯を動画で学べるシアターや展示があります。

そのほかにも、博士が地元の子どものために本を寄贈して作られた「北里文庫」、博士夫婦が植えた2本の小国杉と見どころはいくつかありますが、景色を楽しむなら「貴賓館」へ。博士が帰省した際の居宅または賓客をもてなすための邸宅として建てられた施設で、2階からは博士も愛した涌蓋山と里山の風景を一望できます。

博士のふるさとにある施設だからこそ、博士の人となり、生きた証を感じるスポットです。


貴賓館2階から見える涌蓋山と山々


北里柴三郎記念館

住所 熊本県阿蘇郡小国町北里3199
問い合わせ先 0967-46-5466
時間 9:30〜16:30(入場は16:00まで)
定休日 年中無休(年末年始除く)
交通アクセス ゆうステーションから車約9分
値段 800円 、小・中・高校生:400円 、小学生未満:無料
URL https://s-kitazato.jp/

地元の特産を田楽味噌で味わう「高森田楽」

阿蘇地域にはたくさんの絶品グルメがありますが、高森といえば「高森田楽」。地元の特産品のヤマメやつるの子芋などに田楽味噌を塗って炭火で焼く囲炉裏料理です。田楽を味わえるお店もいくつかありますが、今回は「高森田楽村」を訪れました。


古民家のような趣がある高森田楽村

古き良き建物の中に入ると、店内には囲炉裏がいくつも並び、お店の方が食材を順番に串に刺していました。今回いただいたのは「高森田楽定食」。豆腐・つるのこ芋・こんにゃく・芋たんぽ・季節野菜の5本の田楽とヤマメの塩焼きに加えて、高菜めし、だご汁と地元のグルメがまとめて味わえるセットです。


焼き上がりまでじっくり待機

まずお店の人が味噌を塗ったら、あとは自分好みに育てていきます。お店の方曰く、味噌が少し焦げたくらいが食べごろとのこと。少し甘めの味噌が、焼き加減によって変化して、とても香ばしい味わいに。素材ごとに変わる食感と味も楽しむことができました。

田楽以外にも阿蘇のあか牛や地鶏を使った料理もあるので、何度でも訪れたくなるお店です。


高森田楽村

住所 熊本県阿蘇郡高森町上色見814-2
問い合わせ先 0967-62-1327
時間 11:00~17:00(LO16時、以後要予約)
定休日 不定休
交通アクセス 南阿蘇鉄道 高森駅から車約10分
URL http://dengakumura.com/

地元の防災を支える「阿蘇立野ダム」


川の上流から水が流れ込んでいく

「ゆうすげ号」の車窓からも見えていた大きな施設。これは普段は水を貯めず、洪水時のみダムに水を貯める流水型のダム「阿蘇立野ダム」です。

阿蘇は世界最大級のカルデラで周囲を山々に囲まれていますが、唯一切れ間になっているのがここ立野。そのため、阿蘇のカルデラ内にある川の水のほとんどが集まり、大雨の際には水がすべてこの立野から熊本市内へ流れていくため、水害につながってしまうことも。それを防ぐ「洪水調節専用ダム」としてこの施設がつくられました。

流水型ダムとしては2025年時点で日本最大の規模を誇り、圧巻の大きさです。そのきれいなデザインも特徴で、「自然にとけ込んだシンプルな景観デザイン」として2025年のグッドデザイン賞にも選ばれています。


流水型ダムらしく水が流れていく様子も

運がよければトロッコ列車がすぐ間近に

認定ダムガイドが、立野ダムの仕組みと水防災・流域治水について解説するガイドツアーも用意されています。より深く阿蘇立野ダムについて知りたい方にはこちらもおすすめです。


阿蘇立野ダム

住所 熊本県阿蘇郡南阿蘇村立野921-5
問い合わせ先 0967-68-0404
交通アクセス JR・南阿蘇鉄道 立野駅から車約5分
URL https://www.qsr.mlit.go.jp/tateno/index.html

阿蘇地域の魅力を再発見する旅へ

この記事では「旧国鉄宮原線跡」や「南阿蘇鉄道」と、鉄道にまつわるスポットを中心にご紹介しました。

鉄道についてはもちろん、歴史や自然、グルメ、インフラと阿蘇についてより深く知ることができる機会が盛りだくさんで、とても充実した旅になりました。また、熊本地震を乗り越えてさらに新しくなっていく阿蘇の魅力は、ぜひ現地で味わってほしいです。

今回ご紹介できなかった魅力的な観光スポットもまだまだありますので、阿蘇山だけではない魅力を探しに、ぜひ阿蘇地域を訪れてみてください。

  • 文・写真/トレたび編集室
  • 掲載されているデータは2026年1月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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