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2025.07.23ジパング俱楽部土讃線で行く!スイッチバックの秘境駅と祖谷のかずら橋|モデルコース

秘境を感じる鉄道路線の旅へ――。この記事では、全国の“秘境路線”を1日でめぐるモデルコースを紹介。現地を訪れたライターが、知られざる魅力をルポします!

深い谷に刻まれた山並みを行く列車に乗り込み、森の中のスイッチバック駅、急流の大峡谷、平家落人伝説の山里へと、秘境づくしの鉄道旅。地元名産の麺と山の幸のランチも見逃せません。

  • モデルコースは2025年7月号『JR時刻表』掲載のダイヤをもとに平日の時刻を掲載。

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土讃線ってどんな路線?


美しき急流を展望できる大歩危(おおぼけ)駅 美しき急流を展望できる大歩危(おおぼけ)駅

香川県多度津駅から高知県窪川駅までを結ぶ198.7キロ の路線。

このうち香川県の讃岐財田駅から高知県の土佐山田駅間は、日本有数の秘境路線といっても過言ではないでしょう。

列車は、東西にのびる讃岐山脈と四国山地の険しい山並みを越え、吉野川の急流が浸食した深い峡谷に沿って運行します。 沿線の大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)やそれを囲む山並みは剣山国定公園の一部です。

6:27発 土讃(どさん)線高知駅スタート!

ホームを覆うアーチ状の屋根は県内産の杉材


高知駅前には坂本龍馬ら維新の志士の像も 高知駅前には坂本龍馬ら維新の志士の像も

高知駅からはまず土佐山田行きの普通列車に乗車。列車が駅を離れると、地元スーパーや神社など高知の暮らしの町並みを抜けていき、間もなく車窓に田んぼや畑が広がっていきます。

今、高知の話題といえば連続テレビ小説『あんぱん』。それに登場する「御免与(ごめんよ)駅 」のモデルである「後免(ごめん)駅」にこの列車は停車します。昔は「次はごめん、ごめん~」という車内アナウンスを初めて聞いた人が「なんで謝るの?」と言ったことがあるとか。


 

6:27発 土讃線

 

6:52着 土佐山田(とさやまだ)駅

7:04発の普通列車に乗り換え、いよいよ本格的な秘境路線へ


土佐山田駅の跨(こ)線橋 土佐山田駅の跨(こ)線橋

土佐山田駅で乗り換え、土讃線の旅を続けます。鉄路は右へ左へと方向を変え、列車の床下からは低くくぐもる大きな音が響いてきました。上り坂が続きます。車窓のすぐ外を流れるのは、緑の魔境のような森ばかりです。

 

7:04発 土讃線

 

7:14着 新改(しんがい)駅

ひとつめのスイッチバック駅


人の気配ゼロの秘境に突然鉄道分岐が! 人の気配ゼロの秘境に突然鉄道分岐が!


本線から分岐して新改駅へ 本線から分岐して新改駅へ

特急「南風」が通過していきました 特急「南風」が通過していきました

新改駅舎。道路も新改駅で行き止まりです 新改駅舎。道路も新改駅で行き止まりです

少し空と雲が近くなってきました。突然、前方に線路の分岐器が現れ、列車は本線から引き込み線に入り、しっとりとした森に囲まれたホームに停車。新改駅、標高274メートル。駅のそばに人の営みの場はなく、最寄りの民家は約1キロ道路を下った先だとか。この駅はもともと信号場として造られ、その後駅になりました。
しばらく待つと、本線を特急「南風」が通過。本線からこの駅はほぼ隠れています。各駅停車でなければ見ることさえ難しい秘境駅です。

特急が通過すると間もなく発車時間なので、そそくさと列車に戻ります。運転士が運転席を離れ、車内を歩いて後方の運転席に着き発車オーライ。いよいよスイッチバックです。列車は本線を横切り引き込み線に入って停車。再び運転士が車内を歩いて元の運転席に戻り、出発進行!分岐器で車輪がガシャリと鳴り、本線へ戻ります。スイッチバックのプロセスを実体験できる列車、今は珍しくなってきました。

 

7:22発 土讃線

 

車窓の見どころ 繁藤(しげとう)駅

JR四国の駅でもっとも高所にある駅


繁藤駅は標高347メートルにあります 繁藤駅は標高347メートルにあります

新改駅からはトンネルが続き、その合間に車窓が森の緑で染まります。雲がいっそう近くなり、列車は定刻7:35着で繁藤駅へ。標高347メートルに位置し、ここから先は列車の音の変化に気づかされます。

きつい登りが終わり、床下から響く低くうなるようなディーゼルエンジン音は小さくなり、代わりに、おなじみの「カタンカタン」という音が大きくなってきました。車窓には透明な川が現れ、列車の進行方向と同じ北へ流れていきます。

 

7:35発 土讃線

 

7:42着 土佐北川(とさきたがわ)駅

駅なのに、そこは橋。列車は清流をまたいで停まる


穴内(あなない)川をまたぐ土佐北川駅 穴内(あなない)川をまたぐ土佐北川駅


特急列車だと駅か橋なのか判断できないまま通過するかも!? 特急列車だと駅か橋なのか判断できないまま通過するかも!?

