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2024.01.23ジパング俱楽部100年超の時を経て復活!鹿児島・薩摩切子の輝きと職人技に見惚れる|モデルコース

鹿児島県鹿児島市

経済産業省が指定する「伝統的工芸品」をはじめ、日本各地には今も手仕事でつくられている伝統工芸品があります。ここでは職人技を間近で見学したり体験したりできる、店や施設をめぐるモデルコースを紹介します。

海外の交易品を視野に入れ製造されたガラス工芸品「薩摩切子」。幕末の薩摩藩主・島津斉彬(なりあきら)が藩営工場でつくらせたのが始まりです。その後一度途絶えたものの、約110年の歳月を経てよみがえった薩摩切子の魅力に触れてみませんか。

  • トップ画像は、仙巌園の「切子カット体験」

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ジパング倶楽部割引きっぷ

「ジパング倶楽部」ならこれだけおトク!

博多駅~鹿児島中央駅の例)

博多駅→鹿児島中央駅=九州新幹線「さくら」で約1時間25分

通常=1万640円  3割引=7440円
3200円おトク!
  • 金額は一例です。前後の行程等により金額が異なる場合があります。
  • 通常期の普通車指定席利用の場合です。
  • 入会して最初のご利用から3回目までは運賃・料金は2割引、4回目からは3割引となります。


薩摩切子とは?

江戸時代、島津家二十八代当主・島津斉彬により誕生したガラス工芸品。薩英戦争や西南戦争などの戦禍が原因で、明治時代初期にその製造や技術が一度途絶えましたが、1985(昭和60)年、島津家が中心となった復元事業により復活を遂げました。


「猪口(大)」各2万8600円~ 「猪口(大)」各2万8600円~

薩摩切子の最大の特徴が「ぼかし」の意匠。透明ガラスの外側に厚みのある色ガラスを被せた2層構造で、表面の色ガラスをカットすることで色の濃淡を表現する「色被(いろき)せ」の技法が用いられています。

大小の伝統的なカット文様を組み合わせることで無限に生まれる、精巧かつ華麗な文様も魅力的。鹿児島県が指定する伝統的工芸品です。

九州新幹線鹿児島中央駅からスタート!


九州新幹線と鹿児島本線、日豊本線、指宿枕崎線の4路線が乗り入れる南九州の玄関口。山陽・九州新幹線の終着駅でもあります。

大型商業施設「さつまち鹿児島中央駅」や「アミュプラザ鹿児島」など駅ビルが併設。2023年4月には、駅直結の商業施設とオフィスの複合ビル「JR鹿児島中央ビル」が開業し、駅一帯はますます活気に溢れています。

アミュプラザ鹿児島の屋上にある直径約60メートル、最大高約91メートルの大観覧車は、駅のランドマーク的存在。高所からは鹿児島市街や桜島を眺望できます。


↓ 徒歩すぐの鹿児島中央駅前からカゴシマシティービュ(バス)約49分の仙巌園(磯庭園)前下車、徒歩約2分

バスの種類によって所要時間が異なります。お出かけの際はあらかじめご確認ください。
※鹿児島中央駅前から仙巌園前まで重久車庫行きほか鹿児島交通バスで約15分
※鹿児島中央駅前から仙巌園前まで楠田車庫行きほか南国交通バスで約18分
※鹿児島中央駅前から仙巌園前までまち巡りバス(土休日運転・当面の間運休中)で約34分



薩摩ガラス工芸

光の加減で表情が変わる重厚な輝きにうっとり


グラデーションが華やかな「二色衣(にしきえ)」 グラデーションが華やかな「二色衣(にしきえ)」

薩摩切子のギャラリーショップ「磯工芸館」には、酒器や花瓶、アクセサリーなど、隣接する工場でつくられた薩摩切子の商品が整然と並び、重厚な美しさに魅了されます。

江戸時代の姿を今に伝える復元シリーズは、主に紅・藍・緑・黄・金赤・島津紫の全6色。「二色被(にしょくぎ)せ」と呼ばれる高度な技法を取り入れた創作シリーズ「二色衣」は、留里金赤・瑠璃緑・蒼黄緑の色があります。

