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2024.04.04鉄道 約40年ぶりの新型車両「やくも」273系、乗ってみて分かったその実力【試乗会レビュー】

2024年4月6日デビュー! カーブの走行に注目

いよいよデビューが目前に迫った、新型特急やくも「273系」。
「やくもブロンズ」をまとったスタイリッシュなデザインと、快適な車内空間、そしてカーブの多い区間を走る「やくも」にとって欠かせない“あの機能”が大幅にパワーアップ! 運行開始に先立って行われた試乗会を体験した鉄道写真家・村上悠太が、273系の魅力をお伝えします!

新型「やくも」273系って?

来る2024年4月6日にデビューする273系は、主に伯備線を経由して岡山〜出雲市を結ぶ特急「やくも」に投入される新型特急車両です。
これまで「やくも」は国鉄型特急車両である381系で運行されてきましたが、この度、約40年ぶりに新型車両が投入されることになりました!


生山駅で出発を待つ新型「やくも」試乗会列車

行先表示機にはヘッドマーク調のデザインも表示されるほか、いろいろな隠し表示も用意されている

新型車両への置き換えは段階的に実施され、6月15日以降はすべての「やくも」が273系で運行される予定です(6月15日やくも1号を除く)。
4月6日のデビュー時点では出雲市行きの「やくも5、7、11、21、23、27号」と、岡山行きの「やくも4、6、10、20、22、26号」が新型の273系で運行されます。4両編成を基本とし、車内はグリーン車、普通車のほか、セミコンパートメントを新設。全席コンセントやフリースペース、バリアフリー対応のトイレなど、あらゆる人にやさしくて、利用しやすい車内設備を備えています。

なお、特急「やくも」は全車指定席なので、乗車時にはあらかじめ指定席特急券を購入しておくのを忘れずに!
指定席特急券は全国のみどりの窓口で購入できますが、JR西日本のオンライン予約サービス「e5489」を利用すれば、チケットレスでの乗車も可能。車両のデザインを手掛けたのは株式会社イチバンセンの川西康之デザイナー。JR西日本では273系のほか、「WEST EXPRESS銀河」のデザインも担当されています。

試乗会へGO!

今回行われた試乗会は報道関係者のほか、JR西日本の会員サービスである、「WESTER」会員など約600名が乗車。試乗区間は米子~出雲市など6コースで、その応募倍率は約56倍にものぼり、その注目度の高さを感じます。

生山駅に停車するピカピカの新型「やくも」の外観を見つつ、早速車内へ。しばらくして列車のドアが閉まり、273系は出雲市に向かって出発! この時点ですでに381系と大きく異なる乗り心地を体感します。
381系は発車時や加速中に「カクン、カクン」という前後に軽い揺れを感じるのですが、273系はショックレスで加速は静かで滑らか。これまでたくさん眺めてきた伯備線の車窓も違って見えるほど、異次元の乗り心地を早速実感しました。


車内にはこの日のためのポスターも

大人気必至!? お得で快適な「セミコンパートメント」

ここで、273系の車内設備をご紹介しましょう。
4両編成の273系はグリーン車と普通車の2クラス。
普通車は沿線の山々をイメージした緑色をベースに、青いモケットのシートと交互に配置することで、鮮やかな印象のインテリアになっています。ホールド性の高いリクライニングシートは、新幹線と同じシートピッチを確保し、かなり広々! JR西日本では初となる、リクライニング角度に合わせて座面角度が変化するチルト機構を採用。全席コンセント完備で、ビジネスユースにもしっかり対応しています。


JR西日本の特急列車の中でも特にハイグレードな普通車

シートピッチは新幹線と同じ1040mm

一方、フットレストを備えた大型リクライニングシートが並ぶグリーン車は、明るく温かみのあるインテリア。
1+2配列のシート配置はグリーン車にふさわしいゆとりある空間を作り出しています。普通車同様にリクライニング角度に合わせて座面も可動するチルト機構と可動式まくら、電源コンセントももちろん完備。これまで以上に上質な旅時間が過ごせます。


1号車半室に設けられたグリーン車

深々と包み込むような大型シートが心地よい

そして! 273系で新登場したのが、グリーン車と同じ1号車にある「セミコンパートメント」。
こちらはプライベート空間が確保できる2人用、4人用のシートで、それぞれ2名、3〜4名で利用が可能です。
大型テーブルを備え、シートは座面を引き出してフラット形状にすることができ、まるでお座敷のように足を伸ばしてのびのびと過ごせる快適空間に早変わり!
グループ旅行や小さな子供連れに最適な「セミコンパートメント」ですが、なんと2〜4号車と同様に人数分の普通車指定席料金で利用でき、特別な追加料金は不要。ぜひとも乗りたい、273系だから堪能できる、新しい「やくも」の旅のカタチです!


