2024.10.10ジパング俱楽部祝・60周年!駅弁ライターが実食!東海道新幹線全17駅の駅弁|駅弁2024
2024年、開業から60周年を迎えた東海道新幹線。東京~新大阪を結ぶ日本を代表するこの路線は、観光客やビジネスマンの別なく、今も多くの人に利用され続けています。
旅行の時、出張の時、列車内での楽しみのひとつが駅弁ではないでしょうか。
ここでは駅弁を愛してやまないライター・望月崇史が、東海道新幹線全駅の駅弁の中から、各駅でこれは食べてほしいと思う一押し弁当をピックアップしました。全17駅17の弁当を一挙紹介!
「のぞみ」停車駅はもちろん、これを読めば「ひかり」「こだま」の停車駅にも駅弁目当てで降りてみたくなるかも?
著者紹介
目次
- 東京駅ならコレ! 「深川めし」
- 品川駅ならコレ! 「品川貝づくし」
- 新横浜駅ならコレ! 「シウマイ弁当」
- 小田原駅ならコレ! 「デラックスこゆるぎ」
- 熱海駅ならコレ! 「小鯵押寿司」
- 三島駅ならコレ! 「港あじ鮨」
- 新富士駅ならコレ! 「駅弁版 極 富士宮やきそば弁当」
- 静岡駅ならコレ! 「元祖鯛めし」
- 掛川駅ならコレ! 「浜の釜めし」
- 浜松駅ならコレ! 「うなぎ弁当(赤ワイン仕込)」
- 豊橋駅ならコレ! 「手筒花火」
- 三河安城駅ならコレ! 「稲荷寿司」
- 名古屋駅ならコレ! 「天下とり御飯」
- 岐阜羽島駅ならコレ! 「こだま」
- 米原駅ならコレ! 「湖北のおはなし」
- 京都駅ならコレ! 「きつねの鶏めし」
- 新大阪駅ならコレ! 「八角弁当」
東京駅ならコレ!
「深川めし」
JR東海リテイリング・プラス/1200円
東京駅の駅弁には「深川めし」が2つあります。ともにルーツはJRが発足した1987(昭和62)年に誕生した「日本食堂」の「深川めし」。その後、日本食堂の業務が分割されていくなかでJR東日本系とJR東海系の2つに分かれて現在に至ります。
東海道新幹線の構内で販売する「深川めし」は、日本食堂から新幹線の食堂車やビュフェなどとともに「ジェイダイナー東海」に継承され、100系新幹線電車のカフェテリアを手がけた「パッセンジャーズ・サービス」と合併して生まれた「ジェイアール東海パッセンジャーズ」を経て、今は「JR東海リテイリング・プラス」が製造しています。
東海道新幹線の「深川めし」は、日本食堂時代からの炊き込みごはん系。穴子の蒲焼き、べったら漬けといった江戸風情を感じさせるおかずが、東京駅からの旅の始まりを盛り上げてくれます。
品川駅ならコレ!
「品川貝づくし」
JR東海リテイリング・プラス/1250円
2003年10月1日の東海道新幹線品川駅開業に合わせて誕生した「JR東海リテイリング・プラス」の駅弁。当時、東口の再開発でオフィスビルが増えたことを反映して、品川らしさと新幹線のメインユーザーであるビジネスマンへのアプローチを試みて開発されたのが「品川貝づくし」です。
江戸前の海が広がっていた昔の品川を彷彿とさせるレトロなパッケージを開けると、アサリ、シジミ、ハマグリ、ホタテ煮、貝柱と、5種類の貝が一面に敷き詰められています。茶飯には青海苔がふられ、焼海苔も敷かれていて、口に入れるとその香りから海のイメージが広がります。
このボリューム感と酒のアテにもマッチした作りは、新幹線に乗り込むビジネスマンの心をがっちりと掴んでいます。
新横浜駅ならコレ!
「シウマイ弁当」
崎陽軒/950円
1日約3万個が売れるとされる「崎陽軒」の「シウマイ弁当」。「シウマイ弁当」は東海道新幹線よりひと足早く、2024年4月に発売70周年を迎えました。いわば、東海道新幹線の10年“先輩”。掛け紙にも「70」と書かれた記念のロゴが入っています。
崎陽軒は1908(明治41)年の創業。東海道の駅弁業者としては比較的後発ですが、初代社長・野並茂吉の類まれなるアイデアとバイタリティーで鉄道構内営業をリードする存在になっていきました。1928(昭和3)年の「シウマイ」発売。そして戦後、シウマイ娘による知名度アップを経て、横浜名物として定着してきた「シウマイ」の人気を不動のものとしたのが、「シウマイ弁当」と言っても過言ではないでしょう。
小田原駅ならコレ!