薩摩切子以外にも、薩摩錫器(すずき)や屋久杉の木工品、薩摩ボタンなど、鹿児島の工芸品が揃います。


外観 国登録有形文化財の洋館を利用した店舗

店内 薩摩切子が美しくディスプレイされた店内

工場では職人技を間近で見学可能



約1400℃の加熱炉がある吹き場 約1400℃の加熱炉がある吹き場

ギャラリーショップ「磯工芸館」に隣接する薩摩切子の工場では、溶けたガラスから器の形を作る成形からカット、磨きまですべて手作業で制作されています。

工場内には見学通路が設けられており、全工程を自由に見学可能。工場正面に向かって左から右へ工程順に各作業場が並び、制作の流れがよく分かります。


精緻なカットを施す薩摩切子職人の山口範子さん 精緻なカットを施す薩摩切子職人の山口範子さん

ダイヤモンドホイールを高速回転させてガラスの表面を削り、模様を作ります ダイヤモンドホイールを高速回転させてガラスの表面を削り、模様を作ります

「器に液体や氷を入れた時の表情も想像しながらカットしています」と話すのは、薩摩切子職人歴20年の山口範子さん。SE(システムエンジニア)時代に薩摩切子の輝きに一目惚れし、石川県や愛知県の工房で一から修業を積んで職人を目指した異色の経歴の持ち主です。

「薩摩切子が誕生したのは150年以上前ですが、デザインや色がまったく古さを感じさせないし、すべてが緻密に計算し尽くされているのが素晴らしいですね。毎日のように見て自宅でも使っていますが、飽きることがなく、今でも美しさに毎回感動しています」と話してくれました。

◎切子カットは次の「名勝 仙巌園」内で体験可能です!


薩摩ガラス工芸

問い合わせ先 099-247-2111(磯工芸館は099-247-8490)
時間 9~17時(工場見学は~16時30分。ただし、10時~10時15分、12~13時、15時~15時15分は休憩)
定休日 年末年始、月曜、第3日曜(祝日の場合は翌日、第4日曜。磯工芸館は鹿児島マラソン開催のため、3月第1日曜休)
交通アクセス 九州新幹線鹿児島中央駅からカゴシマシティビュー(バス)で約49分の仙巌園(磯庭園)前下車、徒歩約2分
値段 工場見学無料
URL https://satsumakiriko.co.jp

名勝 仙巌園(せんがんえん)

薩摩の歴史と文化を味わう


仙巌園(俯瞰) 仙巌園(俯瞰)

約5万平方メートルの広大な敷地に、大名庭園をはじめ、島津家ゆかりの史跡や体験施設、鹿児島の特産品が並ぶみやげ物店、地産地消にこだわった食事処などがあります。

またこの地は、“幕末の四賢侯(しけんこう)”のひとりと称される島津斉彬が、欧米列強に対抗するために全国で先駆けて近代化事業「集成館事業」に取り組み、日本初の洋式工場群「集成館」を設立した場所でもあります。

日本の近代化に大きく貢献した事業が評価され、2015年、仙巌園を含むエリア一帯が「旧集成館」として世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産に登録されました。

仙巌園に隣接する1865(慶応元)年竣工の「旧集成館機械工場」は、現存する日本最古の石造り洋式機械工場。現在は、島津家約800年の歴史や文化を紹介する博物館「尚古集成館 本館」として利用されています(耐震・リニューアル工事のため2024年9月末まで休館中)。

反射炉跡

“日本の近代工業発祥の地”で学ぶ


堅固な石組みが現存する反射炉跡 堅固な石組みが現存する反射炉跡

幕末、島津斉彬は欧米列強の脅威に備えて反射炉を建設しました。反射炉とは、鉄を溶かして大砲を鋳造するための溶解炉のこと。往時は高さ約20メートルの炉がそびえ、日本初の洋式工場群「集成館」の中核として稼動しました。

