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2024.07.31ジパング俱楽部【初心者必見】一度は見てみたい! 世界遺産・屋久島で「縄文杉」トレッキングツアー 体験記

初心者はツアーがおすすめ!地元ガイドが案内する現地発ツアー

「屋久杉」とは、屋久島の標高500~600メートル以上の山地に自生する樹齢1000年以上の杉のこと。なかでも推定樹齢2000年代~7200年の「縄文杉」は、屋久島最大の屋久杉です。標高約1280メートルの深い森に、数千年もの間ひっそりと佇(たたず)む縄文杉に出合うため、丸一日がかりのトレッキングツアーに挑戦しました!

※トップ画像は「ウィルソン株」

推定樹齢7200年「縄文杉」トレッキングツアー

樹齢1000年以上の巨杉が自生する神秘の森にパワーをもらう


森のいたるところに巨杉が自生しています 森のいたるところに巨杉が自生しています

今回挑戦する縄文杉トレッキングツアーの「荒川登山入口ルート」は、中級~上級者向けのコースです。片道約11キロのうち、前半の約8.5キロはほぼ平坦なトロッコ道、後半の約2.6キロが本格的な登山になります。

初心者の場合、所要時間は約10時間。ほぼ一日がかりの行程のため、事前にしっかり体力づくりをして臨みましょう。

トロッコ道でも樹齢1000年を超える屋久杉に出合えるので、体力に自信がない人は、「縄文杉」を目指さずトロッコ道を歩くだけでも原生林のパワーを感じることができます。

~事前準備~

雨具を用意しておこう

屋久島は「1カ月に35日雨が降る」といわれるほど降水量が多い島。レインウェア(上下)やザックカバーなどの防水性のある雨具は必需品です。

島内には登山用品のレンタルショップが数店舗あるので、雨具を含め登山用品を現地で調達するという選択肢も。レンタルする場合は、トレッキング前日までに準備しておきましょう。

バス乗車券は事前購入がおすすめ!

環境負荷軽減と混雑緩和のため、荒川登山口へは一般車両の乗り入れ不可。屋久杉自然館前~荒川登山口間を運行する荒川登山バス(往復券3000円、環境保全協力金1000円を含む)を利用しましょう。

バス乗車券は屋久杉自然館前のバス停でも早朝から購入可能ですが、登山客で混み合う場合もあるので前日までに購入しておくのがおすすめです。

どんな服装・靴がいいの?

トップスは長袖が基本。速乾性のある化学繊維の素材を選びましょう。標高が高い場所や降雨時は冷え込むことがあるので、上から羽織れる長袖(レインウェアでも可)をザックに1枚入れておきましょう。
ボトムは肌が露出しない長ズボンなどを。汗が乾きにくく体の動きが制限されるジーンズはNGです。

帽子は、とくに夏場は頭が蒸れて熱中症になる恐れがあるため、通気性のいいものを選びましょう。前方のひさし部分が長いものは前方が見えにくいため避けましょう。
足元は、底が滑りにくい登山靴かトレッキングシューズを。長時間歩くので、事前に履き慣らしておきましょう。

虫よけ対策は必要?

夏場には蚊やアブ、ブヨ、ヤマビルなどの虫が出るため、虫よけスプレーや虫刺されの薬を準備してください。虫よけシールは汗ですぐ剥がれるので適していません。

水分やミネラル補給について

湧き水が豊富なので、持参する飲料水は500ミリリットルのペットボトル2本(1本水用・1本スポーツドリンク用)程度でOK。ただし、熱中症対策として塩分やミネラルを補給できるスポーツドリンクや塩タブレットなども持参しましょう。粉末タイプのスポーツドリンクを持参されると、道中の沢の水でスポーツドリンクを作ることができます。

宿泊場所(屋久島いわさきホテル)

 

車約23分(ツアーガイドによる送迎)

 

登山の起点となる登山バス乗り場「屋久杉自然館」前へ


屋久杉自然館前のバス停。トイレ(左)も完備しています 屋久杉自然館前のバス停。トイレ(左)も完備しています


「朝弁当」(手前)、「昼弁当」(奥)各550円 「朝弁当」(手前)、「昼弁当」(奥)各550円

荒川登山バス券。購入時に山岳部環境保全協力金1000円の納入が必要です 荒川登山バス券。購入時に山岳部環境保全協力金1000円の納入が必要です

屋久杉自然館前 荒川登山バス停留所

荒川登山バスの発着所である「屋久杉自然館」前のバス停留所に早朝集合します。早朝は路線バスが少ないので、ガイドを依頼する場合は、宿泊先から屋久杉自然館までの送迎をあらかじめガイドに相談しておきましょう(ガイドにより送迎可能エリアが異なります)。

食事は朝食・昼食の2食を準備。集合場所の「屋久杉自然館」近くにある「あさひ弁当」は、登山弁当の専門店。朝4時から店頭での受け取りが可能です。


あさひ弁当

問い合わせ先 090-2714-0329(前日までに要予約、予約受付は17~20時)
時間 4~6時
定休日 なし
交通アクセス 安房港から車で約6分

 

バス約35分

 

荒川登山口からトレッキングスタート!


