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2025.03.24ジパング俱楽部学芸員とめぐる ステンドグラス煌(きら)めく「小樽芸術村」|大人のためのミュージアムガイド

北海道小樽市

忙しい日常から一歩離れ、知性と感性を豊かにする時間を過ごしませんか。じっくり作品と向き合う時間を楽しむ、大人ならではのミュージアムでの過ごし方を、施設の方にガイドしていただきました。

1880(明治13)年に北海道初の鉄道として旧国鉄手宮線が開通し、石炭の積出港として発展した小樽。
商業と金融業が栄えた町には、明治〜昭和にかけて建てられた美しい歴史的建造物が数多く残ります。
小樽運河周辺に立つそれらの建物のいくつかを、美術館として保存・公開しているのが「小樽芸術村」です。歴史ロマン溢れる小樽の旅にふさわしい、華やかな芸術世界へと案内していただきました。

  • トップ画像は「似鳥美術館」

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「小樽芸術村」について


小樽運河沿いに立つ「ステンドグラス美術館」 小樽運河沿いに立つ「ステンドグラス美術館」

観光客がまず訪れる小樽の名所、小樽運河の周辺に残る旧荒田商会・旧高橋倉庫・旧三井銀行小樽支店・旧北海道拓殖銀行小樽支店・旧浪華倉庫の5棟4館を利用。

貴重な建物を保存しながら、国内外の絵画や工芸品を展示しています。家具販売で知られるニトリグループの公益財団法人似鳥文化財団が運営しているためか、展示室の空間デザインにもセンスを感じます。

それぞれの館に散りばめられたステンドグラスの輝きも印象的です。


今回案内してくれるガイドさんはこちら

学芸員・金澤聡美さん。

小樽芸術村の広報も兼任している金澤さんは北海道の出身。 多岐にわたる美術品を収蔵しているため、幅広い知識が日々培われるそう。

見どころ① ステンドグラス美術館

いたるところで出迎えるステンドグラスの数々


荘厳な雰囲気の館内 荘厳な雰囲気の館内


ステンドグラスの制作工程を紹介 ステンドグラスの制作工程を紹介

昔の制作道具 昔の制作道具

大豆などの穀類を保管する倉庫として1923(大正12)年に建てられた旧高橋倉庫。入口は旧荒田商会の建物を利用しています。
「外から見ると小樽軟石の石造りなのですが、中に入るとこのように木材の骨組みが現れ印象が変わるんです」と金澤さん。

剥き出しの梁(はり)がめぐる無骨な倉庫建築の中は、荘厳なステンドグラスが壁一面に飾られ、さまざまな色のガラスを通した光が床に投影しています。
ここにあるのは19世紀後半〜20世紀初頭にイギリスで制作され、実際に教会で使われていたステンドグラスの数々。
「イギリスでは教会が取り壊された時期があり、こういった作品は散り散りになってしまったのですが、セットでご覧いただけるのは貴重です。代表作はあちらの一番大きなもの。戦勝記念と戦没者の慰霊のために作られた『神とイギリスの栄光』という作品です」

「小樽芸術村」で最初の美術館として2016年に開館して以来、内部の圧倒的な美しさが度々話題になっています。
館内は撮影も可能。写真映えするステンドグラスをSNSに投稿する人も多い美術館です。

見どころ②  旧三井銀行小樽支店

経済都市・小樽を象徴する優雅な銀行建築


1927(昭和2)年の創立当時の天井の石膏飾りを彩るプロジェクションマッピング 1927(昭和2)年の創立当時の天井の石膏飾りを彩るプロジェクションマッピング


当時最先端の建築構造を用いた建物 当時最先端の建築構造を用いた建物

地下にある貸金庫室 地下にある貸金庫室

ステンドグラス美術館の裏手に位置し、石積みの外観が海外の建物を思わせる旧三井銀行小樽支店。

広々とした吹き抜けの内部は天井の石膏飾りの意匠が美しく、そこに1時間ごとにプロジェクションマッピングが映し出されるという仕掛けがあります。
ここでの見どころは貸金庫室。ものものしい鉄扉の中に小さな貸金庫が並びます。

