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2024.09.26ジパング俱楽部大正時代から続く立ち売りへのこだわりを探る!折尾駅の「かしわめし」|駅弁2024

福岡県北九州市

鉄道旅のおとも、駅弁。車内で開くわくわく感を忘れられない人も多いはずです。どこか懐かしさも感じるロングセラー駅弁の人気の理由を、調製元に直接伺いました。

1921(大正10)年に誕生し、100年以上の歴史を持つ折尾(おりお)駅の駅弁「かしわめし」。当時は主流だった駅弁の立ち売りスタイルを現在も守り続けています。かしわめしを製造する「東筑軒(とうちくけん)」に、製法のこだわりや立ち売りへの思いを聞きました。


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「かしわめし」を販売する折尾駅


2021年1月に開業した折尾駅の新駅舎 2021年1月に開業した折尾駅の新駅舎

1891(明治24)年に開業した折尾駅は、日本初の立体交差駅として知られています。

かつては地上の筑豊本線と高架の鹿児島本線が立体交差しており、短絡線(福北ゆたか線)が地上の駅南側を通っていたことから複数の改札口とホームが複雑に絡み合い、乗り換えが不便でした。

そのため2021年1月に新駅舎が開業し、2022年3月に全3路線が高架化されました。2023年4月には駅北側に駅前広場が完成し、同年9月に折尾駅高架下の商業施設「えきマチ1丁目折尾」がオープンするなど、現在も駅周辺の整備事業が進められています。


折尾駅弁「かしわめし」

鶏のスープが染み込んだ炊き込みごはんが自慢


炊き込みごはんの上に、鶏の刻み肉と錦糸卵、刻み海苔がぎっしり 炊き込みごはんの上に、鶏の刻み肉と錦糸卵、刻み海苔がぎっしり

折尾駅の名物「かしわめし」。鶏のスープで炊いた炊き込みごはんの上に鶏の刻み肉、錦糸卵、刻み海苔がトッピングされています。

鶏肉本来の旨味と歯応えが生きた刻み肉はもちろん、鶏のスープが染み込んだ炊き込みごはんが特においしいと評判。昔食べたことがあるような懐かしい味わいで、ひと口食べるともうひと口、もうひと口……と箸が止まらなくなります。

パッケージに込められた思い


折尾駅周辺の地図が描かれた「かしわめし(大)」のパッケージ 折尾駅周辺の地図が描かれた「かしわめし(大)」のパッケージ

折尾駅を中心に、周辺の路線や駅名、観光スポットなどの地図が描かれたパッケージにも注目。

1970(昭和45)年、日本国有鉄道(国鉄)のキャンペーン「ディスカバー・ジャパン」が始まった際に、全国各地の駅弁のパッケージをつなげて日本地図を作る企画で制作されたデザインをそのまま使用しているそうです。これは、人が集まる時に「駅弁を囲んで地元の話題で盛り上がってほしい」という思いが込められています。

イラストの地図は、テーマパークの閉園や駅の新設など、時代の変化に合わせて現在も少しずつ変更を加えているそうです。

休止状態だった立ち売りが2013年に復活!


約15キロの木箱を抱えながら売り歩く小南英之さん 約15キロの木箱を抱えながら売り歩く小南英之さん

「べんと〜、べんと〜、かしわめしべんと〜」。折尾駅のホームに響きわたる低い美声と遊び心溢れる軽やかなダンスに、思わず足を止めずにはいられません。

「とにかく衛生管理には気を使います。1時間で売れる数しか持ち歩かず、売り切れたらこまめに補充します」と話す小南英之さんは、立ち売り歴11年。弁当や保冷剤が入った約15キロの木箱を首から下げ、お腹の底から声を出し、上半身をいっぱいに使って踊り続けるのは、多大な体力と精神力を要します。それでも笑顔を絶やすことはありません。

2013年に小南さんがデビューしたことで、それまで人手不足のため休止状態だった立ち売りが復活。教わる人がいなかったことから、歌も振り付けも小南さんの完全オリジナル。ひとりで模索しながら現在のスタイルを確立したそうです。 振り付けはハワイのフラダンスをアレンジ。鳥の翼のように両腕をひらひらと動かすしぐさは、歓迎の意を表しています。

