2024.09.24ジパング俱楽部 駅開業の大正時代から受け継がれる秘伝の味。厚岸駅の「氏家かきめし」|駅弁2024
北海道厚岸(あっけし)町
鉄道旅のおとも、駅弁。車内で開くわくわく感を忘れられない人も多いはずです。どこか懐かしさも感じるロングセラー駅弁の人気の理由を、調製元に直接伺いました。
根室本線の釧路駅〜根室駅間は通称「花咲線」と呼ばれ、車窓には湿原地帯や海岸線のすがすがしい景色が広がります。穏やかな厚岸湾と厚岸湖のそばに位置するのが厚岸駅。周辺は古くからカキの産地として知られています。今回紹介するのは、厚岸駅の開業と同時期に食堂として営業を始めた「氏家(うじいえ)待合所」の郷土色溢れる駅弁「氏家かきめし」です。
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「氏家かきめし」を販売する厚岸駅の「氏家待合所」
1917(大正6)年に開業。花咲線の途中駅では唯一の有人駅として駅員が常駐し、みどりの窓口や快適な待合室を備えています。
待合室には厚岸町の観光ガイド動画を放映するモニターや、ウイスキー工場「厚岸蒸溜所」のサンプル瓶が並ぶコーナーもあります。
厚岸駅弁「氏家かきめし」
カキの風味が口いっぱいに広がる
厚岸駅に降り立つと、駅前ロータリーの右手に「元祖かきめし弁当」の幟(のぼり)と小さな売店が見えます。ここが名物の「氏家かきめし」を製造・販売する「氏家待合所」。テイクアウトで駅弁を購入することができます。
花咲線の車窓に広がる湿原を思わせる緑色の掛け紙を外すと、真ん中に大粒のカキが4つ、少し斜めに角度をつけてきれいに並んでいます。カキの煮汁の旨みがしっかりとしみ込んだ炊き込みごはんはヒジキ入り。
カキのほかに、厚岸産のツブ貝、アサリも載っていて、3種の貝を楽しめます。椎茸やフキ煮、漬け物も名脇役。
毎朝7時から仕込み始め、三温糖、上白糖、ザラメ、水飴、氷砂糖と、それぞれの食材に合った糖類を使い分けて別々に煮込むという手間のかかる工程を踏んでいます。
味付けや色が濃くなりすぎないよう、ちょうどいい具合にカキを煮上げたら、煮汁から取り出して待機。ごはんやほかの食材はすべて弁当箱に盛り付けておき、注文を受けてからカキを並べて完成させます。
ぷりっと弾力のあるカキはもちろん、炊き込みごはんからもカキの風味がふんわりと鼻に抜け、カキの旨みを存分に堪能できる贅沢(ぜいたく)な駅弁です。
「氏家かきめし」の製造を手がける「氏家待合所」
汽車の待ち時間を過ごす食堂から始まった
今では全国の百貨店で行なう催事で、駅弁部門のトップの人気を争うほど有名になった「氏家かきめし」。「氏家待合所」が創業したのは、今から107年も前のことです。
当時、汽車が石炭の積み足しなどで長時間停車することがあり、寒い北海道では乗客が暖をとりながら過ごせる「待合所」が各地にありました。厚岸駅では「氏家待合所」がその役割を果たし、空腹を満たせる食堂を兼ねた場所だったそうです。
「氏家待合所」の梨本社長にインタビュー
―――かきめしの駅弁が誕生したきっかけは?
僕が聞いた話では、幼い頃に体が弱かった先代のために、母親が栄養のあるカキを使ってかきめしを作っていたそうです。それが駅弁として人気になり、百貨店の催事にも出店するようになりまして、多い時には1日で2000個ほど売れることもあったそうです。
―――厚岸の「氏家かきめし」がほかのかきめしと違うところは?
なんといっても、カキの煮汁と秘伝のタレでしっかりと味付けた炊き込みごはんが特徴ですね。
ここまで濃い色に仕上げたものは珍しいと思います。三温糖や水飴などさまざまな糖分を使い分けているため、具材の味わいに変化もあります。
昔は駅弁といえば汽車の中で、常温で食べるものでしたが、今はおみやげとして買って自宅で食べる人も多い。ですから温めてもおいしく食べられるような味に仕上げています。じつは時代に合わせて味付けを毎年見直しているんですよ。
―――催事で購入もできますが、厚岸に来てこそ楽しめることは?
催事でも作りたてを大切にしていますが、厚岸の店舗では少量ずつ作れるので、より手作りの温かさを感じられると思います。それから調理に使う水なのか分かりませんが、何かがよりおいしくさせるんですよね。
お弁当を買って、厚岸の景色を見ながら味わうのも気持ちがいい。厚岸駅から歩いて4〜5分の「道の駅 厚岸グルメパーク」からの眺めがおすすめですよ。
厚岸駅の新定番! 「ほたてかきめし」
氏家待合所
問い合わせ先 | 0153-67-8090 |
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販売場所 | 氏家待合所 |
時間 | 10〜16時(12〜3月は〜15時) |
定休日 | 木曜、年末年始 |
交通アクセス | 根室本線厚岸駅徒歩約1分 |
URL | https://www.kakimeshi.com |
「氏家かきめし」を買いに厚岸駅に行こう!
根室本線の釧路駅~根室駅間(花咲線)を走る快速「ノサップ」が厚岸駅に停車します。
釧路駅を11時15分に出発し、途中駅に停車しながら、厚岸駅に到着するのは12時2分。ちょうどお昼時に駅弁を買って、眺めのいい場所で味わえます。
「氏家かきめし」と一緒に楽しみたい観光スポット
かき祭りが開催される 子野日(ねのひ)公園
厚岸駅からバスで20分ほどの子野日公園は、春には桜の名所として親しまれています。
エゾヤマザクラなど約1200本の桜の葉が、秋にはだいだい〜赤に色づいて風情ある眺めに。
春と秋に行なわれる「あっけし牡蠣まつり」の会場でもあり、祭りの日は道内外から多くの人が集まります。カキやホタテ、ホッキ、サンマなど新鮮な魚介類を買って、その場でバーベキューができるのが魅力。2024年秋は11月16・17日に開催されます。
子野日公園
問い合わせ先 | 0153-52-3131(厚岸観光協会) |
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交通アクセス | 根室本線厚岸駅から光栄行きくしろバス厚岸町内買い物循環バス約20分の子野日公園下車すぐ |
地元駅弁屋さんのおすすめスポット
カキづくしを楽しめる「道の駅 厚岸グルメパーク」
「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」の愛称で親しまれる道の駅。
高台にあり、カキが養殖されている厚岸湖や牡蠣島弁天神社、厚岸湾、厚岸大橋などを見わたせます。その名も「牡蠣の見える丘」のベンチや、施設3・4階の展望室などで駅弁を食べるのがおすすめ。
店内には炭焼きバーベキューを楽しめる店やレストラン、オイスターバールもあり、駅弁を食べた後にさらなるカキづくしを楽しむのもいいでしょう。
道の駅 厚岸グルメパーク
問い合わせ先 | 0153-52-4139 |
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時間 | 9〜19時(11〜3月は10〜18時) |
定休日 | 月曜(祝日の場合は火曜) |
交通アクセス | 根室本線厚岸駅から徒歩約4分 |
URL | https://www.conchiglie.net |
文・写真/春日明子 写真(梨本社長)/田中仁志
- ※記事中の情報は2024年9月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。
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