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2025.10.16ジパング俱楽部薩摩焼のふるさと・美山でやきものをめぐる旅へ。「美山CRAFTWEEK」も開催!|現地発!おすすめ旅ネタ情報

現地発!おすすめ旅ネタ情報

このコーナーでは、旅好きライター・観光ナビゲーターが、ご当地ならではのおすすめスポットや旅人にとってうれしいネタをお届けします。

今回紹介するのは、鹿児島県日置市の美山(みやま)地区で窯元めぐりを楽しむ旅。2025年10月30日~11月3日に開催が決定した、「美山CRAFTWEEK(クラフトウィーク)」も必見です。

薩摩焼が生まれた地・美山で窯元めぐりを楽しむ

国の伝統的工芸品に指定される薩摩焼。その一大産地である美山地区は、緑豊かな里山にたくさんの窯元やギャラリーや飲食店、雑貨店などが点在するやきもののまちです。

薩摩焼の歴史と魅力を感じながら、町歩きを楽しんでみませんか?

薩摩焼のふるさと・美山とは


沈壽官窯(ちんじゅかんがま)の登り窯 沈壽官窯(ちんじゅかんがま)の登り窯

薩摩焼の里・美山をご存じでしょうか?

鹿児島県で生産される陶磁器・薩摩焼には、白薩摩と黒薩摩の二種類があります。白薩摩は乳白色のなめらかな見た目に貫入(かんにゅう)と呼ばれる細かいひびが入っているのが特徴で、かつては薩摩の殿様のためだけに作られたやきものでした。

白薩摩のなかには20世紀はじめにウィーン万博やパリ万博に出展されたものもあり、美術工芸品として高い評価を得ています。対照的に真っ黒な見た目の黒薩摩は庶民の暮らしの器として親しまれてきました。

薩摩焼の歴史は、今から約430年前の戦国時代にまでさかのぼります。豊臣秀吉が朝鮮に出兵した「文禄・慶長の役」の際、鹿児島からは島津家第十七代当主・島津義弘が朝鮮に出兵しました。

この頃、世の中では茶の湯が隆盛を極めており、島津義弘はやきものを作らせるために、1598(慶長3)年に朝鮮の陶工たちを鹿児島に連行しました。

陶工たちは初めに現在のいちき串木野(くしきの)市に窯を築き、その後、現在の鹿児島県日置市東市来(いちき)町にある美山地区に移り住みました。そして慣れない土地で苦労しながら、鹿児島の土を使った薩摩焼を作り出しました。

このような歴史から、美山は“薩摩焼のふるさと”といわれています。


竹垣の美しい美山の町並み 竹垣の美しい美山の町並み

美山の町並みをめぐります 美山の町並みをめぐります

400年以上の歴史を持つ沈壽官窯へ

美山地区はゆたかな自然が残り、竹垣が整備された美しいまちです。その里山に抱かれるように、今も約10軒の窯元が点在しています。近年はギャラリーや工房も増え、クラフトのまちとなっています。

美山へのアクセスは公共交通機関なら東市来駅からバスに乗るのが便利です。美山バス停で降りるとすぐそばに沈壽官窯があります。沈壽官窯は1598(慶長3)年に朝鮮から連行された陶工のひとりであった沈 当吉(ちん とうきち)氏から続く窯元です。


沈壽官窯の登り窯。近くで見学できます 沈壽官窯の登り窯。近くで見学できます

重厚な構えの門をくぐり敷地内に入ると、立派な登り窯が出迎えてくれます。この登り窯は今も現役で、薪(まき)を使って黒薩摩を窯焚きする工程で使われています。積み上げられた煉瓦(れんが)や窯についた煤(すす)も、近くで見学することができます。工房ではたくさんの職人さんたちが作業にあたっています。

歴代の名品を集めた「沈家伝世品収蔵庫」やレストラン「茶寮美山」も併設されています。「沈家伝世品収蔵庫」に展示された白薩摩のなかには、明治天皇への献上品も。繊細で絢爛(けんらん)豪華な薩摩焼の美しさを心ゆくまで鑑賞することができます。

庭に、朝鮮の守り神の石像が祀(まつ)られているのを発見しました。ふとした風景からも窯元のたどった長い歴史が感じられます。


沈壽官窯の売店 沈壽官窯の売店

登り窯に使う薪と朝鮮の石像 登り窯に使う薪と朝鮮の石像

毎年秋に開催 美山CRAFTWEEK

美山では、例年10月下旬から11月上旬にかけて「美山CRAFTWEEK」というイベントが開催されます。

まちなみをめぐるスタンプラリー、陶芸体験・絵付け体験、薩摩焼を使ったテーブルコーディネート展示、物販ブース(クラフト作家の作品やグルメ、韓国南原市ブース)もあり、見どころがいっぱいのイベントです。


荒木陶窯のテーブルコーディネート展示 荒木陶窯のテーブルコーディネート展示


白薩摩・黒薩摩が並ぶ「炎舞陶苑(えんまいとうえん)」の売店 白薩摩・黒薩摩が並ぶ「炎舞陶苑(えんまいとうえん)」の売店

薩摩焼体験では窯元が直接指導してくれます 薩摩焼体験では窯元が直接指導してくれます

さいごに

美山はまちなみの美しさも魅力です。竹垣が整備された小道をのんびり歩きながら、ふらっと窯元に立ち寄り、職人さんと直接会話しながらお気に入りの器を探すことができるのもイベントの醍醐味です。私は普段使いの黒薩摩コーヒーカップをこの地で見つけました。

全国にいろいろなやきものの里がありますが、里山にある美山は小さな窯元も多く、四季の自然ややきもののもとになる土の香りも感じながら、ゆっくりと散策することができるのが魅力です。

戦国時代に朝鮮からの陶工が開窯したことという歴史から、韓国とのつながりが大切にされているのも特長です。朝鮮の始祖とされる檀君を祀るために創建された玉山神社や、韓国で採火された火を殿し続ける「日韓友好の炎」など、やきもののルーツが感じられるスポットが点在しています。

美山CRAFTWEEKの期間中は、美山自治公民館にて「美山と韓国のつながり」をテーマにしたパネル展示や韓服試着体験もあります。大流行している韓国ドラマファンの方にもおすすめしたい旅先です。

2025年の開催は10月30日から11月3日の5日間。この機会に美山を訪ねてみませんか?


基本情報

名称 美山CRAFTWEEK2025~ここから始まるモノづくり~
開催期間 2025年10月30日~11月3日
交通アクセス 鹿児島本線東市来駅から鹿児島駅行き鹿児島交通バス約3分の美山下車すぐ
問い合わせ先 099-248-9409(美山CRAFTWEEK実行委員会事務局〔日置市総務企画部商工観光課内〕)
URL https://www.city.hioki.kagoshima.jp/kanko/matsurieventcalendar/miyama-craft-week.html

この記事を書いた人

吉野りり花

鹿児島県出身。日本の旅や食の民俗を取材する旅エッセイスト。著書に『疫病退散たべもの記』(論創社)、『日本まじない食図鑑 お守りを食べ、縁起を味わう』(青弓社)、『ニッポン神様ごはん』(青弓社)がある。

https://lyricayoshino.com

  • 記事中の情報は2025年10月時点のものです。
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