2024.09.24ジパング俱楽部菓子店発祥の秘伝ダレが生んだ“日本一売れる駅弁”!米沢駅の「牛肉どまん中」|駅弁2024
山形県米沢市
鉄道旅のおとも、駅弁。車内で開くわくわく感を忘れられない人も多いはずです。どこか懐かしさも感じるロングセラー駅弁の人気の理由を、調製元に直接伺いました。
“日本一売れる駅弁”といわれるほど大人気の駅弁「牛肉どまん中」は、歴史ある城下町で創業約100年の弁当製造会社「新杵屋(しんきねや)」で生まれました。秘伝のタレで味付けをした薄切りの牛肉と牛そぼろを、山形県産のブランド米「どまんなか」にたっぷりのせた一品です。四代目社長の舩山百栄(ふなやまももえ)さんに、おいしさの秘密や弁当にかける思いを伺いました。
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「牛肉どまん中」を販売する米沢駅
米沢駅は山形県南部にあり、山形新幹線、奥羽(おうう)本線、米坂(よねさか)線が乗り入れる駅です。
現在の駅舎は、山形新幹線開通に伴って、1993年に改築されました。建物は、国の重要文化財に指定されているルネサンス様式を基調とした「旧米沢高等工業学校本館」をモチーフにしています。改札は地上1階に、2階は物産施設やコワーキングスペースが備わります。
米沢駅弁「牛肉どまん中」
牛肉で埋め尽くされるボリューム弁当
窓から中身がちらりと顔をのぞかせている、スリーブ式の外箱を外せば、透明な蓋の下に、たっぷりの牛肉ごはんと煮物や漬物のおかず類がぎっしりと詰められており、ずっしりと重みを感じます。ふたを開けると、フワッと醤油の香りが鼻をかすめ、食欲を刺激します。
「牛肉どまん中」の製造を手がける「新杵屋」
2種類の秘伝ダレを使い分ける
「牛肉どまん中」の主役である牛肉は、契約の畜産農家から仕入れており、赤身と脂のバランスがとれた肉を使っています。
味付けは創業以来代々受け継がれてきた秘伝ダレ。最初に1種類目の秘伝ダレで肉の余分な脂を落としつつ軽く下味をつけ、次に2種類目の秘伝ダレをしっかり染みこませていきます。こうすることで肉の旨みとやわらかさを残しながら仕上がるのです。
弁当を製造・販売する「新杵屋」はもともとは菓子店として創業。牛肉に絡む秘伝ダレは、当時販売していたまんじゅうの照りを出すために使っていた、醤油風味のあんをベースに考案されました。
やさしい甘さが感じられる味付けで、やわらかな牛肉もかめばかむほど、旨みが広がります。
菓子販売からスタートした駅売り
「新杵屋」は、1918(大正7)年に菓子店として創業しました。戦後には冷菓子の製造、販売を開始し、1947年には昭和天皇へアイスクリームを献呈したという記録も残ります。同じ年に米沢駅構内での菓子販売をスタートし、駅売りを始めました。
駅弁は、1957年に販売した「元祖牛肉弁当」が始まりです。当時、米沢名物であるコイを使った駅弁を販売している会社があったため、二代目が「米沢牛も有名なので、牛肉を使った米沢らしいお弁当を」ということから、この弁当が生まれました。「元祖牛肉弁当」は牛肉としらたきを煮たすき焼き風のもので、現在も販売しているいわば新杵屋の基本の味です。
現会長で三代目となる舩山栄太郎さんが考案した「牛肉どまん中」は1993年に誕生。今や年間約60万食も売り上げる大人気商品となっています。
「新杵屋」の舩山社長にインタビュー
―――日本一売れているという「牛肉どまん中」。こだわりのポイントは?
私が社長を引き継いだのは、コロナ禍の時でした。自分が受け継ぐとは思っていませんでしたが、会長である父が高齢であったこともあり、引き受けることにしました。
父が考案した「牛肉どまん中」は、女性もこどもも食べやすいように牛バラ肉を細かくカットして、ごはんを箸で取り出しやすいよう弁当容器の角を丸くしています。スリーブ型の外箱も、「中身を見せて、安心して購入してもらいたい」ということを第一に考えて開発されました。
おかげさまで発売以来、新幹線利用のサラリーマンの口コミによって広まり、今では小さなこどもからご年配の方まで、幅広い年齢の方にご支持いただいています。
―――「新杵屋」が目指す、これからの駅弁の姿とは?
