懐かしの客車を復刻した新製客車を牽引(けんいん)するSL列車
1960年代まで全国各地で活躍していたSL(蒸気機関車)は、当時の国鉄(日本国有鉄道)の近代化によって急速にその姿を消すことになり、全国各地でSLのお別れ運転が行なわれました。その後、消えゆくSLの復活運転を望む声が高まり、1979年8月1日、C57形1号機が12系客車を牽引するSL「やまぐち」号が誕生しました。
その後は、「梅小路蒸気機関車館」(現在の「京都鉄道博物館」)に動態保存されていたC58形1号機やC56形160号機も、C57形の検査時などの予備機として活躍。2017年8月1日のSL「やまぐち」号復活運転38周年記念イベントとして、C57形1号機+C56形160号機の重連運転が行なわれました。
また、復活運転を開始してから9年間、使用される客車はブルー塗装の12系客車でしたが、1988年7月には12系客車を改装した「レトロ客車」が登場。一部リニューアルして使用されていましたが、2017年9月2日より、SL全盛期の旧型客車を復刻した、35系の新製客車で運転を開始し、「レトロ客車」は引退しました。新製客車は、車内外共に往時の姿を再現しつつも、最新設備を装備した快適な車両となっています。
鉄道コンシェルジュ ミスターKのとっておき情報
SL全盛期の旧型客車 マイテ49・オハ35・オハ31を復刻
2017年9月2日から使用されている5両編成の新しい客車は、SL全盛期の旧型客車を復刻したデザインを採用しています。列車の両端にSLの音や煙を身近に体感できる展望デッキを装備。また、SLのドラフト音をダイレクトに聞ける開閉式の窓を採用し、車椅子対応のバリアフリー設備や、温水洗浄機付きトイレも備えています。レトロな雰囲気を醸しながらも、設備は最新です。
下り列車は1号車で展望デッキを満喫
津和野駅行き下り列車の最後部に連結されるのが、1960年代まで特急列車の最後部を飾った展望車マイテ49を復刻したグリーン車です。車内はコンセント付きの回転式リクライニングシートおよび一部にボックスシートが配置され、ゆったりと利用できるのが魅力です。車端にはグリーン車利用客専用の展望室が設置されており、下り列車では流れゆく展望風景を楽しめます。
3等車オハ35を復刻し2~4号車の普通車指定席
2~4号車は、3等車のオハ35を復刻した普通車指定席です。車内は4人用のボックスシートを配置した旧型客車そのもので、SL全盛期の汽車旅を実感できるものとなっています。SL「やまぐち」号は3号車を除いて洗面所・トイレが、全車両に子ども連れの旅に便利なベビーカー置き場が設置されています。
楽しいフリースペースでSLの歴史と仕組みを学ぶ
3号車は半室がフリースペースになっており、SLの歴史や仕組みを学べる展示のほか、SL運転を体験できる運転シミュレーター「機関士体験走れSL『やまぐち』号」や、SLの仕組みを楽しく学習できる投炭ゲーム「走れSL缶焚(かまた)きゲーム」があります。このほか、駅弁や記念品の販売カウンターが設置されています。
※ゲーム体験の参加者は抽選で決定します。
山口線にSLが勢揃い「全国SLサミットinやまぐち」
2017年11月23~26日、全国各地のSL関係の自治体や鉄道会社が集結した「全国SLサミットinやまぐち」の開催に合わせて、「デゴイチ」の愛称で親しまれているD51形200号機が復活しました。
現在、C57形1号機とD51形200号機の2台のSLが、期間によって交代で運転しています。また、SLの整備期間などには、DD51形1043号機が牽引を行うこともあります。
程よい甘さが魅力 津和野で食べたい「源氏巻」
SL「やまぐち」号の発着駅である津和野の銘菓「源氏巻」は、こしあんをカステラ状の皮で巻き、棒状にしたお菓子。駅周辺には源氏巻を売る和菓子店が10店舗以上並び、それぞれ少しずつ味が異なるので、食べ比べをするのも楽しいでしょう。中でも山田竹風軒の「源氏草子(写真)」は、食べ切りサイズで個包装のため、SLの車内で食べるのにも最適です。
列車情報
運転日 | 毎年4~12月の土曜・休日を中心に運転 |
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運転区間 | 山口線 新山口駅~津和野駅間 |
運転時刻 |
【下り】 新山口駅10:54発 → 津和野駅13:07着 【上り】 津和野駅16:12発 → 新山口駅18:00着 |
著者紹介
- ※文・写真/ミスターK(結解喜幸)
- ※本記事は2017年9月に公開いたしましたが、2024年7月31日にトレたび編集部により情報を更新いたしました。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。