「デラックスこゆるぎ」
東華軒/1100円
製造する「東華軒」は1888(明治21)年の創業で、現存する東海道新幹線の駅弁業者としては最古の歴史があります。
「デラックスこゆるぎ」は1984(昭和59)年、「こゆるぎ茶めし」の豪華版として誕生し、2024年で発売40周年を迎えた駅弁。「こゆるぎ」とは、相模国にあった余綾(よろぎ)郡に由来するとされ、一説には、「小田原」という地名の由来ともいわれます。
「デラックスこゆるぎ」は、小田原名産の梅の樽をモチーフとした経木の曲げ物が懐かしさを感じさせるパッケージ。また、エビの天ぷら、鮭の塩焼き、鶏の照焼きをはじめとしたおかずがのった、“華”のある駅弁です。なかでも東華軒自慢の「鶏そぼろ」は、鶏肉、たけのこ、グリーンピースを甘めに味付けし、東華軒の駅弁ではもっとも人気のあるおかずです。
熱海駅ならコレ!
「小鯵押寿司」
東華軒/1280円
熱海駅は2025年で開業100年を迎えます。当初は国府津(こうづ)から熱海を結んだ熱海線の終着駅でした。国府津を拠点に駅弁を製造してきた「東華軒」は、熱海線の開業に伴って、その実績をもとに小田原、熱海へ進出。今も熱海駅の新幹線改札内には東華軒の売店があります。
東華軒の名物「鯛めし」と並ぶロングセラー駅弁が、「小鯵押寿司」。明治の終わり頃、名物弁当を作りたいという思いで小アジが食材として選ばれ、塩で締め、酢に漬けて、関西風の押寿司にして売り出されました。その後、関東大震災や戦後の食糧難では製造が中断された時期もありましたが、みごとに復活を遂げています。
小アジの押寿司が8カン、しそ巻きの押寿司が2カンというシンプルな作りのなかに、伝統の味を感じます。
三島駅ならコレ!
「港あじ鮨」
桃中軒/1080円
三島駅の発展には、「三つ」の段階がありました。一つ目は、長泉村(当時)に設けられた初代三島駅(現・御殿場線下土狩駅)の開業。二つ目は、1934(昭和9)年に設けられた現在の三島駅の開業。そして、三つ目が1969(昭和44)年の東海道新幹線三島駅の開業です。いずれも当初は駅自体がなく、地元の情熱が開業に結び付いたのも特筆すべき点です。
この三島駅で駅弁を販売する「桃中軒」の名物駅弁「港あじ鮨」も、静岡近海のアジが太巻き、にぎり、にぎりのワサビ葉包みという、「三つ」の味が楽しめます。伊豆天城産ワサビが醤油・すり器とともに添えられ、このワサビを自分ですり下ろす時がたまりません。「三つ」の三島駅の歴史に思いを馳せ、「三つ」のアジ寿司に舌鼓を打つというのもアジなものです。
新富士駅ならコレ!
「駅弁版 極 富士宮やきそば弁当」
富陽軒/1200円
1988(昭和63)年に開業した新富士駅。上り列車が発着する1番線ホームは、ガラス張りになっていて、天候に恵まれれば、富士山の鑑賞に最高の駅。「こだま」のみの停車ですが数分停まる列車が多く、気分転換にホームに降りてみたくなります。
この新富士駅だけで売られているのが、「富陽軒」の各種駅弁。なかでも「駅弁版 極 富士宮やきそば弁当」は、紐を引き抜いて蒸気で温める加熱式の焼きそば駅弁です。
富士宮のご当地グルメとして有名になった焼きそばに欠かせない「肉かす」を使った、独特のモチモチした食感のある「蒸し麺」の焼きそばは、具材に牛肉、エビ、ホタテ、イカに野菜が入った豪華版。ピリ辛のわさびご飯も入ってボリュームのある作りとなっています。現在は平日限定営業。休みをずらした旅で味わえる逸品です。
静岡駅ならコレ!
「元祖鯛めし」
東海軒/850円
駅弁はご当地性が重視されます。その先駆けとなったのが、静岡駅弁・「東海軒」の「元祖鯛めし」。1897(明治30)年発売、127年の歴史を誇る、駅弁界随一のロングセラー駅弁です。
1892年、静岡市内で起きた大火で東海軒の前身・加藤辨當店は焼け出されてしまいます。その見舞いとして贈られたのが、静岡では「興津鯛」の呼び名もある近海もののアマダイ(甘鯛)でした。アマダイは煮崩れしやすいため弁当には向かないと考え、まかない料理としたのですが、これが魚嫌いのこどもたちに受けたのです。以後、5年の歳月をかけて開発され、世代を超えて受け継がれてきたのが「元祖鯛めし」です。
ひと口ほおばれば、ごはんの甘さを引き立てる甘い味付けと軽い食感に箸が止まりません。こどもから大人まで愛される静岡の味です。
掛川駅ならコレ!