駅弁は、今や“移動する電車の中で食べるもの”ではなく、「駅弁」という名のお弁当の1種類になっていると思います。購入して自宅に持ち帰って食べる、またおみやげにするという方も多くいらっしゃるようです。
二代目が「元祖牛肉弁当」を、三代目が「牛肉どまん中」を考案しました。四代目である私は、今まで以上に自社のお弁当を多くの方に広め、そして残していくことが役目だと思っています。
お客様が求めているものは日々変化しています。お弁当も冷凍対応にしたり、少量サイズにしたりと変化していくことになるかもしれません。いつでもお客様においしいと思ってもらえる変わらぬ味を大事にして、長く愛していただけるお弁当づくりを続けたいと思います。
米沢駅の新定番! 三味ある「牛肉どまん中」
新杵屋
問い合わせ先 | 0238-22-1311 |
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販売場所 | 本社工場直売店(7~19時)、米沢駅ホーム売店(土・日曜・祝日のみ)、福島駅構内売店、赤湯駅「NewDays赤湯」ほか |
URL | http://www.shinkineya.com |
「牛肉どまん中」を買いに米沢駅に行こう!
東京方面からは、東京駅から山形新幹線で米沢駅まで最速2時間22分。
従来から走行しているE3系の車両に加え、最高速度が時速300キロの新型車両・E8系が2024年3月にデビューしました。普通車の座席は最上川と紅花、グリーン車の座席は最上川と出羽(でわ)三山の主峰・月山(がっさん)をそれぞれカラーテーマにしたデザインです。
「牛肉どまん中」と一緒に楽しみたい観光スポット
戦国の名将・上杉謙信を祀(まつ)るパワースポット上杉神社
上杉謙信を祭神として米沢城本丸跡に建立されました。
謙信が信仰した毘沙門天(びしゃもんてん)の「毘」と総攻撃の際に本陣に立てられたという「龍」の字が書かれた軍旗がはためく参道の奥に、檜(ひのき)造りの本殿、本殿右に宝物館があります。宝物館「稽照殿(けいしょうでん)」では上杉謙信をはじめ、九代米沢藩主の上杉鷹山(ようざん)や、生涯上杉家に仕えた直江兼続(なおえかねつぐ)の甲冑(かっちゅう)や刀剣、遺品などの収蔵品を展示しています。
宝物館「稽照殿」は、米沢市出身の建築家・伊東忠太(いとうちゅうた)による設計で、国の登録有形文化財になっています。
上杉神社
問い合わせ先 | 0238-22-3189 |
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時間 | 6~17時(11月1日~3月31日は7時~)。「稽照殿」は9時30分~15時45分 |
定休日 | なし。「稽照殿」は11月26日~3月中旬休(雪灯籠まつり期間は開館) |
交通アクセス | 山形新幹線米沢駅から市民バス市街地循環路線右回り約13分の上杉神社前(上杉城史苑)下車すぐ |
値段 | 無料。「稽照殿」は700円 |
URL | https://www.uesugi-jinja.or.jp/ |
地元駅弁屋さんのおすすめスポット
「伝国の杜(でんこくのもり) 米沢市上杉博物館」で上杉家と米沢の歴史に触れる
新杵屋のご先祖はもともと上杉家に仕え、転封とともに米沢にやってきたとも伝わっているそう。
館内には上杉家ゆかりの貴重な品々を所蔵しています。数万に達する所蔵品のなかで最大の見どころは、国宝に指定されている狩野永徳筆の『上杉本洛中洛外図(らくちゅうらくがいず)屏風』。さまざまな身分の人物や動植物、祭りなど、当時の京都の日常風景を描いた大作で、織田信長から上杉謙信へ贈られたと伝えられています。
ここでしか手に入らないミュージアムグッズも魅力的。博物館に隣接する松が岬公園は米沢城本丸の跡地につくられた公園で、ここにも上杉家にまつわる銅像や碑が多数あります。
伝国の杜 米沢市上杉博物館
問い合わせ先 | 0238-26-8001 |
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時間 | 9時~16時30分 |
定休日 | 4~11月の第4水曜・12~3月の月曜(祝日の場合は翌平日)・年末年始 |
交通アクセス | 山形新幹線米沢駅から市民バス市街地循環路線右回り約13分の上杉神社前(上杉城史苑)下車、徒歩約3分 |
値段 | 410円(常設展のみ) |
URL | https://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp |
文/千葉香苗
- ※記事中の情報は2024年9月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。
- ※新型コロナウイルス感染症等の影響により、掲載している内容が変更となる可能性があります。お出かけの際は事前にご確認ください。