「言葉が通じない外国人にも歓迎の気持ちが伝わるかなと思って。大阪・道頓堀の動くカニの看板が私の師匠です」と笑います。最後に両手でハート形を作ってニッコリ微笑むポーズは最近取り入れたそうです。


ハート形を作ってニッコリ微笑む小南さん ハート形を作ってニッコリ微笑む小南さん

折尾駅の列車の到着時刻はすべて頭の中に入っているという小南さん。

以前はホームでの販売が中心でしたが、2024年3月のダイヤ改正により各列車の到着時刻が重複することが増え、ホーム間の移動が間に合わないことから、最近は1階の改札口周辺で販売することも多いそうです。

「若い人たちが『頑張ってください』と声をかけてくれるのが励みになりますね。世の中スピード化やキャッシュレス化が進み、立ち売りが難しい時代になりましたが、体力が続く限り頑張ります」


大きな動作で歓迎の意を表します 大きな動作で歓迎の意を表します

最近はホームではなく改札口周辺で販売することも多いそう 最近はホームではなく改札口周辺で販売することも多いそう

「かしわめし」の製造を手がける「東筑軒」

100年以上の歴史を持つ地元のソウルフード


折尾駅近くの東筑軒本社でも駅弁を販売 折尾駅近くの東筑軒本社でも駅弁を販売

「かしわめし」の誕生は100年以上も前にさかのぼります。郷土料理の“水炊き”に代表されるように、かつて福岡では鶏肉はごちそうで、おもてなしの料理によく使われていました。

そこで旧国鉄の門司運転事務所所長だった創業者・本庄巌水(いわみ)氏が郷土色を取り入れて考案し、1921(大正10)年に折尾駅と直方(のおがた)駅で立ち売りを行ったのが始まりです。

当時、巡業で北九州市を訪れた福岡県出身の力士・福柳(ふくやなぎ)関が絶賛したこともあり、「かしわめし」はたちまち人気に。明治時代に石炭の輸送手段として敷設された筑豊鉄道(現在の筑豊本線)と石炭産業の発展とともに、「かしわめし」の人気と知名度はさらに広がっていきました。

「最盛期は立ち売り販売のスタッフが20人ほどいて、多い時で1時間に500個売れたそうです。当時は報酬が歩合制だったため、お客さんを奪い合うように販売していたらしいです」と、東筑軒代表取締役社長の佐竹真人(さたけまさと)さんが昔のエピソードを話してくれました。

100年以上変わらない製法と味を受け継ぐ


「東筑軒」代表取締役社長・佐竹真人さん 「東筑軒」代表取締役社長・佐竹真人さん

自慢の炊き込みごはんは、九州産ヒノヒカリを使用し、鶏とガラで取ったスープに秘伝の調味料を合わせて炊き上げられます。「味の要となる調味料は門外不出の一子相伝で、社内に秘密の調合部屋があります。調合方法は私も知らないんですよ」と笑う佐竹さん。

「かしわめし」の製法や味付けは、創業当時から100年以上変えていないのだそうです。「しかし当時の食材や調味料は手に入らないので、同じ味に仕上げるのは非常に大変。例えば、昔の油は鮮やかな黄色でしたが、最近の油はきれいなクリーム色で微妙にコクが違うんです。そのため、できる限り創業当時の味に近づけるよう常に試行錯誤を続けています」と、味の継承の難しさを語ります。

「かつては駅弁の販売方法といえば立ち売りが主流でしたが、今では全国でも非常に珍しくなりました。今後もこの伝統的な販売スタイルを守り続けていきたいですね」


創業100周年を記念した復刻パッケージ(現在は販売終了) 創業100周年を記念した復刻パッケージ(現在は販売終了)

―――「かしわめし」はどのくらい売れているんですか?

2024年1月の販売個数は、「かしわめし」(大)約2万6000個、(小)約2万3000個、計約4万9000個です。もし弁当を縦に重ねたとすると、福岡タワー(234メートル)の約7.2倍の高さになります。

―――容器にもこだわりがありますか?

