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2024.11.11ジパング俱楽部村上春樹ゆかりの施設も!早稲田の無料ミュージアム&文化施設散歩|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発・おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報をお届けします。

今回紹介するのは、「早稲田大学」のなかにあるミュージアム・文化施設めぐりです。

文化の宝庫! 早稲田大学キャンパスをめぐる冒険へ


早稲田大学のシンボル「大隈記念講堂」は国の重要文化財 早稲田大学のシンボル「大隈記念講堂」は国の重要文化財

正門をまっすぐ進んだ先に立つ早稲田大学の創設者「大隈重信銅像」 正門をまっすぐ進んだ先に立つ早稲田大学の創設者「大隈重信銅像」

村上春樹、タモリ、久米宏など個性豊かな才能が集い、さまざまなジャンルの文化・芸能を継承してきた早稲田大学。

2021年に開館した「国際文学館(村上春樹ライブラリー)」をはじめ、現在キャンパスには大学が有する様々な文化資源を活用したミュージアム・文化施設があることをご存じでしょうか。

これらの施設は学生や卒業生でなくても自由に入ることができ、しかも見学は無料。キャンパス内や周辺には寛ぐのにぴったりなカフェも点在しています。

2024年秋から冬にかけては、新しい企画展も続々とスタート。そんな魅力溢れる早稲田の杜の散策に出かけてみませんか。

  • 今回紹介する施設は、いずれも早稲田大学早稲田キャンパス内にあります。
  • 早稲田キャンパスへのアクセス:山手線高田馬場駅から徒歩約20分または高田馬場駅前から早大正門行き都営バス約8分の終点下車すぐ。東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩約5分。

坪内博士記念演劇博物館

100万点以上の演劇・映画資料を収集!


「エンパク」の愛称で親しまれる建物自体が劇場資料 「エンパク」の愛称で親しまれる建物自体が劇場資料

1928(昭和3)年、近代日本の演劇・文学に革新的な業績を残した坪内逍遙(つぼうちしょうよう)の古稀(こき)と、その「シェークスピヤ全集」翻訳完成を記念して創設された演劇博物館。アジアで唯一の演劇専門博物館として、100万点以上の膨大な演劇・映画資料を収蔵しています。

なんと言ってもまず注目したいのは、シェイクスピアが活躍していた頃の英国の劇場を模した建物。「全世界は劇場なり」というラテン語が掲げられた正面の張り出しは舞台、両翼は桟敷席に見立てられ、まるで近世の劇場に入っていくようなワクワク感が味わえます。


レトロな意匠があちこちに見られる館内 レトロな意匠があちこちに見られる館内

貴賓室として使用されていた逍遙記念室。直筆原稿や愛用の文房具などを展示 貴賓室として使用されていた逍遙記念室。直筆原稿や愛用の文房具などを展示

1989(平成元)年、『ベルサイユのばら』公演で一路真輝が着用したオスカルの衣装 1989(平成元)年、『ベルサイユのばら』公演で一路真輝が着用したオスカルの衣装

館内に入れば、ブラウンに統一された色調、レトロなランプや階段の手すり、ギシギシと鳴る廊下……、タイムスリップして、過去の世界に迷い込んだかのようです。

館内は1~3階まであり、力の入った企画展はもちろん、古今東西の演劇を紹介する常設展も充実。2019年に大英博物館でも展示された河鍋暁斎(かわなべきょうさい)のアニメーションなどデジタルや映像展示も登場し、目を楽しませてくれます。

宝塚歌劇『ベルサイユのばら』初演50年にあたる2024年は、衣装やポスターなど関連資料も展示中(~2025年1月31日)です。


坪内博士記念演劇博物館

時間 10~17時(火・金曜は~19時)
値段 無料
URL https://enpaku.w.waseda.jp/
  • 休み 11月20日、12月4 ・18 ・26~31日、2025年1月1~5 ・15日(開館日についてはホームページ参照)

