2025.03.25ジパング俱楽部美術館職員とめぐる 芸術を身近に感じられる丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA・ミモカ)|大人のためのミュージアムガイド
香川県丸亀市
芸術鑑賞は難しいものだと思っていませんか? 急ぎ足の観光ではなく、じっくり作品と向き合う時間を楽しむ、大人ならではのミュージアムでの過ごし方を、美術館職員・学芸員さんおすすめのまわり方、鑑賞ポイントなどとともに案内します。
1902(明治35)年香川県生まれで、丸亀市ゆかりの画家、猪熊弦一郎(いのくまげんいちろう)は、東京やパリ、ニューヨークで絵筆を振るってきました。百貨店「三越」の包装紙『華ひらく』や、『小説新潮』の表紙絵も彼の作品です。猪熊氏ゆかりの地である丸亀市に1991年に開館されたのが、「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)」です。
自分の作品が常設される美術館の建築にあたり、猪熊氏が理想としたのは、気軽で、大勢に開かれた、来館者にエネルギーをあたえる、街と一体の楽しい美術館。そんな彼の想いに触れようと、展示室だけでなく、無料で利用できるスペースも案内してもらいました。
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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)について
美術館の正面。壁画の広場が印象的
猪熊弦一郎は、パリでマティスなど数々の芸術家と交流しながら絵の研鑽(けんさん)を積み、従軍画家、東京での創作活動を経て、50代でニューヨーク移住。現地では幾何学的な作品を残すなど、約70年にわたり第一線で活躍し続けました。
この美術館では、本人から寄贈された絵画など、約2万点を超える猪熊作品を所蔵しています。
見どころ① ゲートプラザ
日常的に美術を、という想いがここに
ゲートプラザには猪熊氏の立体作品も
壁画『創造の広場』の線は黒い石を埋め込んでいる
ロビーから見た、開放感ある展示室。撮影/増田好郎
今回この美術館を案内してくれたのは広報担当の佐伯(さえき)美帆さん。まずは美術館の顔、ゲートプラザから。丸亀駅南口を出て西に向けば目に飛び込んでくる壁画『創造の広場』が特徴的なスペースです。
この、馬とヘリコプターをモチーフにした壁画について猪熊氏は、「こどものいたずら書きのように描いた。こどもたちが壁画を見て、僕にも描けると思って親しみを持って美術館に来てくれたらうれしい。」(『MIMOCA開館30周年 どこにもない美術館を目指して』P18より)と話していたようです。
見どころ② 展示室
猪熊作品の常設展や企画展が
展示室A(2階)の様子。撮影/増田好郎
展示室B(2階)。さまざまな画風の猪熊作品を楽しめます。撮影/増田好郎
著名なモダニズム建築家である谷口吉生(よしお)が設計した美術館の展示室の特徴は、自然光が入り、天井が高くて開放感があること。ここでは猪熊氏の作品を常設展などで紹介するほか、現代アート作家を中心とした企画展も行なわれています。
また、彼が作家生活の中で集めた小瓶や針金細工、人形、ガラスのかけらなど、日常で見つけた何気ない収集品を紹介する「猪熊コレクション」も楽しい展示です。
見どころ③ カスケードプラザ
美術館で、瀬戸内の空の解放感も満喫
鎮座する石は、猪熊氏の友人イサム・ノグチの制作パートナー和泉正敏(まさとし)氏から寄贈された自然石
芸術鑑賞を終えて展示室を後にすると、3階にある無料の「カスケードプラザ」に。「校外学習などで来たこどもたちが、展示室を出てここに来るとワーッと元気に走り始めます」と佐伯さん。こどもも楽しい美術館にしたくて猪熊氏が仕掛けた広場ではないかと言われています。壁を落ちる滝の音で心安らぐのもまたよし。
美術館といえば閉じられた空間のイメージですが、こどもも大人も家族も解放感を満喫できる空間を、猪熊氏と建築家の谷口氏は作り上げています。
見どころ④ ミュージアムショップ
猪熊氏のアートを日常で楽しむ
ミュージアムショップ
ハーブティーやコーヒーも販売
猪熊氏のスケッチをバッグに
展示室にある、猪熊氏が収集したコレクションなどを見ればわかるように、「猪熊は、身の回りにある美しいものを収集し、大切にしていました」と佐伯さん。そんな彼の姿勢を映して、ミュージアムショップでは日常使いできるものを中心に販売しています。
猪熊氏のスケッチ、たとえば好んで描いた動物や「顔」をもとにしたトートバッグやハンカチ、画集やポストカード、そして、企画展関連の商品を並べてあります。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
問い合わせ先 | 0877-24-7755 |
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時間 | 10時~17時30分 |
定休日 | 月曜(休日の場合は翌平日)、年末 、展示替え期間中 |
交通アクセス | 予讃線丸亀駅下車、徒歩約1分 |
値段 | 300円、企画展は展覧会ごとに異なる(4月より観覧料変更あり。詳しくはWEBサイトにて) |
URL | https://www.mimoca.org/ja/ |
ひと休みするならここ 「カフェMIMOCA」
カフェには物販スペースも併設。撮影/増田好郎
「ベイクドチーズケーキ」450円と「レモネード」680円
カスケード広場を見わたすカフェ。ニューヨーク近代美術館新館も設計した谷口吉生の建築美に囲まれながらゆったりとした時を過ごせます。カフェで料理やスイーツを提供するのは、暮らしをテーマにした商品や丁寧な料理により地元高松市で人気の高い「まちのシューレ963」。「ベイクドチーズケーキ」(写真)や地元産レモンを使った「レモネード」(写真)などスイーツの評判です。香川県や四国産のものを中心にセレクトした安全でおいしい食材や、器など伝統的工芸品の販売スペースもあります。
最寄り駅情報 「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)」へは丸亀駅から!
丸亀駅南口。観光案内所(9時~17時30分)も併設
「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)」は駅入口の目の前に位置しており、アクセス抜群。
また、駅から徒歩約15分の「現存12天守(江戸時代までに造られた天守)」のひとつ、丸亀城も丸亀に来たら見たい観光スポットです。
紹介スポット一覧マップ
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- ※記事中の情報は2025年3月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。