現在は、反射炉の基礎部分である石垣のみが残ります。薩摩在来の高度な技術により石工職人が積み上げた精緻な石組みは必見です。


この反射炉跡近くにある「鹿児島 世界文化遺産オリエンテーションセンター」では、集成館事業や反射炉など世界文化遺産の構成資産「旧集成館」についてパネルや映像で紹介。反射炉と大砲の模型も展示されています。

一部ガラス張りの館内から、反射炉の模型越しに実際の反射炉跡が見えるようディスプレイが工夫されており、世界遺産を身近に感じられるのも魅力です。


時間 9~17時
定休日 なし
値段 見学無料(名勝仙巌園・尚古集成館の入場料が別途必要)
URL https://www.senganen.jp/experience/kagoshima-world-heritage/

↓ 徒歩約5分

桜華亭

絶景を眺めながら郷土料理のランチ


建物2階から錦江湾に浮かぶ桜島を一望 建物2階から錦江湾に浮かぶ桜島を一望

庭園や錦江湾(鹿児島湾)に浮かぶ桜島を眺めながら、黒豚や黒毛和牛、海の幸など鹿児島産の食材をふんだんに使った薩摩の郷土料理を味わえます。


「鶏飯御膳」2200円 「鶏飯御膳」2200円

人気メニューのひとつが「鶏飯(けいはん)御膳」。鶏飯とは奄美地方の郷土料理で、ごはんの上にほぐした鶏肉や干しシイタケ、錦糸卵、薬味などをのせ、熱々の鶏ガラスープをかけていただきます。桜華亭では、薩摩地鶏のガラからていねいにだしを取ったスープを使用。あっさりと上品ななかにもコクのある味わいが広がります。
鶏飯以外に、鹿児島名物・さつま揚げや鮮魚の刺身なども付いて満足度の高い内容です。このほか「黒豚しゃぶ御膳」2800円や「薩摩郷土料理御膳」3000円なども好評。店内には多目的トイレも完備されています。


時間 11時~15時30分
定休日 なし
URL https://www.senganen.jp/food-shopping/ohkatei-restaurant/

↓ 徒歩約1分

切子カット体験

切子カットの高度な技術を体感


仙巌園内の体験施設では、職人の指導のもと薩摩切子のカット作業を体験できます。

体験メニューは、“幻の色”といわれる金赤の澄んだ鮮やかさが美しい「赤金グラス」(60分)3万3000円、クリスタルガラスが繊細な輝きを放つ「透明グラス」(60分)1万5000円、グラデーションが華麗な「キーホルダー」(30分)5500円の3種類(いずれも要予約)。

薩摩切子の高度な技術を体感してみては。

時間 9~17時
定休日 なし
値段 切子カット体験5500円~
予約ページ https://www.senganen.jp/senganen-experiences/satsuma-kiriko-cutting-experience/

↓ 徒歩約3分

庭園

桜島と錦江湾を借景にした圧巻のスケール


白い噴煙を上げる桜島を目の前に一望 白い噴煙を上げる桜島を目の前に一望

1658(万治元)年、島津家十九代・光久が別邸として築いた大名庭園。桜島を築山、錦江湾(鹿児島湾)を池に見立てた壮大なスケールで、国の名勝に指定されています。「仙巌」の名は、中国・江西省にある景勝地・龍虎山の仙巌という場所に似ていることから命名されたと伝わります。

この庭園の一部で、二十一代・吉貴(よしたか)の時代に築かれたとされる池泉庭園「曲水の庭」は、国内に現存する曲水の庭で最大規模の遺構。1959(昭和34)年にほぼ完全な姿で発掘されました。毎年4月には、島津家に伝わる優雅な宴を再現した「曲水の宴」が開かれます。


「曲水の庭」で歌を詠む「曲水の宴」の様子 「曲水の庭」で歌を詠む「曲水の宴」の様子

庭園にある石灯籠「鶴灯籠」も見どころ。1857(安政4)年、島津斉彬がガス灯に火を灯す実験を行なった場所です。
毎年2月上旬頃から4月上旬頃にかけて、ヤマザクラやカンヒザクラ、ガンタンザクラなど多品種の桜が次々と見頃を迎えます。