企画展「築地小劇場一〇〇年 新劇の二〇世紀」開催中


「女の一生」で杉村春子が着用した着物(右端)や新劇関係者が描いた絵などを展示 「女の一生」で杉村春子が着用した着物(右端)や新劇関係者が描いた絵などを展示


「築地小劇場」の入口を模したセット 「築地小劇場」の入口を模したセット

明治末から昭和初期にかけて活躍した劇作家・小山内薫(おさないかおる)のデスマスクや愛用のパイプ、パスポートも展示 明治末から昭和初期にかけて活躍した劇作家・小山内薫(おさないかおる)のデスマスクや愛用のパイプ、パスポートも展示

明治末期、歌舞伎や新派に対し、西欧演劇の影響を受けて生まれた新しい演劇ジャンル「新劇」。1924(大正13)年に誕生した小山内薫の「築地小劇場」がその中心となり、のちの文学座、劇団俳優座、劇団民藝などへと継承されていきます。

写真やポスター、衣装などの貴重な関連資料を基に、築地小劇場創設100年の歴史を振り返ります。

●開催期間:2025年1月19日まで
●休み:11月20日、12月4 ・18 ・26~31日、2025年1月1~5 ・15日(詳しくはホームページ参照)

  • 開館時間等は坪内博士記念演劇博物館に準じる。

国際文学館(村上春樹ライブラリー)

村上春樹&山本容子のコラボは必見!


階段本棚の本は階段や地下1階で読んでOK 階段本棚の本は階段や地下1階で読んでOK

2021年10月、村上春樹氏所蔵の書籍やレコードの寄託・寄贈を受けて開館。隈研吾氏によって生まれ変わった建物は、村上文学に登場する別の時空をつなぐ「トンネル」をイメージしたそうです。

館内に入れば、ライブラリーのシンボリックな存在ともなっている「階段本棚」が圧巻! 一気に村上春樹ワールドに引き込まれます。


現在の書斎を再現した「村上さんの書斎」(入室は不可) 現在の書斎を再現した「村上さんの書斎」(入室は不可)


舞台『海辺のカフカ』で使用された舞台装置 舞台『海辺のカフカ』で使用された舞台装置

ジャズ喫茶「ピーター・キャット」で使われていた椅子(見学のみ) ジャズ喫茶「ピーター・キャット」で使われていた椅子(見学のみ)

まずは1階のギャラリーラウンジへ。村上氏の作品や50言語以上に翻訳された書籍が並び、来館者は思い思いの本を手に取ってその世界に浸っています。向かいのオーディオルームでは北欧製のソファに座って村上氏の自室で鳴っている音楽を楽しむことも。

階段本棚をくぐって地下1階へ向かうと、舞台『海辺のカフカ』の舞台装置、村上氏が学生時代に経営していたジャズ喫茶「ピーター・キャット」のグランドピアノ、現在の書斎の再現など、ファンには外せない見どころが続きます。

館内のあちらこちらには椅子やソファ(しかも居心地のいい!)が置かれ、スペースも広く取られているためか、いるだけで気持ちがほどけていくのを感じます。いつの間にかに現実を離れ、村上氏の世界に絡め取られそうな危険な(?)別空間なのかもしれません。


ギャラリーラウンジには貴重な初版を集めた展示も(見学のみ) ギャラリーラウンジには貴重な初版を集めた展示も(見学のみ)

『羊をめぐる冒険』に登場する羊男。どこにいるか探してみて 『羊をめぐる冒険』に登場する羊男。どこにいるか探してみて

ジャズ喫茶「ピーター・キャット」でかけられていたレコードには村上氏本人による猫が ジャズ喫茶「ピーター・キャット」でかけられていたレコードには村上氏本人による猫が


国際文学館(村上春樹ライブラリー)

時間 10~17時
値段 無料
URL https://www.waseda.jp/culture/wihl/
  • 休み 水曜、2024年12月23日~2025年1月8日、2月1日~3月2日(開館日についてはホームページ参照)

