2025.10.27ジパング俱楽部ドイツさんが「第九」を奏でた鳴門|外国人の愛した日本

徳島県鳴門市
現在放送中の連続テレビ小説『ばけばけ』で注目を集める、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲〈やくも〉)。ハーンのように、他の文化圏からやってきた外国人がよさを見出した、ゆかりの地を紹介します。
第一次世界大戦時にドイツ租借地「青島(チンタオ)」を攻撃した日本は、約4700名のドイツ兵俘虜を日本各地の収容所に移送しました。そのひとつが、四国遍路一番札所「霊山寺(りょうぜんじ)」に近い「板東俘虜収容所」です。
収容されたドイツ兵俘虜約1000人は、遠く吉野川の沖積平野を望むこの里山でドイツでの日常を再現し、オーケストラまで結成します。そして、男性ばかりでしたが、合唱付きで、日本で初めてベートーヴェン『交響曲第9番』の全楽章演奏を行ないました。
- ※「俘虜」と「捕虜」は同意語ですが、第一次世界大戦当時の表現を用いています。
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ドイツさん
最寄りは高徳線板東駅
四国遍路はこの駅から始まる、といっても過言ではない高徳線板東駅。一番札所霊山寺へはここから歩いて10分ほどで、その道沿いには昔からの遍路宿も。ホームには小さな赤鳥居が設置されていますが、これは「ドイツ橋」がある大麻比古(おおあさひこ)神社の鳥居です。
鳴門市ドイツ館
「ドイツさん」を伝える
収容所の歴史と、その後の交流を伝えます
捕虜といえば自由がなく、非人道的に扱われるイメージですが、板東俘虜収容所ではその逆。捕虜の国際法を遵守し、彼らの誇りや権利を尊重、敵でも信頼し理解する運営方針でした。それが何をもたらしたのかを「鳴門市ドイツ館」は伝えています。
館内では板東俘虜収容所でのドイツ兵の暮らしや、地元の人々との交流を展示するほか、ドイツ兵やその親族から寄贈された印刷物や写真もあります。彼らが「ドイツさん」と呼ばれ、親しまれていた歴史は、驚きと感動を与えてくれます。
ドイツ兵俘虜の暮らしを伝える展示
ベートーヴェン第九演奏の再現シーンも
また、実際の「板東俘虜収容所跡」も、この鳴門市ドイツ館から徒歩約10分にあり、こちらもぜひ見学したいところです。当時の兵舎(バラッケ)の基礎など、遺構も残っています。
「板東俘虜収容所跡」。当時のドイツ兵俘虜の暮らしを想像できる空間です
鳴門市ドイツ館
| 問い合わせ先 | 088-689-0099 |
|---|---|
| 時間 | 9時30分~16時30分 |
| 定休日 | 第4月曜(祝日の場合は翌平日)・年末 |
| 交通アクセス | 高徳線板東駅から徒歩約22分 |
| 値段 | 400円 |
| URL | https://doitsukan.com/ |
道の駅 第九の里 物産館
「第九」演奏当時の兵舎を移築
兵舎の一部を移築しています
当時のままの木組みが印象的
板東俘虜収容所の兵舎(バラッケ)の一部を移築した、国登録有形文化財。ドイツ兵はこのような建物を改修した講堂で日本初の「第九」を演奏しました。地元やドイツの物産品を販売。なると金時を使ったクグロフ型の「なると第九クーヘン」173円やドイツ産ビールが人気です。
ドイツ製品コーナーも
「なると第九クーヘン」やドイツビールをおみやげに
道の駅 第九の里 物産館
| 問い合わせ先 | 088-689-1119 |
|---|---|
| 時間 | 9~17時 |
| 定休日 | 第4月曜(祝日の場合は翌平日)・年末 |
| 交通アクセス | 高徳線板東駅から徒歩約20分 |
| URL | https://www.daikunosato-bussankan.jp/ |
ドイツ橋・めがね橋
ドイツの技術で架(か)けられた
ドイツ橋
鳴門市ドイツ館から徒歩約18分ほどにある大麻比古神社は、阿波国一の宮として徳島県でもっとも高い格式を誇る神社のひとつ。その境内にある「ドイツ橋」と「めがね橋」は、温かく受け入れてくれた地元の人々に感謝をこめて、ドイツ兵が母国の土木技術を生かしてボランティアで建造。ていねいな石積みにドイツ兵の心を垣間見ることができます。
めがね橋。ドイツ橋作り練習用だったとか
ドイツ橋・めがね橋
| 問い合わせ先 | 088-689-1212(大麻比古神社) |
|---|---|
| 時間 | 見学自由 |
| 交通アクセス | 高徳線板東駅から徒歩約30分 |
| URL | https://www.ooasahikojinja.jp/ (大麻比古神社) |
| URL | https://www.city.naruto.tokushima.jp/manabu/bunka/bunkazai/ken_shitei/10_doitsu-bashi.html (ドイツ橋・めがね橋) |
鳴門の渦潮(うずしお)
世界三大潮流のひとつを体感!
激しく複雑な潮流が渦潮を作り出します
瀬戸内海と太平洋の潮位の差が生み出す自然の驚異。満潮・干潮時の前後1~2時間内に現れる渦潮は世界最大級とも。観潮船や「大鳴門橋遊歩道 渦の道」で海上からの見学もできます。鳴門公園千畳敷展望台からは大鳴門橋と渦潮を一望できます。
鳴門公園千畳敷展望台
鳴門の渦潮
| 問い合わせ先 | 088-684-1731(鳴門市うずしお観光協会) |
|---|---|
| 時間 | 見学自由 |
| 交通アクセス | 鳴門線鳴門駅から鳴門公園行き徳島バス約29分の終点下車、徒歩約8分(鳴門公園千畳敷展望台) |
| URL | https://www.naruto-kankou.jp/uzu/ |
紹介スポット一覧マップ
文・写真/大村嘉正
- ※記事中の情報は2025年10月時点のものです。
- ※列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
- ※花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
- ※店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
- ※同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。