一部砂利道があるので、高齢者や車いす利用者は入口でもらえるバリアフリーマップを事前に確認しておくのがおすすめです。


時間 9~17時
定休日 なし
値段 入場料1000円(庭園・尚古集成館)
URL https://www.senganen.jp/experience/the-gardens/

↓ 徒歩約3分

御殿

殿様の優雅な暮らしを偲(しの)ぶ


来客への応接に使用された「謁見の間」 来客への応接に使用された「謁見の間」

島津家の歴代当主が暮らした屋敷。江戸時代は別邸として、明治時代の二十九代・忠義の代には本邸としても使用されました。国内外の要人をもてなす迎賓館としての役割も備え、幕末には徳川将軍家に嫁いだ篤姫や幕臣の勝海舟らも訪れたといわれます。


現存する御殿は1884(明治17)年に改築された建物が中心で、往時のほぼ3分の1にあたる約25部屋が残ります。

藩主の部屋は最高級の屋久杉で造られており、一日の大半を過ごしたという居室「御居間」からは、庭園や桜島が目の前に。豪華な調度品や古写真などから島津家当主の暮らしぶりを垣間見ることができます。

1日5回、「御殿ガイドツアー」を実施(定員各20名)。


時間 9時~16時50分
定休日 なし
値段 入場料1600円(庭園・尚古集成館・御殿)
URL https://www.senganen.jp/experience/the-house/

↓ 徒歩約6分

両棒餅屋

薩摩武士に愛された素朴なおやつ


「両棒餅 しょうゆ味」6本500円 「両棒餅 しょうゆ味」6本500円

仙巌園がある磯地区の名物「両棒餅(ぢゃんぼもち)」を提供。両棒餅とは、竹串を2本刺したひと口大の餅にとろみのある砂糖醤油ダレをかけた素朴なおやつ。焼きたての香ばしい餅と特製の甘辛いタレが好相性です。

武士が大小2本の刀を腰に差すことを「両棒差し」と呼ぶことから、一説には竹串を2本刺した餅の姿が似ていることが名前の由来といわれます。


時間 9~17時
定休日 なし
URL https://www.senganen.jp/food-shopping/jambo-mochi-shop/

名勝 仙巌園

問い合わせ先 099-247-1551
時間 9~17時
定休日 なし
交通アクセス 九州新幹線鹿児島中央駅からカゴシマシティビュー(バス)約49分の仙巌園(磯庭園)前下車、徒歩約2分
値段 入園料1000円(庭園・尚古集成館)・入場料1600円(庭園・尚古集成館・御殿)
URL https://www.senganen.jp/

↓ 徒歩約2分の仙巌園(磯庭園)前から鹿児島中央駅行きカゴシマシティビュー(バス)約31分の鹿児島中央駅下車、徒歩すぐ

※鹿児島交通バス・南国交通バス・まち巡りバスもあります。

鹿児島中央駅ゴール!

もっと薩摩切子の魅力を味わうなら

「薩摩ガラス工芸」のほか、鹿児島県内には薩摩切子の工房が点在。ここではもう一つ工房を紹介します!


【工房紹介】独自の薩摩切子の世界を味わう「美の匠 ガラス工房 弟子丸」へ

霧島市隼人町で薩摩切子を製造・展示販売するガラス工房。かつて「薩摩ガラス工芸」の切子師として薩摩切子の復元に携わった弟子丸努さんが、2011年に設立しました。

加工の難易度が高く実現不可能といわれた黒色の薩摩切子(薩摩黒切子)を開発し、独自にブランド化した薩摩切子の新潮流「霧島切子」や、ガラス廃材を再利用したオリジナルアクセサリー「ecoKIRI(エコキリ)」も手掛けてします。「薩摩切子カット体験」も実施。

問い合わせ先 0995-73-4747
時間 10~18時
定休日 木曜
交通アクセス 日豊本線国分駅から車で約5分
値段 薩摩切子カット体験 アクセサリー6600円~、グラス系1万3200円〜


紹介スポット一覧マップ

文/佐藤 史 写真/玉村恵理子