鉄のトラス構造といえば「橋」を思い浮かべますが、なんとその橋の上にあるのが土佐北川駅です。ここは清流・穴内川をまたぐ鉄橋で、列車はその橋に停車します。このようなユニークな形式の駅になったのは、厳しい自然環境があったから。

このあたりは雨量が多いことで知られ、激しい風雨が長時間続くこともしばしば。さらに周囲は急峻な地形が広がっています。こうした厳しい自然条件による土砂災害に対応するため、1986(昭和61)年に橋上に移転した駅なのです。

 

7:50発 土讃線

 


列車は雄大な吉野川の峡谷に沿って 列車は雄大な吉野川の峡谷に沿って

8:29着 大歩危(おおぼけ)駅

秘境への玄関で、清流と妖怪が歓迎


地域伝統の茅葺き民家を模した大歩危駅 地域伝統の茅葺(かやぶ)き民家を模した大歩危駅

この地域は児啼爺(こなきじじい)の伝承の地 この地域は児啼爺(こなきじじい)の伝承の地

線路に並走する穴内川が吉野川に合流し、車窓に雄大な峡谷風景が流れてくると間もなく大歩危駅。ホームに出ると展望台への小路(桜の遊歩道)があり、白波を立てながら流れていく吉野川の絶景を堪能できます。谷を挟んだ対岸の山並みをよく見れば、ずっと上の山肌に民家が点在。今のように吉野川沿いに鉄道や国道が整備される以前、山の上の方が経済や流通で栄え、暮らしの中心だったそうです。

この地域は妖怪の里として知られ、駅では児啼爺などがお出迎え。駅前から路線バスに乗り、秘境・祖谷(いや)地方にある「祖谷のかずら橋」を目指しましょう。


 

8:58発 大歩危駅下車すぐの大歩危駅前バス停からかずら橋夢舞台行きほか四国交通バス約21分のかずら橋夢舞台下車、徒歩約5分

 

足もとからぞわりと涼しい「祖谷のかずら橋」


ちょっと怖い、でも渓谷美が素晴らしい ちょっと怖い、でも渓谷美が素晴らしい

足もとを見続けるとスリリング 足もとを見続けるとスリリング

源氏との戦に敗れた平家の人々が逃げてきて定住した、という伝承がある祖谷地方。急傾斜の山肌に集落が点在するなど、秘境の名にふさわしい稀有(けう)な景観が残る山里です。

祖谷のかずら橋の起源にも平家落人が関係しているという説も。源氏の追っ手を逃れるため、すぐに切って落とせるようにサルナシ(シラクチカズラ)で架設したのだとか。橋床は渡した割木の幅と隙間がほぼ同じで、約14メートル下の川面まで素通しです。


祖谷のかずら橋

問い合わせ先 0883-76-0877(三好〈みよし〉市観光案内所)
時間 7〜8月は7時30分~18時30分、9~3月は8~17時、4~6月は8~18時
定休日 なし
交通アクセス 土讃線大歩危駅下車すぐの大歩危駅前バス停からかずら橋夢舞台行きほか四国交通バス約21分のかずら橋夢舞台下車、徒歩約5分
値段 550円
URL https://miyoshi-tourism.jp/spot/46/

 

11:13発 徒歩約5分のかずら橋夢舞台バス停から大歩危峡行きほか四国交通バス約23分の大歩危駅前下車すぐ

 

12:05発 大歩危駅


 

12:05発 特急「南風12号」

 


三好市にはさまざまな妖怪伝説が残っている 大歩危駅を見守る妖怪たち

大歩危駅出発から間もなく吉野川を渡る 大歩危駅出発から間もなく吉野川を渡ります


吉野川流域に多い山の上の集落 吉野川流域に多い山の上の集落

12:22着 阿波池田(あわいけだ)駅

高知・徳島・香川への交通の要「阿波池田駅」


歴史あるうだつの町並みも駅から徒歩圏内 歴史あるうだつの町並みも駅から徒歩圏内

南の四国山地と、北の讃岐山脈に挟まれた広い谷に位置する阿波池田駅。この駅がある三好(みよし)市池田は吉野川の川運など交通の要衝として、そして葉タバコ等の集積地として栄えました。

池田の旧街道には「うだつ」のある豪商の古民家など、歴史的建物が残る町並みがあり、なかには資料館として公開されている古民家もあります。


 

徒歩約2分

 