「金庫室の周囲にめぐるタイル張りの回廊が特徴的です。四隅に置いた鏡でどこに人がいても見える仕組みで、防犯カメラのような役割を果たしています」と金澤さん。
ひんやりと感じる地下の空間は重厚で銀行らしい雰囲気。
この建物は、小樽芸術村として開館後の2022年に国の重要文化財に指定されました。

見どころ③ 似鳥美術館

国内外の美術品、工芸品が勢揃い


日本画のコレクションが並ぶ 日本画のコレクションが並ぶ


アメリカン・アール・ヌーヴォーの旗手、ルイス・C・ティファニーの作品 アメリカン・アール・ヌーヴォーの旗手、ルイス・C・ティファニーの作品

旧北海道拓殖銀行小樽支店の建物を利用した美術館は、地下から4階までそれぞれに違うジャンルの美術品を展示。
1階に並ぶルイス・C・ティファニーのステンドグラスから始まり、階や展示コーナーごとに木彫、洋画、日本画などに分かれています。

ルノワール、シャガール、黒田清輝、横山大観、伊藤若冲(じゃくちゅう)や円山応挙など錚々(そうそう)たる作家作品は見ごたえ十分。日本画は季節感を取り入れて展示替えを行なっています。

「ほかの館もそうですが、建物ができた時代の作品を中心に収蔵しているのが特徴です。建物と作品の時代背景に思いを馳せながら鑑賞するのも楽しいと思いますよ」と金澤さんは話します。

見どころ④  西洋美術館

アール・ヌーヴォー、アール・デコを堪能


部屋のように仕切られた空間に家具などを展示 部屋のように仕切られた空間に家具などを展示


マイセン磁器の作品が並ぶ マイセン磁器の作品が並ぶ

細部まで眺めたくなる調度品の数々 細部まで眺めたくなる調度品の数々

2022年に開館した美術館。
小樽運河のすぐそばに立つ旧浪華倉庫の大空間を利用し、19世紀後半~20世紀初頭の西洋の邸宅をイメージした家具を中心に展示しています。

部屋のように仕切りながら見せる手法が楽しく、アール・ヌーヴォーとアール・デコなど、時代や様式ごとの違いを比較しながら鑑賞できるのも、おもしろいところ。
そしてここにも、イギリスやフランスのステンドグラスが飾られています。

エミール・ガレやルネ・ラリックらのガラス作品の展示数も圧巻です。


小樽芸術村

問い合わせ先 0134-31-1033
時間 10時〜16時30分(5〜10月は9時30分〜) ※変更になる場合があります。
定休日 水曜(祝日の場合は翌平日、5~10月は第4水曜のみ)、年末年始 ※西洋美術館ショップは年中無休
交通アクセス 函館本線小樽駅から徒歩約12分
値段 4館共通券2900円。西洋美術館・似鳥美術館・ステンドグラス美術館は各1200円、旧三井銀行小樽支店は500円
URL https://www.nitorihd.co.jp/otaru-art-base/

お役立ち情報

4館の美術館をすべて回るなら、所要3時間以上は見ておいたほうがゆっくりと作品世界に没入できそうです。
全館、番号がついた作品には自分のスマートフォンで接続できる音声ガイドが用意されているので、イヤホンを持参するとさらに楽しめるでしょう。
2025年には小樽運河周辺に、浮世絵専門の美術館を新たに開館予定です。

ひと休みするならここ 小樽芸術村ミュージアムカフェ


ステンドグラス美術館の2階にあるカフェでは、ステンドグラスやアンティークの家具に囲まれた優雅な空間でオリジナルのメニューを楽しむことができます。おすすめは余市にある「ニトリ観光果樹園」で収穫したリンゴを使った定番のアップルパイ(ドリンクとセットで1200円)。


小樽芸術村ミュージアムカフェ

問い合わせ先 090-9438-8476
時間 10〜15時
定休日 水曜(5〜10月は第4水曜のみ)
交通アクセス 函館本線小樽駅から徒歩約12分

最寄り駅情報 「小樽芸術村」へは小樽駅から!


札幌駅から函館本線で最速34分と近く、見どころも多い小樽駅周辺は、札幌観光とあわせて旅の計画を組みたい町。駅構内には“ノスタルジック・モダン”をコンセプトにした店舗エリアがあり、小樽みやげを選んだり喫茶店でくつろいだりしながら過ごせます。


紹介スポット一覧マップ

文・写真/春日明子

  • 記事中の情報は2025年3月時点のものです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。