開けた時にどこか懐かしい木の香りも一緒に楽しんでいただけたらという思いから、昔ながらの経木の折り箱を使用しています。

ただ近年は、木製折り箱の取り扱い業者の減少もあり、一般的な密閉型容器と比べて割高であることから、本社内に“箱打ち部屋”を設置。自社で折り箱の組み立てを行うことで、コストの削減に取り組んでいます。


折尾駅の新定番!「かしわおにぎり・冷凍うどん」

近年は、最新の冷凍技術を駆使して商品化した冷凍食品も好評です。

かしわめしの炊き込みごはんをおにぎりにした「駅のかしわおにぎり」(5個入り)800円、駅構内にある名物立ち食いうどん店の味「駅のうどん」(5人前)1800円〜など、懐かしい味を自宅で気軽に楽しめます。

通信販売のほか、東筑軒本社の売店や折尾本社うどん店前の自動販売機でも購入可能です。

東筑軒

問い合わせ先 093-601−2345(東筑軒 本社)
販売場所 鹿児島本線折尾駅構内(ホームや改札口周辺)
価格 「かしわめし」(大)970円、(小)860円
URL https://tochikuken.co.jp
備考 立ち売り販売 9時15分〜13時頃、14時〜16時頃 水・木曜休、その他不定休あり

「かしわめし」を買いに折尾駅に行こう!


折尾駅に停車する特急「ソニック」 折尾駅に停車する特急「ソニック」

特急「ソニック」は鹿児島本線・日豊本線の博多・小倉〜別府・大分・佐伯間を結ぶ特急列車。 車両は白色の885系「白いソニック」とブルーメタリックの883系があります。

どちらも制御付き自然振り子式の車両で、スピードアップと乗り心地のよさを実現しています。

「かしわめし」と一緒に楽しみたい観光スポット

世界文化遺産の構成資産を見学「官営八幡製鐵所(せいてつしょ) 旧本事務所眺望スペース」


奥に見える赤レンガ組みの2階建ての建物が「官営八幡製鐵所 旧本事務所」です 奥に見える赤レンガ組みの2階建ての建物が「官営八幡製鐵所 旧本事務所」です

1901(明治34)年に操業を開始し、日本産業の近代化に貢献した官営八幡製鐵所。世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産のひとつです。
現在も稼働している製鉄所の構内にあるため非公開ですが、眺望スペースから1899(明治32)年竣工の「旧本事務所」を見学可能です。


官営八幡製鐵所 旧本事務所眺望スペース

問い合わせ先 093-582-2922(北九州市政策局総務課)
時間 9時30分〜16時30分
定休日 月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日
交通アクセス 鹿児島本線スペースワールド駅から徒歩約10分
値段 無料
URL https://kitaq-whs.jp/visit/

科学の不思議を体感できる「スペースLABO(北九州市科学館)」


「スペースLABO」の愛称は、市民公募作品から市内小学生らの投票によって選定されました 「スペースLABO」の愛称は、市民公募作品から市内小学生らの投票によって選定されました

テーマパークのスペースワールド跡地に2022年4月にオープンした「スペースLABO(北九州市科学館)」。
国内最大級を誇るドーム径30メートルのプラネタリウムや国内最大の大型竜巻発生装置を備え、さまざまな科学現象を体感・体験しながら学ぶことができます。


スペースLABO(北九州市科学館)

問い合わせ先 093-671-4566
時間 10時〜17時30分 ※ホームページからの事前予約優先制
定休日 年末年始 ※その他臨時休館日あり
交通アクセス 鹿児島本線スペースワールド駅から徒歩約3分
値段 常設展400円、プラネタリウム600円
URL https://www.kitakyushuspacelabo.jp

文/佐藤 史 写真/玉村恵理子

  • 記事中の情報は2024年9月時点のものです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。
  • 新型コロナウイルス感染症等の影響により、掲載している内容が変更となる可能性があります。お出かけの際は事前にご確認ください。