山本容子版画展 「世界の文学と出会う~カポーティから村上春樹まで」 開催中


『哀しいカフェのバラード』のアトリエ制作風景。版画を乾かしている様子を再現 『哀しいカフェのバラード』のアトリエ制作風景。版画を乾かしている様子を再現


サン=テグジュペリ『夜間飛行』など集英社「世界の文学シリーズ」から サン=テグジュペリ『夜間飛行』など集英社「世界の文学シリーズ」から

銅版画家の山本容子氏と村上春樹氏の出会いは今から約36年前。村上氏が翻訳したトルーマン・カポーティの『クリスマスの思い出』を含むクリスマス三部作がきっかけでした。村上氏が「カポーティの小説世界に寄り添った絵を描ける人」と山本氏にオファーし、三部作は今も「大人のための絵本」として愛され続けています。

2024年9月、それ以来となる2人のコラボ作品として刊行された『哀しいカフェのバラード』(カーソン・マッカラーズ著)。この企画展は、2025年にデビュー50周年を迎える山本氏の作品の中から、カポーティ、ルイス・キャロル、マッカラーズなど「世界の文学」をテーマに構成されています。

とくに注目したいのは、実際にアトリエにお邪魔したかのような最新作のアトリエ制作風景の再現(Ⅰ期のみの展示)。会期後半の、絵本や児童文学作品にスポットを当てた展示も見逃せません(Ⅱ期にて展示)。

山本容子版画展「世界の文学と出会う~カポーティから村上春樹まで」
Ⅰ期:2024年10月1日(火)~2025年1月31日(金)
Ⅱ期:2025年3月3日(月)~2025年5月27日(火)

※開館時間、休館日、入館料は国際文学館に準じる。


山本氏が実際使っている銅版画小型プレス機も興味深い 山本氏が実際使っている銅版画小型プレス機も興味深い

銅版画の描画道具なども展示 銅版画の描画道具なども展示

橙子猫(オレンジキャット)

村上氏好みのコーヒー&ドーナツを


村上氏の作品にも登場するコーヒー&ドーナツを楽しみながら本を読むのも楽しい。「ハンドドリップコーヒー」500円、「シュガードーナツ」300円 村上氏の作品にも登場するコーヒー&ドーナツを楽しみながら本を読むのも楽しい。「ハンドドリップコーヒー」500円、「シュガードーナツ」300円

村上氏の作品に欠かせないのはコーヒーの香り。地下1階にあるカフェでは、村上氏の好みの味わいを想像してオリジナルでブレンドした豆を使用した「ハンドドリップコーヒー」、作品にたびたび登場する「ドーナツ」、『羊をめぐる冒険』で“僕”が作る「たらこスパゲティ」などが味わえます。

カフェは早稲田大学の学生さんが経営し、商品開発、催事企画、販売などすべて学生スタッフで担当。学内のサークルとコラボしてジャズライブなどのイベントも毎週のように開催するそうです。

カフェを楽しみながら、本を手にドーナツの穴について思考をめぐらせてみるのもいいかもしれません。


「ハンドドリップコーヒー」を淹れる店長の小松崎夏帆さん 「ハンドドリップコーヒー」を淹れる店長の小松崎夏帆さん

開催中の「山本容子版画展」のグッズ、安西水丸さんのグッズなども販売 開催中の「山本容子版画展」のグッズ、安西水丸さんのグッズなども販売


橙子猫(オレンジキャット)

時間 国際文学館に準じる。
定休日 国際文学館に準じる。
URL https://orangecat-wihl.com/

會津八一記念博物館

東洋の多彩なコレクションと優美な建築


建物はガウディを日本に紹介した建築家・今井兼次氏のデビュー作 建物はガウディを日本に紹介した建築家・今井兼次氏のデビュー作

東洋美術の研究者であり歌人、書家としても知られる會津八一(あいづやいち)。大学で美術史の教鞭をとった八一は作品と直に接することが不可欠とし、東洋古美術品の蒐集に力を尽くしたといいます。

博物館は、會津八一コレクションを柱のひとつとして1998年に開館。考古学の発掘資料、横山大観や前田青邨(せいそん)など近現代美術、アジアの陶磁器など幅広く収蔵しています。


大階段上を飾る横山大観と下村観山の合作『明暗』 大階段上を飾る横山大観と下村観山の合作『明暗』

『執金剛神立像』 岡崎雪聲(せっせい)(1892(明治25)年頃) 『執金剛神立像』 岡崎雪聲(せっせい)(1892(明治25)年頃)

