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2024.04.15ジパング俱楽部年金月5万円でもOK! 紫苑さんに学ぶ、65歳からのプチプラひとり旅|解決! 60代からのお悩みごと

身の丈に合った金額で旅を楽しむには

物価が上がり続ける今日この頃。普段の生活で節約を意識しているけれど、たまには旅行に出かけたい! でも贅沢(ぜいたく)な旅はできない……とお悩みのあなた。 お金を理由に、旅を諦めてはいけません。 かぎられた資金のなかで、自分らしく旅を楽しむ方法はたくさんあります。

今回は、年金月5万円生活を基本にしながら、「予備費」をうまく使って旅を楽しんでいるブロガーの紫苑さんに旅のスタイルを聞いてみました。


教えてくれた人

紫苑さん

はじめまして、紫苑と申します。最初に自己紹介をさせてください。

フリーランスで仕事をしていたので、年金はわずか月5万円という生活です。68歳の時コロナが蔓延(まんえん)して仕事が激変したなかで節約生活を始めたら、書籍まで出していただきました。物価高と年金問題で節約志向が高まっていたためか、多くの方に読んでいただけました。

仕事と子育てで忙しかった時期を過ぎたと思えば、コロナ禍から節約生活と、旅行もままならない時期が続きましたが、京都に、富山にと、少ない年金と謝礼などを貯めてある「予備費」からやり繰りして、ささやかな旅に出ることができるようになりました。

予備費は、雑誌の取材謝礼や、生命保険の解約金などの臨時収入からなります。
節約生活を始める前に生命保険を解約、その時に300万円以上の返済がありました。愉しみはそれらから出しています。
節約アイデアの詳細は書籍に書いたので、ご興味のある方はご覧になっていただけるとうれしいです。
 

紫苑さんブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」

紫苑さん書籍『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』


1.自分なりの旅のスタイルを見つけるには?


新緑の季節、ひとり旅で伊豆へ 新緑の季節、ひとり旅で伊豆へ

自分なりの旅のスタイルを見つけるためには、まず旅の目的をはっきりさせることだと思います。日頃の家事から解放されたい、名所旧跡を訪ねたい、温泉でゆっくり過ごしたい~~。旅の目的はいろいろありますが、お金と時間を使うのですから、ここはじっくり考えたいものです。


その点ひとり旅は、ほかの人の目的、やりたいことに合わせる必要もないので、じっくり自分のしたい旅を考えることができます。

ジパング世代のひとり旅、じつは仲間がたくさんいる!

私が若かった1970~80年代は、女性のひとり旅は「危ない」「とんでもない」と言われたものです。

それでも、地方から上京した私は、盆暮れに帰郷する機会を使って「ひとり旅」を楽しんでいました。学生ですからお金はありません。安いきっぷを買い、鈍行列車に何時間も乗り続け、それでも寄り道しながら、あちこち回った記憶は今も鮮明に覚えています。日常から少し離れる旅は、過ごす時間に彩りを与え、日常に輝きを持たせてくれます。その彩りと輝きは、シニアになった今、より鮮明に蘇(よみがえ)ってくるようになりました。

70代になり、旅に出てみると、60代、70代とおぼしき方が多いのに気づきます。
前には目に入らなかった同年代に気づくようになったのでしょうか。えっ、こんなに?と驚くほどです。カフェや駅の待合室、ベンチでリュックを背負って地図とにらめっこしている姿を何度も見かけました。

2.「プチプラ旅」の5つの心得

  • プチプラ=フランス語の「プチ」と英語の「プライス」を合わせた造語。「プチプライス」の略称で、価格が安いことを表します。安くてかわいい、というニュアンスが含まれます。

シニア世代の旅は、日々の家事からの解放、また家では味わえないサービスを受ける気持ちよさを求めるため「豪華志向」が強いと言われています。

でも「お金を使わない旅」もまた楽しみのひとつだと私は考えるようになりました。私自身何度か「プチプラ旅」を体験して、その時は少し大変なのですが、後から思い出すとその「大変さ」こそが楽しみに変わっていたことに気づいたからです。

旅をお得に楽しむプチプラ旅では、すべてお任せの旅とは違い、事前の情報取集が大切です。大変だ、面倒臭いと言わず、ここは軽い脳トレのつもりでトライしてみてはいかがでしょうか。ここでは、大きく5つに分けてポイントを紹介します。

①連休、休日は避け平日の宿を予約

私のプチプラ旅の基本は、比較的宿の値段の安い平日にしています。

②自分で宿探し

2つ目のポイントは、自分で旅の計画を立てること。

まずは、パソコンで行きたい場所周辺の宿の「最安値」を検索します。
チェックインはもちろん平日、そして駅近、私の場合は朝食付きです。平日の宿泊料金が格段に安いのは周知の事実、観光地でさえ半額以下はたくさんあります。駅近のホテルといえばビジネスホテルですが、最近では施設も充実していて、レストランはもちろん温泉設備さえ備えているところもあります。

駅近にするのは、列車から降りて荷物を持ってうろうろするのを避けるためです。それに、駅から近いのは拠点として出かけるにも、帰るにも便利です。列車が来るまでの時間はホテルのカフェでゆっくりもできます。

③交通手段もお得に


ジパング倶楽部の割引は、最大3割引きになりますね。

たとえば目的地まではジパング割引を使って新幹線や特急を利用し、現地で自由に動き回る手段として、別のお得なきっぷを使うという手もあります。

予定さえ合えば、「青春18きっぷ」。

これはご存知の方も多いのですが、18歳限定というわけではありません。

決められた期間の購入・利用になりますが、全国のJRの普通・快速列車が乗車当日限り乗り放題、乗り降り自由です。5回1セットで1万2050円。新幹線、特急などは利用できません。別に乗車券が必要です。友人と一緒でもOK、ひとりなら5日間の利用ができ、5人で1日間使うこともできます。