「浜の釜めし」
自笑亭/1000円
東海道新幹線の掛川駅は1988(昭和63)年の開業。在来線側の北口は、1940年に改築された木造駅舎が今も現役で、新幹線の車窓からも見える掛川城は、30年前、天守閣が日本で初めて本格的に木造で再建された城です。
掛川駅での駅弁は、新幹線駅開業以降、浜松の「自笑亭」が担ってきました。売店を設けて、掛川城を築城した山内一豊にちなんだ「一豊御膳」をはじめ、掛川オリジナルの弁当を置いていた時期もありましたが、現在は、浜松駅の人気駅弁の一部が改札外の「グランドキヨスク」に置かれています。
なかでも「浜の釜めし」は、昭和から続くロングセラー。五目ごはんに玉子、鶏そぼろなどが彩りよく、目にもうれしい華やかな弁当です。ちょっぴりですが、うなぎが入っているのもうれしいポイントです。
浜松駅ならコレ!
「うなぎ弁当(赤ワイン仕込)」
自笑亭/2400円
浜松駅弁・「自笑亭」のルーツは、幕末の安政年間(1854~1860年)、浜松城下にあった料理店。城主の料理番を務めるようになると、「人の心を安らかにさせる自然の笑みが素晴らしい」と主人が称賛され、殿様みずから「自笑亭」と命名したと伝わります。
自笑亭は駅開業と同時に鉄道構内営業参入。名物はやはり、「うなぎ」を使った駅弁です。浜名湖のうなぎ養殖は、のちに養殖業に大きく寄与する服部倉治郎が明治時代に東海道本線の汽車から浜名湖を眺め、「うなぎの養殖にいい」と着想したことが発展のきっかけ。列車がなければ、浜名湖のうなぎも今のように名物になっていなかったのかもしれませんね。
「うなぎ弁当(赤ワイン仕込)」は前日午前までの予約制です。この駅弁はうなぎの専門店同様、うなぎを1枚1枚開いて、焼いて、タレを塗ってまた焼くを繰り返しています。そのふんわりとした食感に、自然と笑みがこぼれます。
豊橋駅ならコレ!
「手筒花火」
壺屋弁当部/1210円
豊橋は旧東海道吉田宿から発展した町。明治時代、愛媛県の吉田と地名が重複するため、豊川に架かる橋の名前から「豊橋」と改名されました。この豊橋の近くで営業していた回漕問屋と料理旅館・壺屋に由来するのが、1888(明治21)年の東海道本線開通以来、豊橋駅の構内営業を手がける「壺屋弁当部」です。
ひときわ目を引く駅弁は「手筒花火」。手筒花火は戦国時代の狼煙(のろし)が起源とされ、職人が抱えた筒から花火が噴き出す勇壮な風景は、この地域の祭には欠かせない風景。そんなエピソードが記されたしおりに目をやりながら、花火を模した華やかな海苔巻きと名物・竹輪をはじめとしたおかずをつまめば、「ひかり」「こだま」号ののんびりとした旅も楽しくなってきます。
三河安城駅ならコレ!
「稲荷寿司」
壺屋弁当部/680円
三河安城駅の駅弁は現在、オリジナルのものはなく、原則として豊橋と名古屋の名物駅弁が、シェアする形となっていて、改札外の「ベルマートキヨスク」のケースに陳列されています。
ここでは豊橋の名物駅弁の、豊川稲荷ゆかりの「稲荷寿司」をチョイス。掛け紙には鳥居と狐が描かれていますが、豊川稲荷は神社ではなく曹洞宗の寺院です。昔からの神仏習合の名残を感じますね。稲荷寿司は地元産の醤油と白ザラメを使って甘く仕上げられたお揚げと、ほどよい酸味の酢飯が心地よい食感。入り混じることは色々なものに深みを与えてくれます。
ちなみに三河安城駅は、新幹線の「こだま」は停車しますが、在来線の特別快速・新快速・快速といった快速系の列車はすべて通過するので、乗り継ぎの際は要注意。
名古屋駅ならコレ!
