トレたび JRグループ協力

2025.09.25ジパング俱楽部県外不出の作品も!世界有数の北斎コレクションを収蔵する「島根県立美術館」|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発・おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーター、役場や観光協会などの観光担当者が、ご当地ならではのおすすめスポットや旅ネタ情報を紹介します。

今回紹介するのは、「島根県立美術館」の広報・小澤順さんが教えてくれた、同館の「北斎コレクション」に関する情報です。

ここに来なければ出合えない、県外不出の希少な北斎作品を収蔵

島根県松江市

〈島根県立美術館 小澤さんより〉
江戸時代に多くの作品を残した絵師・葛飾北斎。その表現はモネやゴッホ、ドビュッシーなど19世紀のヨーロッパのアートシーンにも大きな影響を与え、“世界でもっとも有名な日本人画家”と評されています。

そんな北斎の作品を、「島根県立美術館」が数多く所蔵していることをご存じでしょうか。しかも世界で唯一の作品もあり、大部分は県外不出。そんな北斎作品が、なぜ島根県に? その答えを探しに「島根県立美術館」へご案内します。

世界にひとつだけの北斎作品も

宍道湖畔に立つ「島根県立美術館」には、3000点を超える浮世絵が収蔵されています。その半数を超える約1600点以上が北斎作品で、弟子や関連資料を加えると2500点以上。内容も北斎の青年期から晩年期までの各期の代表作を網羅し、画家人生をたどることができるほど。一つの館の北斎コレクションとしては国内外でも有数の規模を誇ります。


宍道湖畔に立つ「島根県立美術館」は夕日の名所としても知られます 宍道湖畔に立つ「島根県立美術館」は夕日の名所としても知られます

世界的に著名な『冨嶽三十六景』のいわゆる三役『凱風快晴(がいふうかいせい)』『山下白雨(さんかはくう)』『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』をはじめ、画業初期の「春朗(しゅんろう)」の落款を持つ肉筆画では世界で唯一の『鍾馗図(しょうきず)』や、「宗理(そうり)」から「北斎辰政(ときまさ)」へ改号した際に北斎みずからが出資して制作して知己に配ったとされる摺物で、数点しか確認されていない『亀図(かめず)』など、希少な作品が数多く見られます。

また、北斎の娘のお栄(葛飾応為〈おうい〉)が北斎の死を知らせるために門人へ送った手紙など、世界で1点しか確認されていない極めて希少な資料も。


『鍾馗図』(永田コレクション) 『鍾馗図』(永田コレクション)

『亀図』(永田コレクション) 『亀図』(永田コレクション)

もともと「島根県立美術館」には島根県松江市出身の実業家・新庄二郎(1901~1996)から譲渡された約60点の北斎作品を収蔵、のちに島根県が独自に購入した作品をあわせて約100点の北斎作品を収蔵していました。そこに津和野町出身の北斎研究者・永田生慈(ながたせいじ/1951~2018)が、蒐集したコレクション2398点を2017年に寄贈し、収蔵されることになりました。


珍しく画面の右縁が裁断されずに残る『冨嶽三十六景 山下白雨』(新庄コレクション) 珍しく画面の右縁が裁断されずに残る『冨嶽三十六景 山下白雨』(新庄コレクション)

寄贈者の遺志により県外不出に

永田生慈は、葛飾北斎研究の第一人者で、数多くの論文・主著・編著を執筆し、国内外で多くの北斎展を監修する一方、多岐にわたる北斎作品を蒐集していました。

2014年フランス・パリで開催された「北斎展」では、監修のほかに自身のコレクションを多数出品、その点数は作品の全体の7割を占めていました。展覧会は数カ月で約36万人を動員し、大成功を収めています。その功績などが評価され、永田はフランスの芸術文化勲章オフィシエを受賞しました。


島根県津和野市出身の永田生慈 島根県津和野市出身の永田生慈

島根県が永田から譲り受けた作品群は「永田コレクション」とされ、遺志により「島根県立美術館」と「島根県立石見美術館」での公開のみが許可されています。これが県外不出と言われる所以です。

変化に富んだ葛飾北斎の生涯を通覧できるほど幅広く、世界に唯一、または希少なものも含まれているコレクション。島根県に来ないと見られない、「島根県の宝」となっています。

「島根県立美術館」ではこの永田コレクションを、新庄から寄贈された新庄コレクションなどとともに「北斎展示室」で約40点を常設展示。いつ来てもまとまった数の貴重な作品を見ることができるようになっています。