グループ利用に最適なセミコンパートメント。試乗会参加者にも大人気!


沿線ゆかりの本が楽しめるフリースペース。「小さなお子さまが飽きてしまった時にもぜひ」と川西デザイナー

バリアフリー対応のトイレも完備

車内チャイムは山陰ゆかりの「Official 髭男 dism」の楽曲!

駅発着時、車内放送前に流れるチャイムには山陰ゆかりの「Official 髭男 dism」の楽曲が使用されています。
米子・出雲市行きが『I LOVE...』、岡山行きが『Pretender』です。


国内初「車上型制御付自然振り子方式」はすごかった

さあ、この273系で最も注目されているのが、カーブ通過時の乗り心地。
中国山地を縫うように走る「やくも」は、全線にわたってカーブが多く、現在活躍する381系もカーブを通過する際に車体を傾斜させて、乗り心地を保ったまま高速でカーブを通過できる、「振り子式」という特殊な機能が搭載されています。
しかし、381系の振り子機能は、カーブに進入した際の遠心力だけで車体傾斜させる方式のため、カーブに入ってから車体が傾き始めるまでにタイムラグがあるほか、カーブが終わると急に水平に戻ったりと、その乗り心地には少々課題もありました。そのためこれまでは、「やくもはよく揺れる・・・」とちょっとネガティブな意見もちらほら。


自然振り子式を搭載した381系とすれ違う。このパノラマタイプ編成は273系のデビューに伴って引退予定

これを273系では大幅にブラッシュアップ! 国内初の「車上型制御付自然振り子方式」を新開発し、走行する路線のマップデータと現在の走行データをリアルタイムに照査し続けることにより、カーブ区間に合わせて車体傾斜のタイミングを精密に制御することが可能に。
また振り子のシステム自体の性能も向上し、381系で発生していた急挙動などを解消しました。


右に左にとカーブを抜ける273系

連結部分を見ると振り子機能により車両が大きく傾斜しているのがよくわかる

これにより、「乗り心地を評価する一つの数値である『乗り物酔い評価指数』が最大で23%も改善した」と以前お伺いしたのですが、やっぱりこればっかりは乗ってみないとわからない! ということで、今回一番楽しみにしていた新システムによるカーブでの乗り心地。

率直に申し上げて、「すごく変わった!」の一言です!
381系ではカーブ走行中の車内を移動する際には、思わず手すりを掴みたくなるシーンが多かったのですが、273系ではスムーズそのもの。カーブに差し掛かる前から滑らかに車体が傾き始め、カーブが終わってもゆっくりの水平に戻るため、その乗り心地は非常にナチュラル。加えて、273系そのものの乗り心地が向上したこともあり、1ランクも2ランクも違う、乗り心地を体験できました。これはまさに百聞は一見にしかずなので、みなさんもぜひ乗車して体感してみてください!!

終点、出雲市に到着し下車すると、短い乗車時間だったとはいえ、381系と比べて圧倒的に揺れも少なく、振り子車両特有の乗り物酔いに似た疲労感も感じません。また、出雲市駅、米子駅には待合スペースとして「やくもラウンジ」もオープン。こちらも川西さんのデザインということで、列車に乗る前から一体感ある「やくも」の空間を楽しむことができます。


駅名標や「やくもラウンジ」などを通じて沿線をトータルコーディネート

こちらが「やくもラウンジ」

これまでと比べて異次元な乗り心地の向上と、快適な車内空間を提供してくれる新型「やくも」273系。4月6日、まもなくデビューです!


新型「やくも」特設ページはこちら


著者紹介

村上悠太

1987年鉄道発祥の地新橋生まれ、JRと同い年の鉄道写真家。
交通新聞社刊「鉄道ダイヤ情報」では「ユータアニキ」としてあらゆる現場で鉄道を支える「鉄道HERO」たちの取材を続ける。元々旅好きから写真を始めたので、乗り物に乗って旅をしながら写真を撮るのが大好き。

X:https://twitter.com/yuta_murakami
Instagram:https://www.instagram.com/yuta_murakami/

  • 写真/村上悠太

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