「天下とり御飯」
松浦商店/1260円
名古屋でもっとも歴史がある駅弁業者の「松浦商店」。もともとは大須の「八千久(やちく)」という料亭が発祥で、1922(大正11)年に駅開業から構内営業を担っていた服部商店の後継者不在に伴って、鉄道構内営業を引き継いだ老舗です。
なかでも歴史ある駅弁は「天下とり御飯」。この駅弁は時代によって商品名が変わっていて、1932(昭和7)年には販売されていたことが分かっています。当初の名前は「親子めし」でした。その後「親子めし」→「とり御飯」→「天下とり御飯」→「特製とり御飯」と商品名は変わり、2016年のリニューアルで、再び「天下とり御飯」の名前となりました。
名前や装いは変わっても、伝統の鶏だしで炊いたごはんと鶏づくしのおかずは健在。名古屋になくてはならない駅弁のひとつです。
岐阜羽島駅ならコレ!
「こだま」
松浦商店/980円
60年前、東海道新幹線が開業した時は、「ひかり」が東京・名古屋・京都・新大阪のみの停車。それ以外の駅は「こだま」しか停まりませんでした。現在は、「ひかり」と「こだま」が停まる岐阜羽島駅ですが、駅弁は改札外の「ベルマートキヨスク」で名古屋の一部駅弁が販売されています。
ここでチェックしたいのは、新幹線開業とともに誕生した松浦商店の幕の内「こだま」。注目したいのは焼魚です。「松浦商店」は料亭以来の伝統で、特製のたれを使い魚を串で手焼きしています。焼魚をよく観察すると、小さな焼き串の穴の跡が分かることがあります。これを見つけられると、その手間が感じられ幸せな気持ちになるのです。
8月下旬からはより原点に近づけるべく肉団子が魚のフレークにリニューアルされ、60年目にしてさらに進化を遂げている駅弁です。
米原駅ならコレ!
「湖北のおはなし」
井筒屋/1480円
JR発足当初、東海道新幹線の各駅で販売された1000円の駅弁、「新幹線グルメ」を覚えていますか? 各調製元の趣向が凝らされた弁当が登場しましたが、その多くは惜しまれながらも姿を消しました。そのなかで、今も続くロングセラー駅弁となっているのが、江戸時代・安政年間創業、長浜の船着き場にあった旅籠をルーツとする「井筒屋」が製造している「湖北のおはなし」です。
風呂敷に包まれた竹籠風の折箱の中から現れるのは、春は山菜、夏は枝豆、秋・冬は栗と季節によって変わるおこわ。鴨や赤かぶ漬けをはじめとした湖北地方ゆかりのバラエティ豊かなおかずが脇を支えます。東京~大阪を定期的に移動する方の中には、この弁当を目当てに米原停車の「ひかり」「こだま」を選ぶ人も少なくありません「。
京都駅ならコレ!
「きつねの鶏めし」
淡路屋/980円
京都の駅弁は迷う。駅前の地下街や駅ビルは充実しているし、新幹線改札内でもさまざまな弁当が陳列されています。そのなかで、「駅弁マーク」入りの弁当を選ぶなら、神戸を拠点に京阪神の駅弁を製造する「淡路屋」でしょう。
なかでも「きつねの鶏めし」は、京都をテーマに作られた駅弁。祇園にある“原了郭(はらりょうかく)「黒七味」で食べる、鶏とお揚げさんのお弁当”がキャッチフレーズで、季節ごとにアレンジがなされます。
旨みたっぷりの鶏肉と心地いい甘さの揚げに、山椒の香りが効いたピリ辛の黒七味がいいアクセントとなり、どんどん箸が進みます。たとえ京都観光でお腹いっぱいでも、ほどよいボリュームの駅弁だから、帰りの旅のよきお供になってくれる――このあたりも、老舗駅弁業者の技なのかもしれません。
新大阪駅ならコレ!
「八角弁当」
水了軒/1320円
大阪の名物駅弁として知られる「八角弁当」。誕生は国鉄時代の1975(昭和50)年で、平成の半ばごろ、一時中断した時期もありましたが、屋号と弁当のブランドは受け継がれて、間もなく半世紀を迎えます。
昔から変わらない俵型ごはんと焼き魚、煮物を中心とした幕の内系のおかずが、八角形の経木の折箱にたっぷり入っています。なかでも煮物は関西らしく、だしを効かせた薄味の上品な味付けが特徴。最大のこだわりは特注の専用釜で約50分をかけて作る高野豆腐だそうで、口に入れればじゅわっとだしの旨みを感じられます。
「八角弁当」は東海道新幹線で移動する著名人のファンも多い商品。遅い時間帯は新大阪駅の売店では完売していることもしばしばあるのでご注意を。
文・写真/望月崇史
- ※記事中の情報は2024年9月時点のものです。
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