屋久島公認ガイドの迎伸幸(むかえ のぶゆき)さん 屋久島公認ガイドの迎伸幸(むかえ のぶゆき)さん

屋久杉自然館前から荒川登山口に向かうバスは1日約3便。できるだけ始発の便(5時発)で出発しましょう。

ちなみに、荒川登山口から屋久杉自然館前へ戻る便は1日約5便。日帰り登山の場合、最終便(17時45分発)までに必ずバスに乗車する必要があります。
ルート上は基本、携帯電話の電波はつながりませんが、ドコモ・auは荒川登山口と縄文杉デッキの2カ所で通話可能です。

標高約600メートルの荒川登山口に到着したら、いよいよトレッキングスタート。今回のガイドは、迎 伸幸さん。長崎県佐世保市出身で、28年前に屋久島に移住。ガイド歴21年、縄文杉に過去1000回以上案内したことがあるという大ベテランです。

「海岸付近は亜熱帯で、山頂は北海道並みの気候である屋久島には日本の植物がぎゅっと詰まっています。標高約600メートルから約1280メートルまで歩くこのルートでも、屋久杉以外にもさまざまな植物を見ることができますよ」

トロッコ道


スタート直後の橋からは圧巻の渓谷美を望みます スタート直後の橋からは圧巻の渓谷美を望みます

前半の約8.5キロはトロッコ道を歩きます。このトロッコ道は、かつて伐採した屋久杉を搬出するために使われていた森林鉄道。木材だけでなく、人や木炭、生活物資なども運搬していたそうです。

「廃線になったわけではなく、登山道のトイレの維持管理などに今も時折稼働していますよ」と迎さん。現役で活躍している鉄道とは驚きです。
トロッコ道には、歩きやすいように木製の踏み板が敷かれています。雨でトロッコ道が濡れている場合は、この踏み板の中央部分を歩くようにしましょう。レールや枕木は滑りやすいので注意。

トロッコ道では、川や沢に架かる大小の橋をいくつも通過します。大型の橋は底に大きな隙間があり、小型の橋には柵がない場合も。巨岩がゴロゴロ転がる渓谷などは思わず撮影したくなる圧巻の風景ですが、橋上での記念撮影は危険です。とくに雨で濡れている場合は滑って転落しやすいので、細心の注意を払いながら立ち止まらずに歩きましょう。

「行きはまだ余裕がありますが、帰りは疲労から足がもつれて転倒しやすくなります。制限時間内に荒川登山口まで怪我なく帰り着く体力を温存しておくことが何よりも重要です」と迎さん。


沢に架かる橋。柵がない橋もあるので滑らないように注意 沢に架かる橋。柵がない橋もあるので滑らないように注意

 

登山約50分

 

小杉谷


荒川登山口から約2.6キロで小杉谷橋へ 荒川登山口から約2.6キロで小杉谷橋へ

安房川に架かる小杉谷橋を通過すると、小杉谷集落跡が見えてきます。小杉谷集落は、1923(大正12)年に森林軌道が敷設され、屋久杉を伐採・運搬するための国有林経営の前線基地として誕生しました。

最盛期の1960(昭和35)年頃には約540人が暮らし、簡易郵便局や役場の支所、理髪店、商店などがあったそうです。しかし1970(昭和45)年、国有林事業の縮小とともに47年の歴史を閉じました。

小杉谷集落跡周辺には、小杉谷事業所跡や小杉谷小中学校跡などの遺構が現存。一帯は「屋久島の林業集落跡及び森林軌道跡」として日本森林学会の林業遺産に選定されています。

小杉谷小中学校跡の校庭付近でヤクシカを発見! 一般的なニホンジカより小型のシカです。迎さんによると、この小杉谷集落跡周辺はヤクシカに遭遇する確率が高いそう。

小杉谷集落跡を通過し、最初の休憩スポットである小杉谷休憩舎に到着。ルート上で東屋が設置されているのはここだけ。ベンチがあり風雨をしのぐことができます。


小杉谷休憩舎。東屋が設置されています 小杉谷休憩舎。東屋が設置されています

小杉谷小中学校跡で出合ったヤクシカ 小杉谷小中学校跡で出合ったヤクシカ

さらに進むと、バイオトイレが設置されていました。バイオトイレとは、水を使用しない環境に優しいトイレのこと。傍らには清水が豊富に湧いていて、給水もできます。

「軟水で冷たくておいしいでしょう。屋久島では降った雨の約3割を森が蓄え、清水となって湧き出します。このルートは、いたるところから清水が湧いているので、こまめに水分を補給できるのも魅力です」と迎さん。「スポーツドリンクは粉末タイプを持参すると、ザックの荷物が軽くて済みますよ」とアドバイスしてくれました。


バイオトイレ バイオトイレ

バイオトイレ横の給水ポイント バイオトイレ横の給水ポイント

 

登山約110分

 