「heso salon(ヘソサロン)」で郷土の味と大自然の幸を


「半田そうめんとミニ丼セット」1490円 「半田そうめんとミニ丼セット」1490円。ミニ丼は鹿ロースト丼(写真)と海鮮丼から選べます


寿司店をリノベーションした店内 寿司店をリノベーションした店内

2000系特急型気動車の座席も 2000系特急型気動車の座席も


JR四国の乗務服の試着コーナーも JR四国の乗務服の試着コーナーも

列車のブレーキハンドルが店のドアに 列車のブレーキハンドルが店のドアに

阿波池田駅前通り商店街にあります 阿波池田駅前通り商店街にあります

JR四国の宿泊施設「4S STAY(フォースステイ)」のひとつ「古民家宿 阿波池田駅前」。「暮らすように、旅する。」をコンセプトにしたこの宿の一階にある食事処が「heso salon」です。

徳島県内で獲れたジビエ肉や半田そうめんなど四国の食にこだわったメニューが自慢で、夜の営業もあるため地酒やクラフトビール、三好市の地ワインなどお酒類も充実。四国山地の秘境の山々で育てたお茶など、地域の特産品も販売しています。四国の路線で走った特急の座席 など鉄道関係のインテリアがあるなど、鉄道ファンにはうれしい創作ダイニングです。


heso salon(ヘソサロン)

問い合わせ先 0883-70-0166(4S STAY内)
時間 11~14時 ・17〜21時(土・日曜・祝日は11時~14時30分・17〜21時)
定休日 月曜(祝日の場合は翌火曜休)
交通アクセス 土讃線阿波池田駅から徒歩約2分
URL https://www.instagram.com/heso_salon_camp/

 

徒歩約2分

 

13:36発 阿波池田駅


 

13:36発 土讃線

 

車窓の見どころ 坪尻(つぼじり)駅

ふたつめのスイッチバック駅は四国一の秘境駅!?


右が本線。スイッチバックの駅です 右が本線。スイッチバックの駅です


急な山肌に挟まれてホームが見えてきます 急な山肌に挟まれてホームが見えてきます

険しい山間(やまあい)にぽつんとたたずむ駅 険しい山間(やまあい)にぽつんとたたずむ駅

阿波池田駅を出発した列車は、広い河原をゆったりと流れる吉野川を渡り、屏風のようにそびえる讃岐山脈の狭い谷に吸い込まれていきます。そして坪尻駅。新改駅と同じくスイッチバックの駅です。

深く急峻な谷底にあり、見上げても森と空だけ。この駅から乗車する人はどこから来るのか、森の中から仙人みたいな人が現れるのか、などと想像しながらこの駅でのんびりしたいけれど、坪尻駅に停まる上り列車はこれが最終なので下車するわけにはいきません。車内で想像をめぐらせました。

ちなみに坪尻駅前に至るのは、歩くしかない山道。一番近い木屋床(こやとこ)集落は、急な山肌を標高差にして約200メートル登った先です。この駅がにぎわっていた頃、この山里にどんな暮らしや会話があったのか。短い停車時間ながらも、出合いの余韻が長い秘境駅です。

スイッチバックで坪尻駅を出るとすぐトンネルに。そして明るくなると香川県。秘境とは正反対の穏やかな田園が広がります。この地域に特徴的な、おむすび形の山も遠くに見えてきます。琴平駅、善通寺駅と、有名な寺社仏閣の最寄り駅をすぎると、高松行きの乗り換えがある多度津駅は間もなくです。

 

13:53発 土讃線

 

14:46着 多度津(たどつ)駅


 

15:02発 予讃線

 

15:33着 高松駅ゴール!



高知駅発
6:27発

高知駅

  • 土讃線
6:52着

土佐山田駅

7:04発

土佐山田駅

  • 土讃線
7:14着

新改駅

  • 土讃線
7:22発

新改駅

  • 土讃線、繁藤駅(車窓/7:35着発)
7:42着

土佐北川駅

7:50発

土佐北川駅

  • 土讃線
8:29着

大歩危駅

8:58発

大歩危駅前バス停

  • 四国交通バス
9:19着

かずら橋夢舞台バス停

  • 「祖谷のかずら橋」
11:13発

かずら橋夢舞台バス停

  • 四国交通バス
11:36着

大歩危駅前バス停

12:05発

大歩危駅

  • 特急「南風12号」
12:22着

阿波池田駅

  • 「heso salon」
13:36発

阿波池田駅

  • 土讃線、坪尻駅(車窓/13:52着13:53発)
14:46着

多度津

15:02発

多度津

  • 予讃線
15:33着

高松駅

紹介スポット一覧マップ

文・写真/大村嘉正 写真/マシマ・レイルウエイ・ピクチャーズ(坪尻駅俯瞰)

  • 記事中の情報は2025年7月時点のものです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。