「北斎展示室」では、約1カ月ごとに展示替えが行なわれます 「北斎展示室」では、約1カ月ごとに展示替えが行なわれます

2031年まで!北斎の長い画業をたどる企画展を開催

北斎は浮世絵師としてデビューした20歳から亡くなる90歳までの約70年の間、傾注した分野や画題、画風が目まぐるしく変化しました。そのため、北斎の画家としての人生は、その時期に名乗った主な画号から「春朗期」「宗理期」「葛飾北斎期」「戴斗(たいと)期」「為一(いいつ)期」「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)期」の6期に大別されています。

「島根県立美術館」では約10年をかけてコレクションを調査し、この6期を2023年から全4章に分けて全貌を公開、北斎の足跡をたどる展覧会を開催しています。

永田コレクションの全貌公開〈二章〉北斎―「葛飾北斎期」・「戴斗期」編」

2025年9月からは、第2章として「永田コレクションの全貌公開〈二章〉北斎―「葛飾北斎期」・「戴斗期」編」を11月3日まで開催中。当該期に挿絵を手がけた読本(長編小説)と絵手本など500冊以上の版本を細大漏らさず展示します。

また、期間中の「北斎展示室」では『冨嶽三十六景』や肉筆画の優品を展示。こちらも見逃せません。


北斎が挿絵を手掛けた読本や絵手本など500冊以上が一堂に!圧巻の「版本世界(ブックワールド)」がここにあります 北斎が挿絵を手掛けた読本や絵手本など500冊以上が一堂に!圧巻の「版本世界(ブックワールド)」がここにあります


展示される『北斎漫画』(永田コレクション) 展示される『北斎漫画』(永田コレクション)

展示される『北斎漫画』(永田コレクション) 展示される『北斎漫画』(永田コレクション)


最晩年期に次いで多彩、多作な「葛飾北斎期」、細やかな陰影で立体感を表す西洋画法の影響をうかがわせる「戴斗期」の肉筆画も展示 最晩年期に次いで多彩、多作な「葛飾北斎期」、細やかな陰影で立体感を表す西洋画法の影響をうかがわせる「戴斗期」の肉筆画も展示

なお、第3章「為一期」「画狂老人卍期」編は2027年9月頃、第4章「北斎と門人たち」編は2029年9月頃の開催が予定されています。

永田コレクションは県外不出なので、もちろんこれら企画展も「島根県立美術館」のみの開催です。貴重な機会を体験しに、「ぜひ、島根に来てごしないね」。


島根県立美術館

問い合わせ先 0852-55-4700
時間 10時~日没(10~2月は10~18時)※営業終了時刻は公式サイトで確認できます。
定休日 火曜・12月28日~1月1日 ※企画展の日程に合わせて変更あり
交通アクセス 山陰本線松江駅から徒歩約15分
値段 コレクション展 一般300円。北斎展 1000円(2025年 9月10日~11月3日・10月6日は展示替えのため閉室)。北斎展+コレクション展 セット1150円
URL https://www.shimane-art-museum.jp/

教えてくれた人

小澤 順さん
島根県立美術館指定管理者SPSしまねグループ 広報担当マネージャー。4月より広報担当となり北斎については現在、猛勉強中。宍道湖の夕日がきれいな美術館ですので松江へご旅行の際はぜひ、美術館へお立ちよりください。

ちなみに私の写真は、館内にある二次元コードをスマホに読み込ませてガチャを引く「北斎ガチャ」でゲットしたフォトフレーム。1日1回無料で参加でき、20種類のフォトフレームのうちランダムで1枚ゲットできます。来館の際はぜひ、挑戦してみてください。
 

  • 記事中の情報は2025年9月時点のものです。
  • 写真はすべてイメージです。
  • 列車やバスなどの所要時間は目安となる平均時間を表記しています。バスの運行本数が少ない場合がございますので、事前にご確認ください。
  • 店や施設のデータは、原則として一般料金(税込)、定休日、最終受付時間・ラストオーダーを、宿泊施設の料金は平日に2名で宿泊した場合の1名分の料金(1泊2食・税・サービス料込み)を記載しています。
  • 同一商品で軽減税率により料金の変わるものは、軽減税率が適用されない料金を記載。臨時休業などは省略しています。また、振替休日なども祝日として表記しています。