三代杉・大株歩道入口


三代杉について説明するガイドの迎さん 三代杉について説明するガイドの迎さん


トロッコ道では大小の橋をいくつも通過 トロッコ道では大小の橋をいくつも通過

急な斜面は一歩ずつ慎重に。木の根は滑りやすいので踏まないように注意が必要です 急な斜面は一歩ずつ慎重に。木の根は滑りやすいので踏まないように注意が必要です

さらに進むと、トロッコ道の見どころの一つである三代杉に到着。初代の倒木の上に二代目が育ち、二代目の切り株の上に三代目が育った珍しい杉です。倒木である初代の杉の木は樹齢約1200年といわれています。

屋久島は、太古に海底のマグマが隆起して誕生した花崗岩(かこうがん)の塊です。花崗岩の山は栄養分が乏しいので、屋久杉は非常にゆっくりと成長します。そのため年輪の幅が小さく、材質が緻密で強度に優れているのが特徴です。また、台風や風雪に耐えながら長い年月を生き続けるために樹脂を多く作り出すことから、腐りにくいのだそう。大量の樹皮で木の内面を保護しているため、雨が多い地域にもかかわらず腐食せずに倒木や切り株も長年生き続けるそうです。

樹高22.8メートル、胸高周囲8.3メートルの仁王杉を通過し、トイレを完備した大株歩道入口で再び休憩。ここも冷たい清水が湧き出す給水ポイントでもあります。この大株歩道入口から本格的な山道に入り、縄文杉まで残り約2.5キロ。行きは片道約2時間15分を要します。朝10時までに大株歩道入口を出発し、遅くとも13時までに縄文杉に到着することを目指しましょう。

ガイドさんは、バスの最終便出発時刻(17時45分)までに荒川登山口まで無事に帰り着くことを常に第一に考えています。
このルートを知り尽くし、多くの登山客を案内してきたガイドさんが道中、参加者の疲労具合や体調を踏まえて「これ以上進むのは厳しい」と判断した場合、残念ですがその判断に従いましょう。初心者には決して容易なコースではないため、老若男女問わずリタイアはつきものだそうです。


大株歩道入口でも湧き水で給水 大株歩道入口でも湧き水で給水

仁王杉  阿形(あぎょう)。仁王像が名前の由来で、かつては傍らに吽形(うんぎょう)の巨杉もあったそう 仁王杉 阿形(あぎょう)。仁王像が名前の由来で、かつては傍らに吽形(うんぎょう)の巨杉もあったそう

 

登山約25分

 

ウィルソン株


切り株の内部とは思えない大きな空洞 切り株の内部とは思えない大きな空洞

標高約1030メートルにあるウィルソン株は、約400年前に伐採された切り株。切り倒される前の大きさは推測で樹高42メートル、胸高周囲13.8メートル。推定樹齢2000余年。

大正時代に屋久杉を調査し、この大株を紹介したアメリカ人植物学者・ウィルソン博士の名前から名付けられました。中は大きな空洞になっていて、内側から空を見上げると角度によってはハート形に見えることからSNS映えスポットとして有名です。


ハート形に見える角度を探してみましょう ハート形に見える角度を探してみましょう

 

登山約35分

 

大王杉

標高約1211メートルの急斜面にそびえるのが大王杉。樹高約23.7メートル、胸高周囲約11.6メートル。推定樹齢は約3000年です。

1966(昭和41)年に縄文杉が発見されるまでは最大の屋久杉といわれていたことから、「大王」の名が付けられました。縄文杉にも引けを取らないダイナミックな姿を、展望デッキから間近に見上げることができます。


展望デッキから間近に見学できる大王杉 展望デッキから間近に見学できる大王杉


コブのある屋久杉製品はとくに高価なのだとか コブのある屋久杉製品はとくに高価なのだとか

歩きやすいよう木製の階段が設置されている箇所も 歩きやすいよう木製の階段が設置されている箇所も

 

登山約50分

 

縄文杉


標高約1280メートルに位置する縄文杉。存在感に圧倒されます 標高約1280メートルに位置する縄文杉。存在感に圧倒されます

トレッキング開始から約5時間。いよいよ最終目的地である縄文杉に到着です。現在発見されている屋久杉で最大の大きさを誇り、樹高約25,3メートル、胸高周囲約16.4メートル。推定樹齢は2000年代〜7200年といわれています。江戸時代、幹の凹凸が激しく利用しにくいことから伐採を免れました。

保護のために約15メートル離れた展望デッキからの見学になりますが、それでも迫力や神々しさを十分に感じられます。


生命の神秘を感じる原生の森 生命の神秘を感じる原生の森

 

下山約4時間30分

 

荒川登山口トレッキングゴール!

ガイドさんとはここでお別れ。帰路は往路と同じく荒川登山バスで屋久杉自然館前まで戻るのが一般的です。

今回利用したツアー

ツアー名 体力に合わせてルートを選べる☆推定樹齢7200年『縄文杉』トレッキングツアー
問い合わせ先 050-5434-3472(屋久島アクティビティ)
所要時間 約10時間
ガイド料 1名1万6000円+貸し切り料金1組5000円(バス代別途)
URL https://yakushima-tour.com/

文/佐藤 史 写真/玉村恵理子

  • 記事中の情報は2024年7月時点のものです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。
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