優美な6本の柱や天井が見られる1階ホール 優美な6本の柱や天井が見られる1階ホール


建物東側の大扉には「八芒星(はちぼうせい)の透かし彫り」が 建物東側の大扉には「八芒星(はちぼうせい)の透かし彫り」が

旧図書館として1925(大正14)年に完成した建物自体も見どころ。

一見シンプルな建物のあちこちには、優美な柱頭を戴く6本の柱と天井、大扉の八芒星の透かし彫りなど美しい意匠がほどこされています。


會津八一記念博物館

時間 10~17時(入館は~16時30分)
値段 無料
URL https://www.waseda.jp/culture/aizu-museum/
  • 休み 水曜、12月24日~2025年1月8日、2月1日~3月2日、3月15・16日、3月20日、22・23日、29・30日(開館時間等はホームページ参照)

富岡コレクション展「禅書画-かたちともじ」開催中


『のゝ袋図』白隠慧鶴(はくいんえかく)(1685~1768) 『のゝ袋図』白隠慧鶴(はくいんえかく)(1685~1768)

『不識』東海昌晙(しょうしゅん)(?~1865)(右端) 『不識』東海昌晙(しょうしゅん)(?~1865)(右端)

東京都大田区にあった富岡美術館から寄贈された日本重化学工業の初代社長・富岡重憲(しげのり)コレクションから、その3分の1を占める禅書画を展示。

袋と団扇と杖で布袋を表わすなど当人の持ち物だけを描いた留守模様の禅画や、中国の武帝に「あなたは何者か」と問われた達磨が執着を捨てさせる意図で「不識(しらず)」と答えたという禅問答に由来する書など、「かたちともじ」に注目した展示となっています。

●開催期間:2024年11月24日まで
●休み:水曜(詳しくはホームページ参照)

  • 開館時間等は會津八一記念博物館に準じる。

特集展示「館仏三昧Ⅱ」開催中


ガンダーラ美術の特徴を持つ『菩薩立像』クシャーナ朝(2~3世紀) ガンダーラ美術の特徴を持つ『菩薩立像』クシャーナ朝(2~3世紀)

仏伝図 クシャーナ朝(2~3世紀) 仏伝図 クシャーナ朝(2~3世紀)

大隈重信邸にあった『帝釈天立像』室町時代(15~16世紀) 大隈重信邸にあった『帝釈天立像』室町時代(15~16世紀)

一心にほとけを見るという「観仏三昧」をもじった展示「館仏三昧」では、會津八一コレクションのなかからインド~中国~朝鮮半島~日本、東南アジアに伝わった仏教美術を紹介。幅広い時代と地域で生まれた仏像やその遙かなる伝播の道に思いを馳せたい。

●開催期間:2024年11月24日まで
●休み:水曜(詳しくはホームページ参照)

  • 開館時間等は會津八一記念博物館に準じる。

開催予定「SATSUMAとIMARI ―世界を魅了した日本産陶磁器―」

2階グランドギャラリーでは、館所蔵800点あまりの陶磁器の中から伊万里焼・薩摩焼の名品を展示。海外へ大量に輸出され世界の人々を魅了した、日本の優雅な陶磁器を紹介します。

●開催期間:2024年11月14日~2025年1月28日
●休み:水曜、12月24日~2025年1月8日(詳しくはホームページ参照)

  • 休館日等は會津八一記念博物館に準じる。

この記事を書いた人

綿谷朗子(わたやあきこ)

美術館と食べものを愛するフリーライター。
縁あって4年間暮らしたフランスでも、ほぼ食べものと美術館に時間を費やす。
旅のスケジュールを立てるのが大好きで、ついつい予定を盛り込み過ぎるが、列車に乗って車窓を眺めるのが息抜きの時間。東京都在住。

  • 記事中の情報は2024年11月時点のものです。
  • 写真はすべてイメージです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 花や紅葉など季節の景観は、その年の天候などにより変動しますので、現地へご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。
  • 新型コロナウイルス感染症等の影響により、掲載している内容が変更となる可能性があります。お出かけの際は事前にご確認ください。