さらに、各地の交通機関などが販売している観光地をお得に回れるエリア周遊バスを使えば、本当にお得に楽しめます。

ジパング倶楽部会員なら新幹線や特急も割引で購入できるので「青春18きっぷ」を使う機会は少ないと思いますが、たまには普通列車でのんびりと行く旅もいいものです。


④旅先の食事はできるだけ地元の人がよく行く食堂へ

旅先の食事は、宿泊した宿などに地元の人がよく行く食堂について聞いてみます。
すると、安くておいしいお店を教えてくれます。
高級レストランなどには行かないことが、私のプチプラ旅のルールです。

⑤おみやげはなるべく買わない

これは個人個人で行動が分かれると思いますが、私は基本的にはおみやげは買いません。
そうすることで、交際費を省いて、旅の予算を抑えることもできます。

着物に凝っていた時期には型染で知られた静岡市の芹沢銈介美術館に行き、名古屋、大阪、京都を回ったこともあります。その経験は「安く行けた」という以上に、自分が計画し、実行したという満足感のほうが大きかったものです。

途中で何度か特急や座席指定の列車に乗るためにきっぷを買ったので、予算をオーバーしたのですが、それもまたいい思い出です。「プチプラ」といっても徹底して「節約」する必要はなく、遊び心でやってみるのがおすすめです。

3. 紫苑さん流ひとり旅の楽しみ方

ひとり旅でもおしゃれを


着物を着て伊勢神宮へ 着物を着て伊勢神宮へ

京都や金沢、茨城県の結城市など着物に縁のある街には着物で訪ねるようにしています。それだけで、なぜか土地の人は余計に丁寧、親切に扱ってくれるように思います(笑)。

ひとり旅なのだから、何を着てもいいでしょ、というものでもなく、やはり少しでもおしゃれをするとテンションは上がります。
行った先に住んでいる知人に会うにも、ひとりご飯のときにも、ちょっとおしゃれをするだけでシャレたレストランにも堂々と入れますしね。何を着て行こうかと考えるのもまた旅の楽しみのひとつです。

着物で出かけた場合、宿泊先のホテルで翌日もう一度着るのは大変なので、私はそのまま宅配便で自宅に送ります。ホテルでは宅配用のボックスを用意しているところもあります。着物を宅配で送るついでに、その日買ったおみやげや下着なども梱包。持参した旅行鞄とそのまま送れば、次の日からは、身軽で、バッグ1つで事足ります。

着物以外でも、たとえば趣味のゴルフや釣りを旅先でしたい、読みかけの本を移動中に読みたい、などとお考えの方もいるかと思います。そうした場合にも、目的を果たした後は荷物を先に自宅へ帰宅させるのも、体に無理をさせないための一案です。

ほかに旅の持ち物として、カメラと紫外線対策グッズは必需品です。
日よけの帽子、日焼け止め、BBクリーム……これさえあれば、私にとってはひとまず安心です。


旅先で着た着物は自宅に送って身軽に 旅先で着た着物は自宅に送って身軽に

旅の必需品は帽子と日焼け止め、BBクリーム、 カメラ 旅の必需品は帽子と日焼け止め、BBクリーム、 カメラ

列車旅の楽しみ


列車旅は、乗ってぼんやりしているだけで至福の時間です。ぼんやりなんて家でもできるでしょ、と思うかもしれませんが、いやいや、家ではつい、あれもしなきゃ、これもしなきゃと、頭の中まで忙しい。ぼんやりすら思いのままになりません。

「ぼんやり」する場所として列車は最適です。揺れに身を任せながら、窓の外の風景を眺め、頭の中の浮かんでは消えるイメージをぼんやりやり過ごす。そのためには、できるだけ長い時間乗るに限ります。目的地に着くのが目的ではなく、乗ること自体を味わう、それはまさに旅がくれる贅沢で豊かな時間と空間です。

4.紫苑さんがこれから行きたい旅先


人生の最終コーナーを回った70代の私が目指す次の旅は、瀬戸内海の島で何日も過ごすことです。

こどもの頃親戚の家があった島によく行ったものです。その島でそれこそ何もせずぼんやり過ごしたい。センチメンタルジャーニーというより、タイムマシーンです。こども時代や若かった頃の自分に戻る?ためです。

50年、60年も経てば、そこはもう大きく様変わりしているでしょう。その様変わりした今の風景に、かつての風景を重ね合わせることで、過ぎた季節を強く感じることができるような気がします。

もうひとつはなるべく遠くの、これまで行ったことのない土地に行くこと。

長い時間列車に乗りうつらうつらして目覚めると、そこはまた別世界というわけです。そしてそこでやはり3、4日過ごし、周辺をぐるぐる回り、元の日常世界に戻る旅です。

5.旅を楽しみたいジパング世代へメッセージ


旅は帰る場所があるからこそ楽しい、とはよく耳にする言葉です。プチプラであろうとなかろうと、旅に出ること自体は贅沢な経験です。

日常に戻っても、それまでとは何かが少し違っている。そしてふとした折に旅の風景が脳裏に浮かび、一瞬その場所に連れていってくれます。その思いはきっと日々の糧になっています。

だから気負わず、気取らず、もっと気軽に旅に出かけましょう。

編集部からひと言

いかがでしたか。

自分が大切にしたいポイントを決めると、たとえ予算を抑えたとしても楽しく旅ができるということを紫苑さんが教えてくれました。
ひとり旅でも大好きな着物を着て、おしゃれをするという遊び心は私自身とても刺激になりました。

いつまでも自分らしく、旅を楽しみたいですね。